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まいごは今、異世界  作者: heina
ほぼ家出中に家出編
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お着替えだよ

「さ、目も覚めたわねミト。 そろそろ行くわよ」


 さっき知らないおばさんが持ってきてくれた服に着替えはじめたミトラルカちゃんは、お湯の力ですっきりした面持ちを取り戻した。


「あんたもいつまでもそんな格好してないで着替えちゃいなさい。 あ、でも服はどうしようかしらね、……もう一度おばさまに聞いてみるしかない、か。 おばさまには申し訳ないけど二度手間させちゃうわね、ミトの服のことしか考えてなかったなんて私も間が抜けているわ」

「おばさま」

「ん? おばさま? ああ、さっき見たでしょ。 さっきの可愛い格好をしたお洗濯が得意なおばさま。あの人のことよ」

「エミのおばさん?」

「ああ、そういうこと! 違う違う、あの人はミトのおばさまよ。ここの……なんて言えばいいかな。 王妃様よ、違うけど」

「違うの? 王妃さま?」

「ここでは違うってことよ。 他の国で言えば王妃様が妥当だって意味」

「王妃さまって洗濯するんだね」

「そ、立場がそれ相応ってだけで普通のおばさまよ。 どこぞの国の王妃なんかよりも素敵なおばさま、ってだけの普通のね」


 ふーん。

 エミの好きな人なのかな。

 今の話からすると、他の王妃さまより親しみやすい人だから好きだってことかも。

 まあそもそもに、王妃さまってのを見たことないから、僕には比べられないんだけどね。

 でも比べてなくても嫌いじゃない。 なら、僕も好きなのかなぁ。

 うーん、と考えていると、エミが僕のほっぺたをつねった。


「ねぇ、聞いてるの?」


 僕が思案している間、エミが声をかけていたみたい。 全然気づかなかった。


「ごめんね、全然聞いてなかったの。 なんて?」


 エミはつねった手を離して、鼻息を吐く。


「だからね、服の大きさはどの位なの? わかるなら教えて、って。 わからないならおばさまに測ってもらわなくちゃいけないから」

「あー…… わかんない。 でも真紅ちゃんに聞いたらわかるよ」

「真紅ちゃん?」


 お、今度は僕が教える番?

 少し嬉しさが溢れるのをごまかしながら、エミに真紅ちゃんのことを教えてみる。


「真紅ちゃんはね、三人居てね、赤いの」

「ん?」

「それでね、洋服を作るのが上手で、赤いの」

「うん、赤いのは知ってる」

「? ……あとはいつも寝てるの」

「それってなぞなぞ?」

「なぞなぞ? なんで?」

「だって…… ねぇ?ミト」

「ん、なにー?」


 エミに話を振られたミトラルカちゃんは僕の話を聞いてなかった。

 ミトラルカちゃんはミトラルカちゃんで着替えに悪戦苦闘している真っ最中。

 襟を開け忘れたブラウスのボタンを着たまま外そうとして頑張っていた。


「なにしてるのよミト、ちょっと貸しなさい」

「ごめんねー、でもおかしいんだよ? なんかいつもと違ってボタンが全然見つからないの」

「おかしいのそこ? ミトっていつもこんな着方なのね」

「うん、そうだよー」

「わかったから少しじっとしてなさい。 それと今度からはボタンは開けて着なさい、もう見た目は大人なんだから」

「はーい」


 ミトラルカちゃんとエミが二人で着替えている間、水色ちゃんが僕に何かを伝えようと小さな体で揺すってきた。

 水色ちゃんは両手を挙げて背伸びをすると、ぴょこぴょこと跳ねて何かを訴えてくる。

 ちっちゃい水色ちゃんはなんでか喋らないので、この動きだけだとなんなのかは、さっぱりわからない。

 白薔薇に意見を聞いてみようと思ったけれど、白薔薇はさっきおばさんが持ってきたミトラルカちゃんの靴下を裏返したりして夢中。

 靴下のなにがそんなに気になるのだろう。

 けれど今は水色ちゃんのほうを優先しないと。


 水色ちゃんは右の物を左に置いて、左の物を右に置くジェスチャーをする。

 さっぱりわからない。

 あ、もしかすると宇宙? 宇宙のことを表してるのかな?

 水色ちゃんに「宇宙かね」と答えたら、首をふるふるして否定された。

 その後も引き続いて僕が難解な水色ちゃんの出題を一生懸命に解いていると、水滴がなにもないところから滴り落ちて、空気に波紋が広がる。

 あっ、と思っているとそこから紺碧ちゃんが顔を出した。

 そのまま紺碧ちゃんは手には服と靴を持って、上半身だけを現す。


「神ちゃん、お着替えだよ。 真紅が今日は赤い服に赤い靴を用意したって。 靴は久しく作ってなかったから今まで存在を忘れてて用意してなかったのをごめんねってさ」

「うん、サンダルあったし大丈夫!」

「わかった、それと脱いだ服は持って帰るね。 サンダルは靴あるからいいかな、持って帰ろうと思うけど」

「おねがいする、ありがと」

「いえいえ、それじゃあ神様のことよろしくね〜」

「はーい、ばいばいね」


 服と靴を置いて紺碧ちゃんが波紋のうちに帰っていく。

 紺碧ちゃんが沈み込むと、波紋は弱まって消えていった。


「よし、僕も着替えよっと」


 紺碧ちゃんが持ってきた赤い服はワンピースの裾に二段のフリルが付いた女の子の服だった。

 着替えやすいからいいけどね。

 靴も服と同じ色の女の子もの。

 よく考えたら真紅ちゃんが作る服はみんな女の子の服なんだから当たり前なのか。

 別に男の子の服を着たいわけじゃないからいいや。

 サッと着替え終わると、ミトラルカちゃんとエミが、じーっとこっちを見つめていることに気がついた。

 なんだろう?

また月曜になってしまった。

残念だけど、映画館楽しかったのです。


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