表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
警視庁 不可能犯罪係の 奇妙な事件簿  作者: 夢学無岳
第三話 「鬼島の三密獄門」
28/96

6.猫屋敷の推理

 猫屋敷が不可能犯罪係の部屋に飛び込んで来た。

 デスクに向かっていた早乙女や餅柿は「なんだ」と思う。


「分かったっす! 俺、密室の謎、分かっちゃったっす!」


「後でで、いいかしら」早乙女が言うと、興奮している猫屋敷は「今、聞いてください!」と突進してきた。早乙女は、そっと机にペンを置く。


「さっきすね、公園で子供がヨーヨーで遊んでたんす!」


「ヨーヨー、まだあるんですね」と餅柿が小さな声で言った。


「それで、ちょっと一緒に遊んでたら、ひらめいたんす! どうやってあの部屋を密室にしたか」


「すごいじゃないですか」餅柿が感心する。


 近くでお茶を淹れていた天海あまみは、「遊んでたんだ」と思った。


「エアコンの穴っす! 完全な密室じゃなかったんす。穴の蓋は上だけ止まっていて、今にも取れそうだったんす」


「スリーブ穴ね」早乙女は腕を組んだ。


「倒れた棚の窓際の下に、セメントの袋とかペンキの缶とか、重いものがあったすよね。棚の上に紐を通して、向かいのそれらの重りに紐をひっかけて、紐を穴から外に出すんす」


 猫屋敷は忙しく身振り手振りする。

 事務の天海は、皆に、湯気立つ湯呑を配った。


「で、外から紐を引っ張れば、がしゃん! 棚が倒れるっす。どうすか! どうすか! これで密室の完成す」


「すごいじゃないですか」餅柿が感心する。


 猫屋敷は褒められるのを待つべく、どや顔で早乙女の前に立つ。


「猫ちゃんもお茶どうぞ」


 天海は湯呑を渡す。

 猫屋敷は「ありがとうっす」と、立ったまま口を付けたが、「あちっ!」と言って身を震わせた。


 天海は「熱かった? ごめんなさい、猫ちゃんのは、ぬるめに淹れたんだけど」と心配そうに彼を見た。


「大丈夫っす! で、どうすか!」


 猫屋敷は早乙女を見る。まるで、頭を撫でてもらうのを待っている子犬のようだ。


「そうね」と早乙女は腕組みを解いて、あごを触った。


「その、紐を引っ張って棚を倒した時は、三人は生きてたのよね」

「そうすね」


「棚を戻して、部屋を出ることも出来たのよね」

「そうすね」


「棚を倒した後、首はどうやって切り落としたのかしら」


「そ、それは、っすね! えーと、穴から刀を差し入れて、エイッと! 首を切ったら、刀を放り込んで……」 


 猫屋敷は玉のような汗をかく。自分で言って、無理だと思ったらしい。


 餅柿は小さな声で「穴の大きさは六十五ミリ、刀の鍔の幅は七十五ミリでしたね」と言った。


 天海は「あのう、どうして、誰も抵抗しないで、切られるままだっんですか?」と訊く。


 猫屋敷の目が泳ぐ。ひとしきり泳いだ後、姿勢を正して敬礼した。


「すいませんした! 出直して来るっす!」


 早乙女は微笑んだ。


「謝る必要はないわ。これからも、どんどん自分の考えを言ってちょうだい。期待してるから」


 猫屋敷は目を潤ませた。

 早乙女は「ヨーヨー、悪くないわね」と猫屋敷に言った。



 剣崎が入ってくる。早乙女は剣崎の報告を聞くと、真剣な顔つきになった。受話器をとると機動隊に内線をかけた。

 


「あの、いいですか?」天海は、剣崎にお茶を渡したあと、躊躇いがちに質問した。


「聞いたことがあるんですけど、死後に室温を変えて、死亡推定時刻をずらす事って出来るんですか?」


「出来ない事もない」と剣崎は答えた。


「じゃあ、死んだ時間が違うかもって事っすか!」猫屋敷が食いつく。


 剣崎が舌打ちしたので、猫屋敷はびくっとした。


「あの部屋には冷暖房設備はなかっただろ、しかも密室だ。どうやって温度を変える」


 猫屋敷は頭をひねる。

「あのう」天海が言う。


「エアコンの穴から温風とか冷風を入れるのは出来ますか?」


「出来ない事もないが、する意味がない」と剣崎は答えた。


「殺害のあった日は二月、それも寒波に襲われていた。人為的に冷やして腐敗などを遅らせようとする事は、氷に水をかけて冷やそうとする事と同じだ」


「温めるのは?」

「温めても、封鎖されていた島の住民のアリバイは、誰一人、有利にならない」


「それに崖の上で、嵐でしたしね、屋外でそんな作業を続けるのは……大変でしょうね」と餅柿が小さな声で言った。


 天海は「うーん、そうですね」と答えた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ