表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歓楽街を禁止された男爵庶子、お金が足りず言葉の通じない娘を買う 〜実は彼女は日本から来た異世界人〜   作者: 三多来定


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/20

1.男爵庶子 ユレシア・イルベルト

「この、バカ息子がっ!」


 ガラガシャーンッ!!


 頬にかなりの衝撃と痛みを受け、ユレシアの体は壁まで吹っ飛んだ。


 さすが、元騎士の親父様(おやじさま)は、力がお強い。


「歓楽街にはあれほど行くなと言っただろう! 何故守れないんだ!?」


 ユレシアはゴホゴホと咳き込んだ。

 口の中を切ったようで、血液混じりの唾液が出てくる。


「親父様の遺伝で、性欲が強すぎまして……」

「アホかーッ!!」


 ユレシアの父親である、ガレシアは、大声で叫ぶと、机上の書類をぶわさっとユレシアにぶつけた。





 ここは、ガレシア・イルベルト男爵の屋敷。

 ガレシアの息子であるユレシア・イルベルトの部屋である。


 ガレシアは騎士として30年前の戦争で功績をあげ、男爵位を賜り、小さな領地を治めている、いわゆる成り上がり貴族である。


 ユレシアはガレシアの3番目の息子で、ガレシアがうっかり手を出してしまったメイドの子だ。


 本来なら、すでに後継ぎがいるこのイルベルト家に、庶子であるユレシアの居場所などないのだが、ユレシアは幼少期から兄たちより勉学に優れていたため、領地経営の観点から、部屋を与えられ、父親であるガレシアの手伝いをしているのだ。


 ちなみにユレシアの母親は、生活をイルベルト家から保証され、田舎でのんびりカフェを経営している。


 ユレシアは、ガレシアの人を大切にするところを、結構尊敬している。


 そんなガレシアが、殴るほどの事というのは……


「領主のイルベルト家の息子が歓楽街で遊び呆けてるいると、噂になっているんだよ!」


「変装したんですが……」


「行く事自体が問題なんだ!」

 ガレシアは、バァンと机を叩く。


 ユレシアは、「それでしたら」と立ち上がった。


「男の召使いではなく、メイドをつけてください」

「手を出すだろう!?」

「はい。同意があれば」

「アホかーッ!」


 ガレシアは机をドォンと倒す。

 相変わらずの、馬鹿力である。


 机に置いてあった、インク壺が倒れ、絨毯に黒い染みが広がっていく。


 同室にいたユレシアの召使いであるカラムが、ゆったりした動作でインク壺を片付ける。


 カラムは60歳になる年配の召使いで、ユレシアの仕事も手伝う優秀な男だ。


「お前がそんな風だから、もう23歳なのに、誰もお前の嫁に来たがらないんだよ……」

 ガレシアは頭を抱えている。


 ユレシアは、それは違う、という言葉を飲み込んだ。


 ユレシアが真面目に過ごしていたとしても、成り上がり男爵家の、さらに庶子であるユレシアの妻になど、誰もなりたくないのだ。


 ユレシアに嫁がされることは、貴族令嬢にとっては、もはや処刑なのである。


 それではあまりにも、その令嬢が可哀想だ。

 

「親父様、前にも言いましたが、私は結婚する気はありません。領地経営の仕事はお手伝いしますので、そこはお願いしたいのですが……」


「お前の言いたい事は分かっている。私も結婚を無理やりしろとは思っていない。結婚をしたら女遊びがなくなるかと思っているだけだ」

 ガレシアは、倒した机を元に戻しながら言う。


 ちゃんと戻すところが、ガレシアの良いところである。


「ああ、そういうことですか……」

 ユレシアは、それは本末転倒だ、と息を吐いた。


 結婚をしないために、女遊びをしているのだ。

 まあ、もちろん、趣味も大いに入っているが……。


「ユレシア、その、奴隷の女性は、どうだ?」

 ガレシアは、とても言いにくそうに、腕を組みながら言う。


「珍しいですね。親父様が奴隷の話をするなんて……」


 この国は、奴隷制度がある。

 この国の貴族にとっては、奴隷を買うことは普通のことなのだ。

 もちろん、奴隷の人権を守る法律もあるのだが、貴族の家で何をしているかなんて、結局は誰にも分からない。


 ガレシアは元平民ということもあり、この奴隷制度に難色を示す珍しい貴族の1人である。


「……奴隷制度は気に食わないのだが、ユレシアが歓楽街に行かないのであれば、まあ……」

 

「……そんなにダメでしたか。歓楽街へ行くのは……」


「今、殴られたのをもう忘れたのか? そんなにダメなんだよ。ホント、やめて」


 どうやら、かなり外聞が悪いらしい。

 ユレシアからすると、歓楽街はダメで奴隷はいい、というのも納得出来ないが、秘匿性の問題だろうか。


「分かりました。歓楽街通いはやめます。でも、奴隷は要りません」

 ユレシアは、キッパリと言い放った。


 ガレシアは頷くと、ユレシアに封筒を渡した。

 ユレシアは封筒を受け取り、中を確認する。


 封筒の中身は、金貨だ。


「……? 何故、金貨を?」

「その金貨で、まあ、買うといい……好みの女性を……」


 ユレシアは愕然とした。

 奴隷は要らないとハッキリ言ったのだ。


「あの、信用されていないということでしょうか?」


「ああ。悪いが、全然、全く、信用していない」

 ガレシアは、ユレシアよりもキッパリと言い放った。




 こうして、ユレシア・イルベルトは、奴隷を買うことになったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ