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77.情報戦争

 


 新世界歴1年11月21日、アメリカ合衆国 首都ワシントンD.C. ホワイトハウス 大統領執務室


 この日の夜、執務室に居る大統領や副大統領、国防長官や国務長官などの数名の視線はある一角に集中しており、皆冷たい目でその視線の先に居る人間を睨んでいた。


「・・・済まない。余りにも衝撃的な報告だったので、聞き流してたかも知れない。申し訳無いが、確認の為、もう一度説明して貰えるかな?」


 10人居たら10人全員がその場に居たくないと断言する雰囲気の中、大統領は視線の先の人物に向けてそう言った。

 横に居る副大統領は頭を抱えており、国防長官は「有り得ない」と顔面が蒼白になり、国務長官は魂が抜けてるかのようにその場に突っ立ってる。

 そして大統領に「もう一度言え」と言われた皆の視線を集める人物、CIA長官は先程言った事を繰り返し報告した。


「日本で、その、構築していた、諜報網が、その、崩壊しました・・・」


 今にも消え入りそうな声で言い切ったCIA長官の報告を聞き、「聞き間違えじゃ無かった」かと、大統領はため息を吐いた。


 CIAは世界最大のヒューミント機関と言われており、日本のみならず、世界中に諜報網を張り巡らせている情報機関である。

 過去には中国での諜報網が壊滅したなどマスコミが報じた事もあるが、失態レベルはその時よりも今回の方が大きかった。


「日本か・・・つい最近公安調査庁(PSIA)と協力して日本内のロシアや中国、ついでに韓国の諜報員を処理したが・・・まさか、それも仕組まれていたのか?」


 国防長官が言っているように、最早韓国を助ける気はアメリカには無く、国家情報院(NIS)を日本国内から排除するのに進んで協力していた。

 と言っても、その後にCIA日本支部は何者かに潰されているのだが、国防長官はその排除も日本の仕込みだと考えた。


「いえ、情報本部(DHI)公安調査庁(PSIA)は我々CIAやDIA、NSAと協力関係にありました。彼等にそんな事を実行に移せる人員も予算もありません。イギリスやオーストラリア国内の支部も壊滅状態に陥っている事も踏まえますと、別の国や機関にやられたと考えるのが、自然かと・・・」


 CIA長官の言葉に全員が頭を捻らす。

 イギリスやオーストラリア、日本などの新太平洋地域の支部が壊滅したり壊滅状態に陥っているのは大問題だが、CIAだって素人の集まりでは無い。

 CIAの現地支部を上回る人員と予算が投入されているのだろう、そうなればアメリカに勝ち目は無い。


「と、言ってもな。地球だけで無く色々な世界が混じり合ってるんだ。スフィアナかも知れないし、ミレスティナーレかも知れない。はたまた別の国かも知れない。CIAは予想を付けてるのか?」

「・・・予想したくても出来ないんですよ。」

「ん?どういう事だ?」


 基本的に協力者や工作員を処理したりすれば跡が残り、推測も付け易い。

 その為、相手がどの国か?どの機関か?など、ある程度は推測できる筈なのだが・・・


「忽然と姿を消しました。跡も何も残っていません。まるで魔法のように消えた。そう報告してきました。」

「・・・魔法ねぇ〜。」

「魔法と言うと、サリファ世界の国々か?」

「となると、スフィアナか?」


 副大統領の発言に皆が頭を捻る。

 と言っても、日本を含む新太平洋地域やその周辺の異世界国家などミレスティナーレ、スフィアナの2ヶ国しか無い。

 日英スとの戦争でミレスティナーレが敗北している以上、普通に考えれば可能性が高いのはスフィアナ連邦国なのは誰でも初めに考え付く。


「日本やイギリスとの同盟関係は解消してしまったからなぁ。早まったか?」

「ここまで距離が離れて仕舞えば仕方がありません。日本やイギリスに軍を配置するメリットも無くなりましたので関係解消は仕方が無い事でしょう。」

「それに同盟関係は解消しましたが、安全保障上でも繋がりはありますし、何しろウチのミサイルは日本製の電子部品が無いと動きませんしねぇ。」


 そう堂々と言い切った国防長官に大統領や国務長官は白い目を向ける。

 それはそれでどうなんだ?と言いたそうだが、誰もそれを口に出す事はしない。

 グローバル化とはそういうものなのだから。


 爆撃の照準に日本製のカメラが必要な事やミサイルのシーカーが日本製なのは何十年も昔から変わらない事実である。

 例え、その日本製を値段の高い自国製に変更して精度が悪化すれば本末転倒である。


「・・・とりあえずCIAやNSAはその敵が何処の国の組織か調査してくれ。日本やイギリスの情報機関には、伝えなくて良い。彼等が裏で組んでる可能性もあるからな。」

「了解しました。」


 例え同盟関係を結んでいても、し裏では自国以外全て敵というのが情報戦争である。

 一時的に協力しても、それが終われば裏切り、見捨てる人間が優秀な諜報員である。

 と言っても、今のアメリカの敵はテルネシアでありレムリアである。

 主敵が居る以上、余り多くのリソースを割く事は出来ないが、アメリカの情報機関は再び日英豪の諜報網を構築する事に決めたのである。





 新世界歴1年11月22日、日本国 首都東京 某所


 東京都内の繁華街の一角、仕事終わりのサラリーマンが行き交う場所を歩いてた男はふと、人気の無い路地に入り辺りを確認すると携帯を取り出し、誰かと電話し始めた。


「再びアメリカが動き出した。そうだ、また全員沈めておいてくれ。」

『・・・・・』

「あぁ、そうだな。PSIAやMI6は放置しておいて良い。じゃあ、後は頼んだぞ。」


 そう言って男は携帯を切った。


「ふぅ、この国も極端だな。」


 そう言って男は再び人々が行き交う通りに戻りながら今後の予定を考え始めた。


 通常、情報機関というのは人を使うヒューミント、電波を傍受するシギント、情報を解析するイミントの大きく3つに分かれており、発展途上国、経済大国問わず、どの国も人を使うヒューミント機関が最も大きい。

 だが、この国では電波を傍受するシギント機関が最も大きく、人を使うヒューミント機関が小さい。

 更に見たところヒューミント機関もそれなりの組織のようなのだが、それが余計にチグハグな感じをもたらしていた。


 と、言ってもこの国と海を挟んだ隣国も同じような感じなので、この国の居た世界では珍しい事では無いのかな?と思いつつ歩いて行った。





 新世界歴1年11月22日、イギリス連合王国 グロスター州 チェルトナム 政府通信本部


「それは本当なのかね?」


 この日、政府通信本部(GCHQ)内の執務室で部下からの報告を聞いた局長は思わず聞き返していた。

 この政府通信本部(GCHQ)内の執務室は部屋中に妨害電波を掛けており盗聴される恐れが無い。


「はい。NSAの通信を傍受したところ、我が国、オーストラリア、日本のスパイ網が壊滅したそうです。DHIの傍受した通信も解読中ですが、恐らく同じ内容かと・・・」


 サラッとアメリカと日本の通信を傍受したと言っているが、アメリカも日本もイギリスの通信を傍受しているので、同じような事だ。

 ちなみにGCHQはNSAと仲が良いなんて言われているが、現実はこんなものである。


「・・・スフィアナか?」

「恐らくFISでしょう。信じられない能力です。」

「接触して1年と経たずにコレか・・・呑気にしていると全部喰われるな。」


 スフィアナとは接触してまだ1年経っていないのだ。

 なのに、アメリカの諜報網の一部が潰され、その全容の把握すら出来ていない。

 一応、同じNPTO加盟国である為、スフィアナのFISとは同盟関係であるが、敵ならば間違いなくこの国(イギリス)の情報機関もCIAイギリス支部と同じ運命を辿っていただろう。


「FISの情報は合ってるのか。」

「・・・あくまでも公開情報ですからね。総人員8000名と言っていますが、DHIの知り合いは1万2000人は居るって言ってましたね」


 GCHQとDHIの関係はGCHQとNSAの関係より深い。

 まぁ、これは対アメリカ包囲網の一角なのだが、言うなればアメリカに全て悟られるのはマズイという危機感から出来た関係なので、アメリカの新太平洋地域の支部が壊滅した今、崩れ去る可能性は十分にあった。


「居そうだな。FISって、ヒューミント・シギント・イミントなどの情報機関の複合組織なんだろ?我が国だって全て合わせても1万人いかないぞ?」

「日本が確かDIHが4000名、PSIAが2000名で約6000名か・・・」

「日本は警察にも公安が居るぞ、まぁそれを置いておいても1.2万、多いな。」


 多いと言いながらも、彼等は1.2万以上居ると確信していた。

 何故なら自国も協力者としてそれ以上の人員を確保しており、日本も確保していたからである。

 噂では日本で情報機関の統合が予定されており、それにより増員するそうだ。

 同じく台湾やオーストラリア、ニュージーランドでも情報機関の増員が予定されており、今後情報戦争は更に激しさを増すと考えられている。


「日本の情報機関が統合されれば、それはそれで驚異だからなぁ。」

「全て合わせれば1万か2万は平気で超えそうですからね。」

「普通、警察に海外での諜報をやる組織なんてねぇよ!」


 ちなみに日本の公安警察は警察庁警備局、警視庁公安部、都道府県警察警備部、の3つに存在しており、その人員や規模などは一切不明である。

 更に海外での公安警察は国内を対象にしているのと違い、日本の公安警察は海外を対象にしている組織もあり、意外と日本はそれなりの情報機関を有しているのである。


「アレが全部統合されたら我が国の規模では敵わんぞ。」


 この後、絶対に人員と予算を増強させてやると決めた局長であった。

 その結果増強されたのだが、シギント機関であるGCHQの人員や予算は据え置きだったそうだ。







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[一言] 天狗の仕業じゃ
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