私の一族1
私は、・・・・
私はどうしたのだろうか?
私はどうしたらいいのだろうか?
「ケルレン~行こうよ!」
腕の中のレンヤンの声に我に返る。
「・・・・・・・」
一向に進まないケルレンを
共に付いていく男達が怪訝そうな顔をして見ている。
私の一族?・・・オタル族
私の姉?甥?
私の・・・・我が一族ハンガイ族
私の片割れフールンの・・・
長兄チーフォンの一族。
「参りましょう・・・ケルレン様」
「・・・・・でも・・・・」
ケルレン・・・・会いたかった・・・
まぎれもなく貴方がケルレンなのですね・・・・私の大切な妹。
その胸の温もりを思い出される。
あの人は本当に愛しそうに
震える声で私の名を呼び
強く強く私を抱きしめたのだ・・・他でもないこのケルレンと言う一人の娘を、
(フールンの影ではない)私自身を・・・。
母上は、こんな風な匂いだったのだろうか?
父上は、そんな風に私を呼んでくれたのだろうか?
このまま別れて、
今から戦が行われるこのまま別れて、
この人が死んでしまったら・・・?
遠くでキラリと光る鎧の照り返しと褐色の髪を見た瞬間
堪らなくなってケルレンはすぐ横のティルにレンヤンを預けて
その傍に馬を駆けさせた。
「ケルレン・・・・!?」
馬に乗ったまま驚いて振り返る
その人の顔を正面から半分睨んでいるかのように見据え
ざわめく周りの声を無視しながらケルレンは口を開く。
「許さない!
もし・・・もし貴方が貴方方が後継フールンと長子チーフォンを
傷つけたなら絶対に許さない!」
その言葉に苦笑いを浮かべて見つめ返すその人に
ケルレンは続けて言う。
「でも・・・でも・・・・
貴方が・・・・貴方が、傷ついたり死ぬようなことになったら・・
それも許さない!」
セピアの瞳を驚きに見開くその人にケルレンは表情を少し
緩め苦笑とも微笑ともつかない表情でその言葉を
「私の主はフールン・・・・でも私は、貴方にも捧げる
命と・・・剣を・・・・・姉上!」
ハンガイ族を裏切る言葉を口にした。
ケルレンは今、チョイルン、レンヤン親子を主とするオタル族に
付くことを決心した。
本当は、始めから分かっていた
その姿を見たときから
その自分と同じセピアの瞳を見たときから
同じ面影を見たときから
その声、抱きしめられた腕と胸を感じた時から
この人が私の一族なのだと
姉チョイルンの後ろに視線を送るとドルハ・・・
いや、兄達の乳兄弟の生き残りであったウルトが
とても優しい瞳をしてケルレンを見ていた。
彼は、・・・・そう・・・・・ハンガイ族に居た時から
ずっとケルレンを見ていた・・・・。
・・ずっと私は、私の一族に見守られ愛されていたんだ。
ケルレンは、生まれて初めて
『私の一族』を手に入れた。




