さよならラリー、こんにちは小鳥
森の中に入ると薄暗くて日も当たらず、とても花は見られません。あるのは背の低い草とちいちゃな紅い実をつけた枝くらいです。
「花なし!紅い実だけ採って原っぱに行こ!」
王様は二つ三つ実を採るとまた勢いよく走り出しました。
「待って」
かけた声を振り払い、王様が行ってしまったので一つだけ紅い実を摘んで急いで後を追いかけます。森の中で僕等が走れるのは障害物が少ないからです。この森には大きな木と背の低い草が生えているのが殆どで、走るのに邪魔になる高さの木は生えていません。ここは新参者を許さない場所なのです。
走り出すとすぐに森は開けてお日様が顔を出します。眩しさの中、王様を探すと森を出てすぐの場所にある野原にしゃがみ込んでいました。
「何か咲いてる?」
近づき様に声をかけて王様の見ている花を見ようと回り込むと、王様の見ていたものは花ではありませんでした。
それは白くて茶色のまだら模様でふわふわの「ぷゅょ」と舌足らずに鳴く、ちいちゃなちいちゃな鳥。
「かわいい!」
白薔薇が興奮気味に前のめりになりました。
「ね、かわいいね」
王様が視線を注いだまま返します。
「可愛いけど、一羽で行動してるんなら大人なのかな」
辺りを見回してみますがそれらしい生き物は見当たりません。
「神ちゃん。こんな小さな子供が大人なんてことは無いと思うよ」
「え?でも白ちゃんも僕も大人だし、そういうこともあるかもしれないよ」
「神様の白ちゃんは昔々からずっと小っちゃいから別だけど、神ちゃんも私もまだ全然子供だよ。大人っていうのは大概背が大きくなってからだと思うもの」
確かに背はまだ高く無いけど。けどけど。
「でも僕に師匠は一人前だねって言ったよ?一人前って大人ってことじゃ無いの?」
「違う〜、のかな?どうだろう。神様はわかる?」
「わかんにゃ」
「そっか。じゃあお姉ちゃんに聞いてみよ。花はもう見つかりませんので」
王様の手には紫の可愛い花がいつの間にか摘まれていました。
持って帰った花で本当に薄っすらと月白ちゃんはお化粧を施してくれます。
「こうやって目のところをサササーってやるとー」
「わわっ、すてきすてき!」
紫の花からは紫色は出ず、薄っすらだったので紅い実の口紅が強く主張してしまい、口の動きを強調して何事か喋っている感は増してしまったので白薔薇への心象はプラマイでちょいマイナですが、王様はそうではないみたい。
「ほら!どう?神様」
「嫌い!嫌い嫌い!」
右の手のひらに乗せたラリーを拒否された王様は消沈の溜息を吐き、左手に乗せたふわふわの小鳥を落とさぬようにラリーとひとまとめにして両手で胸を壁にして抱えました。小鳥がラリーをつんつんと啄ばみます。
「駄目かぁ。でもま、嫌いならしょうがないね」
王様がゆとりのある心で言ったように聞こえますが本当は飽きているだけで今は興味が別の所に行っているのです。
その興味の矛先が唸りをぴゅょと上げました。
「ねぇ、月白ちゃん。この鳥は僕と同じに大人〜?」
「あはっ、この鳥は神ちゃんと同じに子供だよ。まだまだ子供」
何を馬鹿な。こんなちっちゃくってころころと丸い存在が僕と同じなどと。あと、なんで笑う?
「大変!それじゃあこの子の親がどっか行っちゃってるって事じゃない!探さないと」
うん、大変だけど王様は少しも何か感じない?
「どこで見つけたの?一緒に探してあげようね」
「む〜」
「ほらいこ?」
白薔薇、髪の毛ひっぱるの痛い。
「お〜い、子供はここだよー」
「ぷゅょ」
「親鳥ー、どこー」
「ぷゅょぷゅょ」
「おやつあげるから出ておいでー、鳥〜」
「ぷゅょ」
「子供は預かった、還して欲しくば観念して出て来ーい」
「ぷゅょ?」
手伝いに来てくれた漆黒ちゃんの脅しにも親は屈して出て来てくれません。
現在は月白ちゃんと漆黒ちゃん、王様と僕と白薔薇に小鳥の六人で野原にて捜索をしていますが、芳しい成果を未だ得られず、手を拱いている状態です。
「駄目だ!帰ってきてもわかるようにビバークするよ!」
「ビバーク?」
「ビバーク」
「ビバークビバーク」
「ビバーク!」
みんなが騒ぐ中でラリーは既に、小鳥から瀕死の重傷を食らっていました。
しばらくして、夕方になるとお姉ちゃんがみんな集まり、賑やかになりました。
お姉ちゃんが歌って踊ると、家も踊りながら野原までやってきたりと、どんちゃん騒ぎで楽しい夜に眠い目をこすり夜更かしします。
王様がこっくりと半分寝ています。えへへ、おんなしです。もう限界〜…
「あらあら、お布団で寝なさいな」
手を引かれて王様と二人でみんなより先に離脱です。
やった、きょうはおふろはいらないもんね…
残念ながら、三日くらい野原で寝起きしたけど鳥は来ませんでした。
「仕方ない、家で預かろっか。鳥巣立つまでね」
「いいの?」
「うん」
「やった〜!鳥、うちの子ね」
「わー、ビバーク!」
「ビバビバ!」
こうしてちっちゃな鳥はうちの子になりました。
今日も楽しい一日だったのです。明日も楽しみなのですよ。




