99 来客再び
友人がウチに来た。もちろん飲んだり、食べたり、しゃべったりするためだ。
まあ、飲み会と言えばそれまでだが。
友人がウチに入って来ると、猫は隠れる。
今回は、窓とカーテンの隙間から顔を覗かせている。
猫は、無理矢理連れて来ると更に怖がらせてしまうため、放っておくことにしている。
わたし達が飲み会をしている間に近づいてくるのを待つ。
友人は、猫が好きで触りたいそうだ。
だから、尚更、無理強いは駄目なのだ。
ウチの子(猫)のような臆病な子には、根気強さが必要だ。
そして、わたし達が酔い始めた頃、猫はやって来た。
わたしの椅子の横にちょこんと座っている。
友人は喜んで猫を眺める。
「綺麗な顔をしてるね」
「そうでしょ。可愛いでしょ」
わたしは、親バカ全開だ。
だが、友人は、わたしをバカにすることもなく、猫に見入っている。
今日の猫は、友人に触らせてくれるだろうか。
わたしは、友人に、「指を一本出してみて」と言う。
友人は、指を一本猫に差し出す。
猫は、友人の指の匂いを嗅ぎに行った。
あともう少し。触れそうで触れない。
猫は、またわたしの横に来て、落ち着いてしまった。
友人のことを怖がってはいないようだが。
楽しい時間は、あっという間だ。
友人が帰る時間になった。
友人は、猫の前に膝をついて、手を出す。
猫は動かない。
友人は、そっと猫の頭を撫でる。
おお!あの臆病な子が撫でさせるとは!
少しは人に慣れたか、と思った時だった。
猫パンチが友人の手に!
「ごめん!大丈夫?」
「うん。爪出してないよ」
ほっ、良かった。
友人は、満足して帰って行った。
猫は、どうだったのだろう。
猫パンチをするくらいだから、触られたくなかったのかもしれない。
しかし、逃げはしなかった。
少しは人見知りが直っただろうか。




