私の一族2
「動き出したんだな・・・ドルハ・・」
ウルトとチョイルンの前に現われた
チーフォンに
ウルトは、落ち着いた表情を浮かべる。
お互いに騎乗したままの姿で
片方は戦の為に鎧を身に着けた姿で
多くの一族の者と共に、
もう片方は儀式の正装の姿のままで
たった一人。
「チーフォン様・・・・・
やはり気付いて居られたのですね・・?」
「何となくな・・・・・母上が引き込んだのか?・・・」
苦笑いを浮かべながら真っ直ぐにウルトを見つめるチーフォンに
ウルトは、警戒の色を浮かべながら問いかける。
「ならば何故?・・・・・私を傍に置いていたのですか?」
「ウルト様!・・・・この者はハンガイの長の息子では?
たった一人で来るとは無謀な!!・・・・見せしめに討ち取りましょう!」
チーフォンの正体を知りざわめく
一族をチョイルンは収める。
「・・・・止めなさい!・・・・・」
「チョイルン様!」
ずっとウルトだけを見ていたチーフォンが驚きの顔で
初めてチョイルンの方を見た。
「チョイルン!!・・・だって!?」
チョイルンのセピアの瞳を射抜くように見据えチーフォンは、
問いただす。
「オタル族、前の族長の孫・・
婿に行った叔父貴の長子、俺達の・・・・・・・従兄弟か?
・・・ケルレン以外死んだと聞いたぞ!?」
チョイルンは、静かな声で返した。
「・・・・・私も・・・・生き残った・・・・。」
「・・・・・・女みたいなんだな・・・・・・・?」
周りを敵に取り囲まれているのに
気にもしないように大らかな微笑を見せるチーフォンに
チョイルン達はついつい引き込まれそうになりながらも
「・・・・・・・ケルレンを連れ戻しに来たのでしょうが
返すことは出来ません。」
「何故だ!ケルレンはうちのハンガイ族の娘だぞ?
確かにオタルの血を引いているが
曲がりなりにもハンガイの血を引き、
ハンガイで生まれ、育ち、剣を受けたものだ!」
(勝手なことを)
チョイルンは怒りを感じながら
チーフォンに問いかける。
「だったら、一族の者は皆ケルレンの存在を認め、
その名を呼んだと言うのですか?
幼いその身に辛い使命を負わせなかったと言うのですか?
愛されたいと思うあの子に十分な愛情を与えられたと言うのですか?
これからもあの子が幸せになれるというのですか?
あのロクでも無い一族の中で!」
「俺がケルレンを妻に迎える!
俺がケルレンに幸せを与える!」
チョイルンの言葉に微塵の迷いも無しにチーフォンが答える。
「チョイルン、俺達の一族を馬鹿にするのは許さない!
お前もその血を引く。
お前の一族でも有るんだぞ!」
チーフォンの真っ直ぐに射すくめるように見つめる
強い瞳をチョイルンは正面から見つめ返す。
「なるほど・・・・ウルトの言う通りの人のようですね・・
・・・そのまま・・・ハンガイに帰りなさい!」
「俺は、自分の望むことを何もしないで諦めるのは
絶対嫌だ!・・・・・俺が死んでも後継が居る。
だから俺は、半分死ぬ気で返してもらいに来た!
ケルレンも・・・・ドルハもだ!」
唖然とする周りをそのままに宣言するチーフォンに
「今、ケルレンを妻にするとか幸せにするとか
言っていませんでしたか?・・・」
チョイルンがやっと声を出してそう言うが、
「ああ!だから『半分』死ぬ『気』だ!
俺はお前らに負けない!絶対死なないから心配しなくて
良いんだ!」
本当にまったく危機感を感じてないような笑いをすると、
「俺と一緒に来い!ドルハ!
俺は、お前もケルレンも大好きなんだ!
俺は、どちらとも一緒に帰りたい!」
チーフォンは、馬上からウルトに
その手を取ることを疑ってもいない様子で手を差し出した。
チーフォンのその大らかな笑顔を
太陽が照らしていた。




