《行詔・祈福天燈二》-02
燕行は絶頂の後の倦怠の中にありながらも、半眼で二人を観察していた。
この二人に何か不審な動きがないか、見極めようとしていたのである。
しかし、彼の目に映るのは、ただ、自分にさんざん責められ、疲れ果て、それでもなお瞳いっぱいに自分を映す小さな女たちだけであった。
その大きな達成感が、彼に残っていた最後の警戒を解かせた。
衣すらまともに着られぬほど弱々しい二人の姿を見ているうち、燕行の胸に再び邪火が灯った。
これこそが豪門の名妓と山野の村婦の違いか。
寝台の上で魂を奪うだけではない。衣を着る姿までも、男の胸を疼かせる。
「何を着る必要がある。今宵は良辰美景、無駄にしては惜しい」
燕行は大笑した。
大きな手を振るい、衣で胸元を隠そうとしていた小橋を、再び懐へ引きずり込む。
大橋もそれを見て、自然に反対側へ倒れ込んだ。
甘く恨めしげな声を漏らしながらも、従順に彼へ絡みついた。
この「一晩かけた大戦」への誘い。
表向きには、燕行の雄風が再び立ち上がっただけに見えた。
だが実際には、それこそが姉妹による最後の絞殺であった。
絡み合う時間が一刻増えるごとに、燕行の体力は一分ずつ削られる。
流連が一息長くなるたびに、山下の允文軍は山寨の門へ百歩ずつ近づいていく。
狂ったように揺れる紅燭の影の中で、燕行は自分こそがこの温柔郷の主人だと信じていた。
だが彼は知らなかった。
自らの最後の体力を使い、太行山寨の墓穴を、自分自身の手で掘っているのだということを。
紅燭は半ばまで燃え、燭涙が磁器の台に鮮やかな赤い溜まりを作っていた。
燕行のこの「回馬槍」は、姉妹花の思惑にまさしく嵌まった。
先ほどの初めての雲雨が攻心のためであったなら、今度の纏綿は、体力と意志を二重に搾り取るためのものであった。
大橋と小橋は、もはや初めのような矜持を装わなかった。
紅袖詔の女が持つ、語るだけで男を恐れさせる手管を、惜しみなく解き放ったのである。
二人は、柔らかく冷たい藤蔓のように、燕行という老木へ交互に絡みついた。
大橋は上にあった。
細い腰は奇妙な律動を描き、速く、遅く、絶えず燕行を「もう届きそうで届かない」焦燥へと誘い込む。
この宙吊りの快は、最も体力を奪う。
燕行は何度も腰を突き上げ、主導権を奪い返そうとした。
だが、そのたびに、明日のために残しておくべき精気を、自ら削っていることに気づかなかった。
小橋は彼の下半身と胸腹の間を遊走した。
指先と舌先が交互に火を点ける。
局所を飽和させるような挑撥により、燕行の感覚は常に極限の興奮状態に置かれた。
さらに疲労を悟らせぬため、二人の囁きはいよいよ露骨に、そして野心に満ちていった。
「大王……もっと激しく……明日になれば、大王こそが太行山ただ一人の真龍。奴家たちは大王に従い、天下に君臨いたします」
皇図覇業の幻想。
それは興奮に煽られ、最も烈しい媚薬となった。
燕行はそれを聞き、全身に尽きぬ力が湧くように錯覚した。
二人の女の身体の上で、自分の強さを証明しようと狂ったように求める。
だが、額からは雨のように汗が流れ、心臓は限界に近い速さで打ち、拳を握る力さえ、ひそかに失われていた。
夜が最も深くなり、山風がいよいよ鋭くなった頃、姉妹は最後の秘技――「合歓鎖」を使った。
大橋が燕行の胸の上へ跨がり、両手で彼の手首を固く押さえつける。
そのまま虎皮の榻へ彼を縫い止め、紅唇を覆いかぶせた。息を奪い尽くすかのような口づけであった。
同時に、小橋は後ろへ身を反らし、激しく前後に動いた。
極限に近い締めつけと濡れた熱の中で、燕行を最後の衝刺へ導いていく。
それは高頻度の感覚攻撃であった。
視覚には、白磁のような二つの肢体が目の前で重なり、揺れる。
聴覚には、姉妹の艶声と荒い喘ぎが絡まり合う。
触覚には、あらゆる場所から訪れる柔らかな圧迫、甘噛み、揉みしだく指。
最後の瞬間、燕行は低い咆哮を漏らした。
だが、その声には、力を使い果たした者だけが持つ虚ろな弱さが滲んでいた。
彼は榻の上に崩れ落ちた。
胸は激しく上下し、視界は霞んでいる。頭は真っ白で、指一本持ち上げる力すら残っていなかった。
しかし、この「搾取」はなお、最も残酷で、最も徹底した段階へ入っていた。
二人の姉妹はよく知っていた。
燕行のように長年、刃の上で生きてきた草莽の英雄は、体も強ければ意志も強い。骨髄の奥に残った最後の力まで引きずり出さねば、たとえ明日、刀の柄を握れるだけの力が残っていても、活け捕りの策にはなお変数が生じる。
ゆえに、小橋は再び、榻の上で力尽きている燕行を見た。
口元に、愛らしい笑みを浮かべる。
彼女は彼を清めるふりをした。
だが舌先は、燕行の身体の線をなぞりながら、胸から腹へ、さらに下へと滑っていく。
そして、彼がこれまで誰にも触れさせたことのない、秘められた場所へと近づいた。
小橋の動きは繊細で、大胆であった。
やがて彼女は燕行の脚の間に跪き、柔らかな腰を深く折る。
濡れた熱い舌先が、敏感な縁を回り込み、正確に、そして容赦なく、未だ触れられたことのない禁地へ達した瞬間――
燕行の身体が、びくりと強張った。
背骨を雷に撃ち抜かれたような痺れが、頭頂まで突き抜けたのである。
太行を横行した草莽の英雄が、こんな感覚を知るはずもなかった。
豪門の禁奥に伝わり、男の意志を溶かすためだけに磨かれた房中の奇術。
死んだ魚のように横たわっていた彼は、極度の羞恥と凄まじい快感の中で、自分自身でさえ聞き慣れぬ低い呻きを漏らした。
その声には、かつての威厳などなかった。
ただ、感覚によって完全に解体された男の無力と沈淪だけがあった。
大橋は頃合いを見た。
燕行に一息つかせることなく、蓮のような歩みで移動する。
小橋の「後方からの助攻」によって、いったん枯れたはずの兇器が、極端な刺激の中で再び凶々しく起き上がったのを確かめると――
大橋は下唇を軽く噛んだ。
その顔には、半ば恥じらい、半ば期待する名門の矜持が浮かんでいた。
彼女は燕行の腿をそっと開き、両手で彼の脇を支えた。
親指の先は、彼の胸の紅い点を規則正しく弄ぶ。押すたびに、秘めた旋律が宿っているようだった。
そして、ゆっくりと跨がる。
その兇器を、幽深の泉へと導いた。
「大王……奴家のこの身、今宵すべて、あなた様へお預けいたします」
大橋は囁きながら、ゆるやかに身を沈めた。
彼女はわざと両膝を内へ寄せ、大腿の内側を燕行の腰へ密着させた。
二人が繋がる光景は、重なり合う肉体の曲線と垂れ落ちる黒髪の中へ、完全に隠される。
その「見えぬ締めつけ」が、かえって燕行の心に最後の征服欲を燃やした。
額には青筋が浮かび、彼は鉛のように重い首を持ち上げて、その幽径を覗こうとする。
だが見えるのは、上下に揺れる大橋の白い腹ばかりであった。
大橋が完全に彼を呑み込み、ぴたりと身を重ねたその瞬間――
後方の小橋が燕行の両脚をしっかりと開き、舌先に力を込めた。さらに深く入り込み、攪拌する。
前後から襲う二つの感覚は、まったく異なるものでありながら、同じほどに極端であった。
燕行の脳は、その瞬間、完全に断線した。
彼は口を大きく開けた。
喉から漏れたのは梟雄の怒号ではなく、女のように途切れ途切れの、砕けた喘ぎであった。
双眸は虚ろに帳の天井を見つめている。
汗は漿のように流れ、胸の内では心臓が狂ったように打っていた。脈がひとつ跳ねるたび、命そのものが流れ出ていくかのようであった。
大橋は耐えきれぬふりをして、上から彼の身体へ近づいた。
冷たい玉のような肢体が、燕行の灼けた胸へぴたりと貼りつく。
冷と熱が交互に襲い、燕行は神魂が散るのを感じた。
大橋の笑みを含んだ瞳は彼を見下ろしている。
だが、その手つきは容赦なく、むしろ苛烈であった。
揉み、撫で、押し、擦る。
すべての動きが、彼の骨髄に残った最後の精気を絞り尽くしていく。
ついに、長く激しい戦慄の果てに、燕行は最後の悲鳴にも似た声を漏らした。
身体全体から骨を抜かれたように、彼は虎皮の榻へ沈み込んだ。
瞳孔は散り、兇器は最後の収縮を終えると、完全に萎え落ちた。
そこには、ほんの一滴の余力も残っていなかった。
小橋は優雅に口元を拭った。
大橋と視線を交わし、二人は静かに微笑む。
大橋はなお名門の閨秀らしい落ち着きを崩さず、ゆっくりと燕行の上から降りると、乱れた鬢の髪を指で整えた。
窓の外、空の端に、かすかな魚肚白が差しはじめていた。
燕行は極限の疲弊の中、深く眠りへ落ちていた。
それは眠りというより、体力を完全に搾り尽くされた者の昏睡に近かった。
彼は知らない。
その時、大橋が優雅に彼の横たわる裸身を跨ぎ越え、そっと窓を押し開けていたことを。
山下――
かの「祈福天燈」が消えた場所では、允文軍の甲冑が、すでにすぐそこまで迫っていた。
天下に名を轟かせた太行山の将軍は、今、温柔郷の中で裸のまま横たわっている。
刀は遠く、架け台の上。
そして彼の命は、すでにこの姉妹花の細い指先に懸かっていた。




