1.プロローグ
太古の昔、神は地上に人を造り地下に魔族を造った。神はそのどちらも愛し同じ広さの土地、同じ量の食料を与えたが、魔族は地上を求めて略奪を始め、人は人同士で争い始めた。
その欲深き様を見ていられず、神は天に神の国を造る。ただ、神力のある重い神々が天に住まうには地上に柱が必要だった。
柱が弱ければ天は地上に落ち、柱が欠けてもまた然り。いつしか神は人柱を欲するようになっていた。ただ、自分たちが見たくないものから目を背ける為に。地上の争いから身を遠ざける為に。
***
「ねぇ、本当に神様は天上に居るの? 地上に降りてきてはいけないの?」
小さな妹の純粋な疑問に、創世記と書かれた絵本を読む兄が苦笑する。
神様が何を考えているのか、実在するのかなんて少年にも分からなかった。
「そうだね。地上に降りてきてくれれば人柱なんて必要ないのにね」
「うん! シェリー、大きくなったら神様にお願いしてみるね。偉い人になれば神様と会話ができるんだもん」
「…………それは素敵な夢だね」
もうある程度現実を知る年齢になっている少年は歳の離れた妹の頭を撫でる。
どこの国も立憲君主制を取っており、王族に生まれなければ王様にはなれない。貴族になるのもまた、同じこと。
少年の父は国の騎士団に所属しているものの国を動かす政治に関わったり、まして神の声を聞けるような権力を持っていなかった。
それでも少年は少女の夢を壊すことなく頷く。
いつか現実を知ることになるのなら、小さな間だけでも夢を見せてあげたい。なんにでもなれると思わせてあげたい。
それは少年にとっても夢のような話。
微笑みあう2人を祝福するかのように風が吹き、優しい春の風が頬をくすぐる。
とても代えがたい、幸せで普通の日常…………だった。




