13.スフィアナ連邦国から見た周辺国の軍事力
新世界歴1年1月6日、スフィアナ連邦国 首都レスティナード スフィアナ連邦国防衛総省
首都レスティナードにあるスフィアナ防衛総省はスフィアナの陸軍・海軍・航空宇宙軍・戦略軍の四軍によりスフィアナの安全保障を担っている中央省庁である。
諸外国と同様に防衛総省の職員は全国家公務員の約半分であり、スフィアナ最大の国家機関である。
そんなスフィアナ防衛総省本庁舎の外観はベルギーブリュッセルにあるNATO本部庁舎とそっくりであり、先端が丸みを帯びているか、上に伸びているかの違いでしか無い。
そんな庁舎の中ではここ数日、非常に忙しかった。
地理的環境の変化により、これまでの防衛政策を全て見直す必要があったからだ。
更に、既に出来上がった予算案の一からの見直しと装備調達計画の再考という職員にとって悪夢の通達が届いたのである。
これはもちろんスフィアナに限った事ではなく、日本国防衛省やイギリス国防省にも同じ事が言えた。
とりあえず国の安全保障に関わる者にとっては地獄の日々だったと言っておこう。
「ではこれより、我が国が新たに接触・国交を樹立した国の中でも比較的軍事力が高いとみられる日本国、イギリス連合王国、台湾民主国、オーストラリア連邦国の4ヶ国の戦力の報告を行いたいと思います。」
そう言ったのはスフィアナ防衛総省の職員の1人である。
彼の目の前には陸軍・海軍・航空宇宙軍・戦略軍の人達、更には防衛大臣と参謀総長が座っていた。
スフィアナ連邦国はこの世界に転移してから6日で、別世界の7ヶ国、日本・イギリス・台湾・オーストラリア・ニュージーランド・アイルランド・アイスランドと国交を樹立した。
とりあえずは友好的に接触し、地理的にも近い為、これから軍民問わず交流が盛んになるだろう。
そして、スフィアナはそんな4ヶ国と軍事同盟を主とした条約機構に加盟する事を前向きに考えていた。
その為にはその4ヶ国の軍事力を詳しく知る必要があった。
幸いにもその4ヶ国は大方の情報が書籍として軍事情報誌に掲載されていたので把握するのは比較的簡単だった。
「では、まず我が国に最も近い日本という国について説明致します。」
「日本の正式国名は日本国と言い立憲君主制の国家です。彼等の軍隊は自衛隊と呼ばれ陸軍・海軍・航空宇宙軍に当たる陸上自衛隊・海上自衛隊・航空宇宙自衛隊の3つに分かれています。陸海空でそれぞれ兵力は14万5000人、4万5000人、5万人で総兵力は約24万人です。これに準軍事組織や予備役などを合わせますと約32万人となります。」
「日本の人口は確か1億1600万人くらいだったろ?人口当たりの軍人数は少ないな・・・」
確かに他国と比べても日本の人口当たりの軍人数は非常に少ない。
ただ、この件に関しても、特別珍しい事では無い。
「そうですね。国防費も絶対額では多いみたいですが国内総生産あたりは1.1〜1.2%と高く有りません。近年は増加傾向にあるようですが、10年ほど前までは1%だったそうです。これは日本国内にアメリカと言う彼等のいた世界で最も大きい軍事大国の部隊が駐留していた為で、現在は1万人程ですが、10年程前までは5万人が駐留していたようです。」
職員の説明に出席者達は手元のタブレットを見ながら「なるほど。」と頷く。
軍事大国が駐留している為、国防費が相対的に少ない国家は彼等の世界でもあった事だ。
別段、日本が珍しいわけではない。
「島国の為、海上戦力に力を注いでおり、海上自衛隊は56隻の主要艦艇と22隻の潜水艦を保有しており、我が国とそ う大差はありません。更に我が国のアイギス防空システムと似たような性能を持つイージスシステムを搭載する艦艇を8隻保有しており、4つの艦隊全てに2隻づつ配備されています。」
アイギス防空システムは地球で言うイージスシステムと同様の防空システムである。
だがイージスシステムよりも巡航ミサイルに対処する能力が優れており、ミニイージスと言った感じである。
「日本は2隻の軽空母を保有していますが、艦載機は我が国と同様、航空宇宙自衛隊が運用しているようです。航空宇宙自衛隊の戦闘機保有数は310機とこちらも我が国と大差ありません。どうやら我々の世界と日本のいた世界の技術発展形態は同じようでこの310機のうち約100機程がステルス性能を持つ戦闘機です。」
航空宇宙自衛隊初のステルス戦闘機であるF-35戦闘機は2017年から配備が始まり、2030年現在、垂直離着陸型のB型及び通常型のA型を合わして100機程配備されている。
2035年までに残りの年10機程度の約50機近くを配備する計画である。
更に2029年には日英次期戦闘機開発計画が完了し、イギリス名:テンペスト、日本名:F-3が来年度後半から配備がスタートする予定である。
「ふむ、戦闘機の性能は少し後続距離が短い程度で、性能や形はそこまで変わらんか・・・」
「このF-2という戦闘機は我が国のヴァイパーと同じような役割の戦闘機だな。同じ島国だからか設計思想も似るのかな?」
『ヴァイパー』はスフィアナ連邦国が開発した大型双発戦闘機である。
『F-2』を双発にし、ガナード翼を取り付けた感じの戦闘機である。
種類では多用途戦闘機になるのだが、『F-2』戦闘機と同様に対艦誘導弾を4発搭載出来る。
ただ、『F-2』とは違い設計段階から対地攻撃任務も行えるように多数の誘導爆弾や対地攻撃ミサイルなども多数、搭載出来る。
150機程配備されており、スフィアナ連邦国空軍の主力戦闘機の1つである。
「そちらのF-2は先程出したアメリカの戦闘機を大幅に改造した戦闘機だそうで、本家の戦闘機とは中身が全く別物だそうです。」
その説明に空軍の第8航空団司令はボソッと小さく「欲しいな。」と呟いた。
司会進行役の職員は聞こえなかった事にして次の国へと進んだ。
「では次ですが、日本を挟んで更に奥にあるイギリスと言う国について説明致します。」
そして2ヶ国目の国家、イギリスの安全保障に関しての説明が始まった。
「イギリス連合王国の正式な国名はグリートブリテン及び北アイルランド連合王国と言い、日本と同様に立憲君主制の国家となります。彼等のイギリス軍は陸海空軍の三軍編成で、それぞ10万人、3万5000人、4万人の計17万5000人で、予備役や準軍事組織を入れて約36万人になります。」
イギリスについての説明を聞くが、古くからの海軍国家といった感じの印象であり、何処かスフィアナと似てるなと出席者達は思っていた。
「イギリスは過去に世界中に植民地を形成していた為、今は本国周辺に固まったようですが、前世界では世界中に海外領土を有してた為、陸・海・空軍共に外征能力の非常に高い軍隊となっています。主要艦艇は24隻と少ないですが、2隻の中型空母を保有しており、8隻の大型潜水艦も保有しています。」
そう言い目の前のディスプレイに表示されたのは2隻のイギリス海軍の空母、【クイーン・エリザベス級】である。
スフィアナ海軍が保有している空母と同様にツインアイランド形式だが、スフィアナの空母とは違いスキージャンプ台が付いていた。
「また、イギリスは彼等の世界で特殊作戦部隊の元祖と言われているSASと呼ばれている特殊部隊を保有しており、他国から一目置かれているようです。更に、このイギリスと言う国はぶっ飛んだ作戦をする国としても有名で、彼等がこの世界に転移した時には自国の防空警戒を日本に放り投げ、自国軍が保有している空中給油・輸送機と早期警戒機を全て付近の捜索作戦に投入するという事を行いました。」
「だが、レーダーサイトがあるだろ?そもそも早期警戒機などレーダーサイトの補完なんだから・・・」
この発言は最もである。
最悪、レーダーサイトがあれば早期警戒機などは必要無いのだがら。
早期警戒機や早期警戒管制機は有れば最高、無いのなら仕方がない。
と言った感じの装備である。
その為、早期警戒機や早期警戒管制機を保有している日本は他国から見れば余裕があるのである。
「日本は自国領土全てをレーダーサイトの警戒内に入れてますが、そういう国は少なく、イギリス付近諸国が友好国だった事も有り、全域は入ってません。」
もし日本がそういった作戦をしたならそこまで言われなかっただろう。
イギリスが行ったからこそ(日本なら行わない)、ここまで言われるのだ。
「・・・なるほど、確かにぶっ飛んだ作戦だな。」
「はい、では次の国ですが、台湾は共和制の国家で日本の南西地域にある島国です。台湾の正式な国名は台湾民主国と言い、台湾民主国軍は陸・海・空・憲兵の四軍編成です。それぞれ13万人、4.5万人、3.5万人、0.5万人の約21.5万。準軍事組織や予備役を入れた総兵力は190万人となります。」
そう言った時、会議室内の台湾に対する警戒度が一つ上がった。
「常備軍はともかく予備役が多いな。台湾って確か人口2400万人の国家だったろ?戦争でもしてたのか?」
参謀総長の最もな発言に司会進行役の職員は落ち着いて説明する。
「いえ、前世界の地理的に近い位置にあった中華人民共和国と言う、え〜、アルテミスのような国家体制の国が近くにあり、軍事的脅威に晒されていた為、予備役が多いそうです。ただ、海軍艦艇や空軍機も旧式が多く、もし戦争になった時に脅威になるのは陸軍くらいですね。前述の日本やイギリスとは友好国だそうなので、装備の更新もこれから進んでいくと思われます。」
「なるほど・・・」
その説明で納得したのか異議を唱えてくる出席者は居なかった。
続いて最後の国家の説明に移る。
「はい。では最後にオーストラリアについて説明させていただきます。この国は元々イギリスの植民地で、現在でもイギリスを中心として形成されるイギリス連邦の加盟国です。面積は770万㎢と広大ですが、人口は2500万人程で、軍事力もそこまで高くは有りません。国家体制は我が国と同様で彼等は連邦立憲君主制と言っています。」
オーストラリアの面積は広大だ。
何せ、世界で唯一大陸全土を統治下に置いてる国家なのである。
更に人口は2500万人と、日本やイギリスと比べると面積と人口が釣り合ってない。
「オーストラリアの軍事組織であるオーストラリア国防軍は陸・海・空軍の三軍編成でそれぞれ3万人、1.5万人、1.5万人の計6万人、装備は最新の物が多いそうですが、準軍事組織や予備役を入れても7.5万人程と小さいです。」
それを聞いて出席者達のオーストラリアに対する興味は冷めてしまった。
彼等が求めていたのは、もし軍事同盟を結成した時に、戦力として使える国家である。
そしてその後ニュージーランドやアイルランドの軍事関連の話を聞いた。
そして話を聞く限り彼等が期待できるのは2ヶ国しかなかった。
「なるほど、実際に何かあって使えるのは日本とイギリスのみか・・・」
そう聞いた時、何人かの出席者が心の中でこう思った。
(日本とイギリス以外は荷物か・・・)




