ともだちが気になる
カパ代とカパ美はとても元気!
特にカパ美はお昼寝をした後なのでテンションが高いのです。
僕も負けていられません!
それから日が暮れるまでたくさんの動物たちと友達になり、森に川にと遊びまわりました。とても満足です。
そろそろ帰る時間かなと、お別れの挨拶を言う為にみんなの方へと首を回そうと……。
そこで急にぱちっと目が覚めました。
「……?」
ぬるいプールで泳ぎ疲れたみたいに頭がぼーっとして僕は今、世界から置いてきぼりです。
緩く開いた目からは、空の高い位置からのお日様の光が降り注ぎ、眩しい。
パッチリと開かない瞼から瞳だけを動かして、ただ緩々とぼやけ気味の景色を取り込みます。
そのまま黙ったままでしばらく動かずにいると、白薔薇がもぞもぞと起き出すのを腕に感じました。
頭を上げた白薔薇は白く艶のある髪を垂らしたまま僕の頬に鼻を擦り付けてきます。そのまま白薔薇は唇で挟むだけの攻撃を僕の頬に繰り出しました。
僕はされるがままに、最近は猫が懐くような行動が多くなった白薔薇をただ受け入れながら、ふかふかの寝床の感触が手に触れるのを楽しむのです。
僕は家の前の開けた場所に一本生えていた木の周りをぐるぐる回り続けている最中。木陰と日向を出たり入ったりを繰り返しています。
「神ちゃんは何してるの?」
「お昼寝の時に見た夢が気になってるみたいよ」
「夢?」
「何でも友達が元気だったんだけど、本当は元気じゃなかったんだって」
「なになに、どしたの」
離れたところでは白群ちゃんと漆黒ちゃんに宵闇ちゃんが加わって会議が始まりました。
会議は長引くことなく三十秒で終わります。
三人はすぐさまバラバラに分かれて宵闇ちゃんは僕の元へと、白群ちゃんは家に入り漆黒ちゃんはどこかへと歩いて行きました。
「神ちゃん神ちゃん、気になるときは確かめればいいんだよ。すぐにお出かけしよう!」
宵闇ちゃんが僕にそう話しかけます。
「その気になる友達のところに会いに行こう」
でも宵闇ちゃんはそう言うけれど、どこに行けばいいのでしょう。
僕が夢で見た場所がどこなのかがさっぱりわかりません。
「?……夢の場所は何か関係があるの?」
僕が夢で行った所がわからないと伝えると、宵闇ちゃんは不思議そうに答えます。
どういう意味でしょう? 最後に会った場所に行くのが一番だと思うのだけど。
「……本当はまだ寝てるんじゃないよね」
宵闇ちゃんはそーっと僕の頬を摘むとフニフニと指先で感触を確かめてきます。
「あひらへらすれ」
摘まれたまま僕の話す言葉は意味を成しません。
元々何の意味もないただ口にしただけの言葉の羅列なので気にしないほうがいいです。今喋ったら面白そうだと思っただけです。
「ましらひらふね」でも「あきらめますね」でもないのです。
楽しいだけで口を開くことだってあるのです。
「何て言ったの?」
だから何も意味はないのです。
なので僕はただ首を振るのです。
僕と宵闇ちゃんがぐたぐたやっているうちにみんなは準備は万端整った様子で集合していました。
「なに二人して戯れてんの」
「さあ! 行こうか。私、海って見たことないから楽しみだわ」
「えっ、海行くって話だったの? お出かけとしか聞いてないんだけど」
「あたしお出かけ好き〜」
「あたしも〜」
「ああ、もう神ちゃんは。新しいのあるから着替えようね。王様はもう着替えたから……神様もだからね!」」」
みんな着替えただけで何にも荷物はありません。それでもそれがいつも通り。
そして僕らの着替えが終われば、いつも通りに紺碧ちゃんに後はお任せなのです。
太陽の陽射しが主張激しい白い砂浜は反射光も相まってとっても熱いのです。
特に僕は裸足なので足踏みがやめられません。
「あちゃちゃ、助けてっ!」
「ひゃっ! ちょっ、そんな、だめぇくすぐったいよっ」
あまりの熱さに涼しげな白群ちゃんの左足を登り棒みたいにしがみついて、焼けた砂から退避しました。
白群ちゃんは今日はスカート姿なので掴みづらい!
落ちないようにワサワサする僕の手のくすぐったさに耐える為に白群ちゃんが僕をぎゅっと抑えて動けなくなってしまいました。
「何してるの。ほら、おいで」
息を吐く宵闇ちゃんに、僕はいつも通りに抱き上げられました。
「んしょっと。もう、サンダルはどうしたの。脱げた?」
「サンダルは家に忘れてきた。いつもあんまり履いてなかったから」
「もう」と口を尖らす宵闇ちゃんに抱かれつつ、波打際の方へとぞろぞろとみんなして寄って行きます。
到着したのは海。海岸線が果てしなく続く真っ直ぐ長い砂浜が地球の丸みに隠されて端は両方見えません。
もちろんカパ代もカパ美もいないのです。
「なんで海に来たの? 泳ぐ?」
抱き抱える宵闇ちゃんに問いかけると、首を振って否定されました。
「神ちゃんの友達のところに行きたいけど、肝心の場所がわからないでしょう? 紺碧も行き先が定まらないと足が届かないし。だから物知りの友達に話を聞こうかなって、水色が言ったの」
「へえ。でも場所は森のそばの川が流れてるところだよ。周りはずーっと草の生えてない石と砂ばっかりの地面なの」
僕の言葉に宵闇ちゃんからは、うーんと唸っただけで返事はありません。
心当たりがあるのかなと思い、黙って待っていると宵闇ちゃんは何かを閃いた顔をしました。
「ね、神ちゃん。その前にその友達に会ったのってどこで?」
前? 前はえっと、あれはどこだっけ。んー……行く時に降りた駅で宮城県って言ってた。
「宮城の山奥の綺麗な泉だよー」
「ミヤギ……友達はどんな子?」
どんな……
「双子の河童で、優しくて背がこのくらいなの」
手でこのくらい、と宵闇ちゃんのおへその高さを示します。
宵闇ちゃんは頷いて、口を開きます。
「カッパってどういう感じ? 神ちゃんとどこか違う?」
「緑色でクチバシとお皿とヌルヌルが少しあって……
宵闇ちゃんは僕の説明をしっかりと聞くと満足そうに頷いて見せ「よし」と口に出すのでした。
……よし? 何がよし?




