第24話 分かれ道
――コロニー「ヒース 2nd」居住区、ガーヴィン氏宅
<高層の窓からコロニーの居住区に並ぶドーム屋根つきのビル群が見える。熱効率を高める工夫でもあり、コロニー本体のドームが破損しても、被害を小さくするための備えでもあるのだという。
ガーヴィン氏はソファに腰を下ろすと、向かいのソファに座るよう私に促した。
私はゆっくりとソファに座ると、クッションが優しく身体を包んだ。>
【AD2190/09/29、あの日の様子を教えてください】
ドーム屋根が断熱モードになると、光もさえぎられて、昼も夜も関係なく、暗くなる。もちろん、天井照明はあるから真っ暗にはならない。電力は地熱発電システム、縦軸型風力発電システム、余剰電力を蓄える蓄電システム。電力の無駄遣いを防ぐために気密性の高い作りになっていたんだ。
居住区のあちこちでいつもより早めに作業を切り上げた住人たちがささやかなパーティを始めていた。ほんと、ささやかなものだよ。雑談をしながら食事の準備をし、いつもより一品多いといったような。
食料生産工場では、普段なら品質が劣るとしてリサイクルに回すものも、この日は出荷していた。品質と言っても味や香り、形が少し変なだけだ。普段から出せばいいのに、と思ったけど、半端なものは出したくない気持ちはわかる。
今思うとどちらが先だったのだろう? パーティか、それとも規格外品の出荷か。僕が生まれた頃にはそれが普通だったんだ。
地下の整備区では無人作業機械たちに普段しないようなメンテが行われていた。正しくいえば改造だ。当時、無人作業機械たちが突拍子もない改造案を出すのが流行っていた。期待できそうなものは採用しているけど、そうでないものもある。ブリザードの日は簡単にできそうなものを施すのが習慣だったんだ。
ブリザードは毎年数回発生していたから、あそこで育つと慣れるんだ。驚いたり、ひりひりするのは最初の数年だけだよ。
何かやって時間を潰すのがブリザードの日の過ごし方だったんだ。
僕も友人と合流してパーティをはじめた。エンジニアの友人からは今回の突拍子もない改造ネタを聞いたりしてね。
あの時は何だったかな……思い出した。LEDモジュールの強化だ。既存のLEDモジュール2つを1つに束ねて、より強い光を出す。
そんな他愛もない話をしながら賞味期限が切れそうな非常食を食卓に並べた。
その友人には軽く文句をいわれたけど、食べないよりはいいと思ってね。それにうちの非常食はおいしいんだよ。
温かいスープを飲みながら、屋外カメラで外の様子を確認した。視界ゼロ。温かい部屋でスープを飲んでいるはずなのに身が凍り付きそうだった。
カメラの映像を消して、スープをゆっくりと飲んだ。今回もいつものようにやり過せばいい。
【なぜカメラを?】
ああ、作業場が外なんだよ。縦軸型風力発電機のメンテナンス担当だったんだ。風力発電機に異常が起きたらカメラで確認するんだ。センサー類のアラートと組み合わせて診断して、必要な部品と道具を持っていく。
あの時もブリザードが来る前にマニュアルに従って、カバーを取り付けて地面に倒したんだ。カバーが飛んでないか確認したかったんだけどね。
寝て起きたらブリザードは過ぎているだろう。風力発電機を雪から掘り起こし、カバーを外す作業が待っている、と予定の確認をしたら、どちらかにしろって友人には止められたよ。
【危険は感じませんでしたか?】
まったく。
2日で過ぎる予報で、経験からいっても妥当だと思った。
何かあれば早めに心配性の管理者が警報を出す。心配性というのは僕個人の感想だ。安全側に倒して警報を出すから、空振りに終わることもあった。
今の気象観測網があったら、きっと、僕も彼も別の判断をしただろうけどね。




