8.ドクゼツ
「どうしたの! いったい?」
早乙女は立ちあがった。餅柿や猫屋敷は、自分のデスクから暖かい目で見ている。メンバーたちは早乙女を取り囲んだ。
「今度は警官になったぜ!」と、元自衛官のサーラ。
「ええ!?」
「うちら、アイドル、やめたんや」とミカンちゃん。
「うそお!」
目を剥いた早乙女に、藤原は「嘘……」と言った。
「今日は防犯ポスターの撮影に来たんです」
花岡の黄疸はすっかり治り、彼女は頬をピンク色に染めていた。あれから、そら豆は絶対に食べないように気を付けているらしい。
「びっくりした?」と中川は笑った。
『ガラスハウス(特別編)』は、次期、放送連盟宇宙賞テレビ部門のノミネートが確実視されている。
そして『ジャンブル・ガールズ』の人気は社会現象にまでなっていた。
花岡摩耶は、健気に毒舌キャラを演じようと努力していたことが知れ渡り、人気が爆発していた。
人気投票でミカンちゃんを追い抜き、罵られたい女性アイドル、ナンバーワンの座に輝いている。
早乙女は、「脅かさないでよ」と表情をゆるめた。
ガラスの向こうでは、警官たちが手を振り、歓声を上げている。
サーラと中川は、手をピストルの形にして、「ばーん」と彼らを撃った。
警官たちは幸せそうな顔をして、両手で胸を押さえてよろける。
ミカンちゃんも続けて、セクシーに「ばーん、ばーん」と手ピストルを撃った。
警官たちは笑いながら、一発目を平手で弾き、二発目を真剣白刃取りする、お約束の動きを見せた。
「なんで、うちのは避けるんや!」
ミカンちゃんは「きー!」と地団太を踏んだ。体重で近くの机が揺れる。
それを見てみんな笑い、花岡はミカンちゃんに声をかけた。
「え、なになに? 床の強度でも調べてるの?」
場がサーと静かになる。
メンバーたちが花岡を取り囲むと、彼女は真顔で、すこし身を引いた。
中川が相好を崩し、サーラは花岡の肩に手を置く。
「いいね! 上達してるよ!」
「いい毒舌だぜ!」
「ん……、悪くない、まあまあ……」
摩耶は顔をほころばせる。
それを見て、早乙女は楽しそうに笑った。
一方その時、ミカンちゃんは、思わず感心して、ノリツッコミの機会を逃したことを、深く反省していた。
第九話 了




