合流
草が生えたのは水色ちゃんとは関係ないみたい。 でも同時に現れたのはなんでだろう。
「おいおいおい、草が止まらねえぞ! 大丈夫なのかよ!」
おじさんのテンションが高い。 おじさんは今、楽しいのかもしれない。
見れば、おじさんの言うように草が白い細かな花びらをどんどんと撒き散らし続けてる。
それはこんもりと降り積もり、山のようになって草を埋もれさせてなお、止まらない。
「ミクラス、うるさいのだ。 ……とは言え、この草っぱが気になることはワラシもおんなじなのだの。 落ちた花はもう草っぱの体積を優に超えておる、こりゃ何か栄養源か本体と呼べるものへと繋がっておるな。 単体で出来る事では無いぞ」
猫は床からひとひらの花びらを拾おうとして、うまく掴めなくて蹴散らした。
「うぬぬ。 でも知る材料が少なくて他に何にもわからぬのだ。 そのうち気がつけば知ることが出来るようになるのだろう、一先ず放っておくとするのだ」
そう言って猫は入ってきたドアを押し開けた。
「ミクラス、お前は花を見ておれ。 わらしはちょっとお散歩に行くのだ。 ちこく人間も来るか? ここに居ても構わぬが、きっと待ちぼうけを食らうだけだぞ」
「行くの」
「そうか。 なら出かけるのだ」
猫のしっぽがだらりとしながら大きくゆらゆらしているので、きっとわくわくしてる。 どこへ行く気なんだろう。
「いや、主任。 ひとまずは放っておくんじゃなかったのかよ。 調べに行くのか?」
「勘ぐり過ぎなのだミクラス。 ただのお散歩なのだ」
「いや、しっぽ」
おじさんの言葉をそこそこに猫は部屋を飛び出した。 僕は猫を追いかける。
でも部屋から飛び出したらそこには人が居た。
「きゃあ!」
「おおっと、すまぬのだ。 飛び出したらいかぬのに、またやってしまったのだ」
部屋の外に居て、猫とぶつかりそうになったのは僕の知っている顔だった。
「あ、ミトラルカちゃんだ」
「神様! 一体どこへ行っていたんです? 探しましたよ」
ミトラルカちゃんは駆け寄ってきて僕の手を握る。
「うん? ちょっと勉強してた」
「勉強ですか?」
「そうなのだ。 ちこく人間はわらしの授業で皆と一緒に勉強をしたのだぞ。 でも次の授業のことはわからぬと言うから連れてきたのだ」
「ちこく人間? なんですか先生、それ。まさか神様のことを言ってるんじゃないですよね」
「神様とはなんなのか知らぬが、ちこく人間はほら、このちみっこ二人のことなのだ」
猫が僕と白薔薇を順番に指し示してきた。
それを見たミトラルカちゃんはしゃがんで猫に優しい声音で諭しはじめた。
「あのですね、先生。 このお二方は私の大切な恩人で私の招待したお客様です。 その呼び名はあんまりなのでやめていただけませんか?」
「うん? それは構わぬのだが、二つ聞いても良いかの」
「はい。 なんでしょう」
「そう呼ばぬのならなんと呼べば良いのだ? あ、そうか!」
恩人だったかなと考えていると、猫がくるりとこちらを向いた。
「お名前を聞かせてもらえるかの」
名前……
「ぬ? 聞いたらいけぬことだったのかの?」
知らないうちに心配される顔になっていたのか、猫に気を使われた。
首を振ったら納得したのか猫は普段通りになったけれど、その後は名前を聞かれなくなった。
「で、もう一つの方も良いかの」
猫がミトラルカちゃんに尋ねてる。
「はい、良いですけど一体なんでしょう」
「うん。 おぬしはわらしのことを先生と呼ぶが、見覚えがないのだ。 一体誰なのだ?」
「あぁ」
ミトラルカちゃんがすっくと立ち上がる。
「ミトラルカですよ」
ミトラルカちゃんの自己紹介に猫は思いっきり首をひねった。
それはもう転けるんじゃないかという程に勢いをつけてひねる。
「ミトラルカってどのミトラルカなのだ?」
「ミトラルカって名前そんなに聞きますか?」
「わらしの知ってるミトラルカは一人きりなのだ」
「そのミトラルカです。 ヘクストリス・ルイ・ミトラルカ」
「ぬー?」
猫はまた首をひねる。
「そのミトラルカはこんなだぞ、こんな」
猫が自分の腰あたりで手を振り、背が低かったとアピールする。
「えへへ、私大人になったんですよ。 大人になったらそばかすも消えました!」
「ほー。 人間はそんなに早く大人になるのかの……? いや、そんなの見たことないのだ。……でもそういうのもあるのかの?」
猫が考え込んでしまった。
別にいいけど散歩は行かないのかな。
眠いけど寝る前になんとか。
短めですけど。




