トンネル掘りのうた
穴を掘り続けてもう3日くらい経ちました。
汗水垂らして堪える腰を酷使して、文句言い言い手のマメを潰して、ってんじゃないよ。悪しからず。
この3日は「3日も」ではなくて「もう3日?」だった。
だってあの壁掘るのすごい楽しいんだもん。
まずあの壁、掘っていくと潮干狩りのアサリくらいぽこぽこ何か出てくるの。た〜のしぃ〜。
出てくる物は色々。はじめの一堀二堀は、半分になった綺麗な玉とか、こんなにあるのにまた剣とか、切れ目の入ったなんかの輪っかとか出てくる。二人で目をきらきらさせて眺めたり、放り投げたりして遊んだ。
もうひとつ、楽しくて仕方なくなったのは掘る道具。
とりあえずかまぼこ型に切れ込んだが、それじゃあ溝が出来ただけ。かまぼこは止めて円錐型に切るとうまく掘れた。土が硬いから下切って、縦切って剣で梃子使ってやるとズルッと塊で出てくる。たのしい。
穴が深くなるとすぐに掘るのが大変になった。なので、それからはいろんな堀り方を試した。
形を変えたり、掘り方を変えたり。掘った際に出てくるものも使えないかとかそんな事を考えだしたあたりから、掘り出したものにはなぜか切れ目が入らなくなってきたので使ってみたりと。
掘り出した土は大した量がないけれど、彼女がちいさい塊をせっせと甲斐甲斐しく、座れない椅子の広間に置いてきてくれている。その度真っ暗になるけど。
あ、道具の話だった道具道具。
あの苦労して柄をつけた剣、あれが凄い面白いの。
にゅる〜っと大地が切り取れる。そんでエイヤッと剣先に力を入れると、まさかの真横に斬撃が入った。
刺した剣で奥を切ることができたら四角い土の塊が作れる。なんか作れる。ピラミッド作れる。
早速、四角くく切るとすぐに残念な気持ちになった。
壁中をくり抜く形で四角く切ったため、うまく取り出せなかったのだ。
下側に剣を差して塊を乗っけて引っ張れば、ってやったら剣がただにゅるっと抜けただけだし、上の辺から斜め奥に剣を刺して手前に引っこ抜く作戦は全然力入らないし、またにゅるっと抜けるし。
やめだやめだ、ピラミッドは頓挫だ。
なんだピラミッドって、意味わからん。僕は穴を掘りに来たんだ、ピラミッドなんて知らん。
穴を掘り始めてから一週間経った。
もう穴を掘るのもお手の物です。わざわざ剣で引っ掻いて土を掘るなんて駄目駄目、ナンセンスですよ。
コツだよコツ、コツって大事ね。
今は剣を刺して、剣身が震えて体の芯が冷えていく感じで動かす。すると剣が通った後には土が消えて無くなるのだ。
なんだろ、変なコツもあったもんだ。どこ行った、土。
まぁ、そのお陰で随分と穴は深くなった。
トンネルと言っても、もう笑われない。まだこれ見て笑ったのは僕だけだけれど。
コツを使って掘ると、掘った端からみんなどこかへ行くので出てくるものも真っ二つの片割れになった。
削がれて半分になった剣とか、大半が欠けてしまって僕にはもう何なのかわからない金属の塊などが博物館の化石展示のように壁から顔を出している。トンネルのさもしい壁に良いアクセントだ。おしゃれ。
「わぁなるる、おありぃ?」
「そうだね、終わりにしてご飯にしようか」
一週間で進んだのはトンネル工事だけではない。お分かりの通り彼女はこの短期間でお話が上手になったのだ。




