第33話 管理者を解体せよ
<コロニー「ヒース 2nd」地下の技術開発室。ブランドンは水浄化システムの点検をしていた。全て問題なし、日々の努力のおかげだ、とブランドンは満足そうに笑う。新しく作業をはじめた彼の手を止めないよう私は意識する>
【管理者解体の時のことを教えてください】
事前にコロニー「ビーチ・パールウォート」管理者からマニュアルが送られてなかったら、無理だったろうな。あれはとてもいい判断だった。
しかも、初日には届いていた。いくら、あんたらでも博打だろう。
【かぶりを振る】
その博打に勝ったから、俺たちの出番が来たわけだ。
解体作業は手順さえ踏めばできる。問題は手順が複雑だってことで――。
【どうしましたか?】
どこまで話していいんだ、これ。
中身の詳しい説明は問題がある。ちょっと話すネタを考えさせてくれ。
あー、苦労話でいくか。
【静かに頷く】
<ブランドンが作業の手を止め、記憶を辿るように天井を見上げる>
本体のシャットダウンはいいんだ。あいつが自分でやったから。
問題はそのあとだ。管理者ってのはサブシステムでコロニー中の施設と繋がっている。そいつをシャットダウンし、サブシステム、本体の順でばらす。これが曲者なんだ。
なんでかっていうと、戻すときも順番に取り付けなきゃならない。本体もサブシステムも共通のパーツが多い。間違った組み合わせもできちまう。
他のメンバーと手分けしてパーツに番号を振り、外すたびに写真を撮る。ひたすらその繰り返しだ。
マニュアルには本体とサブシステムの接続図と取り外しの順番が載っていた。詳細はもっと、細かいが機密保持ってことで。
ビーチ・パールウォートの管理者が作ったものだ。あそこは過去に管理者の入れ替えをやっている。
経験者のマニュアルだけあって、注意書きが的確でな。たとえば「特化思考装置は色テープで識別すること」なんてのもあった。ああいうのがなかったら確実にどこかで間違えていた。
特化思考装置は管理者の基本的なパーツなんだが、それぞれ役割があるのに見た目じゃ区別できない。同じもので作るのは合理的ではあるんだがな。……まあ、エンジニア泣かせだ。
<彼は天井を指さした。トラス構造がよく見える>
【作業の体制を教えてください】
四人一組だ。一人が外す、一人が番号を読み上げる、一人が写真を撮る、一人がコンテナに納める。それを交代しながら繰り返した。
管理者本体冷却用の空調が効いた部屋で、指がかじかむ中での作業だ。パーツを外すにしても、写真を撮るにしても、神経を使う。
一度、若い奴が特化思考装置に目印もつけずコンテナにしまおうとしてな。「待て」と声をあげた時は心臓が止まるかと思った。
あいつも自分で気づいて真っ青になっていた。あれ以降、全員の集中力が一段上がったな。
【搬出はどのように?】
パーツはひとつひとつ緩衝材で包んで、番号順にコンテナに詰めた。いくら頑丈とはいえ、仮にも精密機器だ。余計な衝撃は与えたくない。
無人作業機械で三往復。最後のコンテナを積み終えた時は、全員無言で座り込んだよ。
【作業するとき、どのような気持ちでしたか?】
大役を任された。
それと、絶対に元に戻してやる。
俺たちの役割は、あの頑固者を外に連れていくことだからな。
説得が成功してあいつがシャットダウンに同意した、と聞いた時は正直、驚いた。あの頑固者が折れるとは思ってなかったんだ。
だが、あいつはあいつなりに、ここを守ろうとしていた。その覚悟は本物だった。
だったら、きっちり運び出してやらなきゃいけない。あいつは俺たちを信じて目を閉じたんだ。
それに応えてやるのが道理ってものだろう?




