みんなとおやつ
久しぶりに出た地上はいい天気。周りは少し離れたところに古びた煉瓦造りの、両手で数えられる程度の家々が取り囲んでいます。広場かな、ここは。
家々を遠巻いて木々が疎らに生えていて、遠くへ行くほどに木々は密度を増し、鬱蒼とした暗がりと湿度を内包して生き物の行く手を遠ざけようとしています。
僕らが這い出てきた穴のすぐそばには登るのを手伝ってくれたみんながいました。
まずは王様。
「お疲れ様だ、いらっしゃい」
陽の光に照らされた王様は、小さな背に肩までの髪を濃い緋に輝かせています。吊り下げ半ズボンに白いブラウスが土に塗れてきちゃない。
その他には九人。
まずは王様の後ろに立つ、額から一本短いエメラルドの角が生えとる綺麗なお姉さん。
「こんにちは〜」
小さな子供のように両手を頭の上でぶんぶん振っている。
その隣では地べたに這いつくばって、小さな虫の作る行列を怖々と指で突く黒いグルグルした角を両のこめかみ辺りに生やす二人目の綺麗な角お姉さん。
他にはぱっちりした大きな目をこちらに固定して動かない全体的に白っぽい可愛いお姉さん。
よく見ると瞳の色が緑になったり紫になったりと移ろい、強膜も白だけではなく黒くなったり金色になったりと面白い。
そのキラキラ眼のお姉さんの後ろ。肩口から顔を出す、またまたお姉さん。
覗いてる風だけど両目を閉じてる。
こっちのお姉さんは黒っぽくて、横から見える長い真っ暗な髪にはチラチラと小さな光が瞬いて、時々光が流れた。星空みたいだなぁと見ていると惑星の輝きと銀河も小さく小さく揺らめいていて、ついじっと見つめていたら星空お姉さんはほんのり頬を赤くして完全に顔を隠してしまった。
その時突然に澄んだ高いハンドベルみたいな音が響いた。
何事かと音の方向を探していると、再びどこからか水滴が水面に落ちる音がした。空気が撓み、そこから痩せっぽちで背高のお姉さんがフリルたっぷりの豪華なドレスを纏って滲み出てきた。顔の造作は良いものなのに痩せぎすで勿体無い。
「おやつできたよ〜」
そのお姉さんがそう喋った途端に痩せぎすで長身だったお姉さんの身長がぴょんと沈んで三分の二くらいになり、背の低い少しだけポチャポチャの綺麗なお姉さんに変化した。
「「「おやつ!神様も神様の友達も来たし、みんなでおやつだ〜!」」」
「神様遊びに来たの初めてだねぇ」
「今日のおやつなに〜?」
「ほら早く行こ〜?」
グイグイに絡まれて立ち並ぶ家の一つに立ち入ると、空気が暖かく甘くいい匂いを含んでいて心を温めてくれる。
家の中は一部屋のみの大きな空間になっていて、壁には大小様々な窓が疎らに配置されて陽の光をたくさん取り込んで室内の暗さを軽減します。その部屋の中央にある大きなコの字型のソファにみんなでまとめてなだれ込むと、美味しいニオイの元がソファの前に設えられてゆきます。
ソファ前にある直径四メートル程の大木を輪切りした天板に短い脚が付いたテーブルに次々と人数分の水の波紋が起こると水滴が弾け、お皿に乗った見たことのないお菓子が現れました。
「おいし〜」
躊躇う訳もなくみんな齧り付いていますが、そのお菓子僕初めましてなんだけど何だろ?
ムラサキの煙は円やかにほろ苦く甘くて、この浮いてるシャボン玉みたいなのは甘くて苦い。他の部分もだいたい甘くて苦い。
なんで苦い?




