第31話:追放宣告 — 城門の朝
第31話:追放宣告 — 城門の朝
城門前。
朝の空気は冷たい。
空は晴れている。
皮肉なほどに。
広場には兵士、貴族、民衆が集まっていた。
公開裁定。
噂はすでに王都中へ広がっている。
「本当に追放されるのか」
「信じられない……」
「でも証拠が……」
俺は中央に立つ。
鎧は着けていない。
いつもの執務服。
手枷はない。
まだ罪人ではないからだ。
王が城門上に姿を現す。
静寂が落ちる。
「王国戦略顧問——」
俺の名が呼ばれる。
「資源不正疑惑について、最終裁定を下す」
一瞬。
時間が止まる。
「提示された証拠は否定できず」
「だが、これまでの功績もまた否定できぬ」
ざわめき。
王の声は重い。
「よって、死罪は科さぬ」
広場が揺れる。
「しかし」
次の言葉で、すべてが決まる。
「王国追放とする」
静まり返る。
それが最適解。
処刑すれば反発が出る。
無罪にすれば不信が残る。
だから追放。
国を守る選択。
俺は静かに頷く。
想定通り。
王が続ける。
「本日より王国への立ち入りを禁ずる。
国境を越えよ」
宣告は終わった。
民衆の中から声が上がる。
「待ってくれ!」
「参謀様はそんなことしない!」
「でも証拠が……」
支持は割れている。
完全には崩れていない。
それが唯一の救いかもしれない。
リディアが前に出る。
兵士が止めようとするが、振り払う。
「陛下!」
王は目を閉じる。
「女騎士よ、これ以上は」
彼女は俺を見る。
その目に迷いはない。
「私は信じる」
はっきりと。
「たとえ国が違うと言っても」
沈黙。
俺は答える。
「信じる必要はない」
彼女が息を呑む。
「私は最適解を選ぶだけだ」
「これが?」
「今はな」
城門が開く。
重い音。
外は広い平原。
王国の外。
赤外套が遠くからこちらを見ている。
勝者の顔。
だが。
盤面はまだ終わっていない。
俺は振り返らない。
歩き出す。
背後でざわめきが広がる。
「英雄が……」
「追放だって……」
リディアの声が背中に届く。
「必ず、真実を証明する!」
俺は足を止めない。
風が吹く。
王都の城壁が遠ざかる。
国を救った参謀は、国を去る。
だが——
俺の計算は終わっていない。
完璧な罠は、必ず歪む。
その時。
誰が後悔するのか。
俺は空を見る。
数字では測れない広さ。
「……さて」
静かに呟く。
「次はどこを救うか」
城門が閉まる音が、遠くで響いた。
第一部・王国編 完




