49.新商品の開発②
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リカルド様へ二日酔いポーションの試作品を送ってから五日後───。
リカルド様から二日酔いポーションの事について話し合いたいと返事が来た。
わたしとリカルド様はいつものごとく、ポーション工房で待ち合わせる。
「はい、また妖精付きの仕分け作業宜しく。」
リカルド様は、薬草の入った木箱をテーブルの上に置いた。
「はい!お任せ下さい。」
そしてわたしはまた木箱に入った薬草を妖精付きのものと、そうでないものをぽいぽいっと仕分けしていく。
「二日酔いポーションの試作品、試してみたよ。」
「いかがでしたか?」
「試したのは僕ではないんだけどね。商会の従業員である五名の薬師にベロベロになるまでお酒を飲ませて、その翌朝に試させたんだ。」
従業員に二日酔いになるまで強引にお酒を飲ませるなんて横暴が過ぎるのではないだろうか。いわゆるアルハラというやつではなかろうか。
わたしは少し申し訳ない気持ちになる。
「薬師の方々に無理をさせてしまったのですね。申し訳ないです・・・。」
「そこは気にしなくても大丈夫だよ。彼等は僕の奢りで酒が飲めるって喜んで引き受けてた。」
「それならいいんですけど・・・。」
奢りということで喜んでいたなら大丈夫なのだろうか?少し罪悪感が薄れる。
「結論から言うよ。大成功だった。」
「本当ですかぁー。あー良かったー。」
二日酔いに効果があるのは分かっていたけど人によって効果の現れ方に違いがあるだろうし、あまり効果がないと言う人がいる可能性だってあった。「大成功」と聞いて安心とともに、頑張って試行錯誤した甲斐があり、心のなかでガッツポーズをする。
「ターメリックを使って二日酔いポーションが出来上がるとは思わなかったよ。是非とも商会の取扱商品にしたい。調合レシピを教えてくれるかい?」
「あ、はい!これをどうぞ。」
わたしはあらかじめ清書しておいた調合レシピをリカルド様へ渡した。
「ふんふん。なるほどね。毒消し効果のある薬草を使ったんだ。」
リカルド様は顎に手をやりながら、感心したようにレシピに目を通す。
そこでわたしは、かねてから考えていた平民の男性でも気軽に服用できる価格にできるのか聞いてみた。
前世では当たり前のように、コンビニや駅の売店でも二日酔いに効くドリンクが売っていた。
この世界でもそのくらい手軽に二日酔いポーションを買えるようにしたかったのだ。
「リカルド様、二日酔いポーションを平民でも気軽に買える価格で売ることはできますか?」
「それは難しいね。ターメリックが高いんだ。国を二つも跨いだ南方の国から取り寄せているから、どうしても原価が高くなる。」
「取り寄せ・・・。リカルド様、何とかならないでしょうか?わたしの手付かずの貯金を使っていただいても構いません。この国で温室栽培をして、安価で安定的に手に入るようにはできませんか?」
前世とは違い、この国ではウコンは希少なものらしい。なら、希少でなくなればいいのだ。わたしはビニールハウスを思い出して提案してみる。
「温室栽培か・・・うーん、叶えてあげたいが・・・。」
リカルド様の頭の中では色んな計算が駆け巡っているのだろう。わたしの実現したいことを一生懸命考えてくれてる。
「僕には成功するのか、失敗するのか確信が持てない。確信が持てない事に公爵家に融資をお願いすることはできないよ。
今まで協力してくれた公爵家のためにも、失敗する訳にはいかないんだ。
資金の問題が解決するなら、反対しないよ。僕も全力で協力しよう。」
リカルド様はしばらく逡巡した後、理解を示してくれた。なんだかんだでいつもわたしの考えていることをを叶えようとしてくれる。優しい人だ。
「本当ですか?!ありがとうございますっ!それなら、わたしの貯金を使って下さい!今から、急いで個人金庫の身分証明書カードを持ってきます!」
「ま、待って待って!僕は個人金庫の管理者でもあるんだ。カードがなくても僕なら引き出せる!」
「え?!そ、そうなんですか?」
そう言われれば、個人金庫を管理しているのはランチェスター公爵家だった事を思い出す。前世で言えばリカルド様は銀行側の人だった。
リカルド様に個人金庫のお金を委任する内容の書状を渡せばいいらしい。
わたしは紙とペンを用意し、委任するための書状をしたため始めた。
そこでわたしは重要な事に気が付いた。自分の個人金庫にいくら貯金出来ているのか知らなかったのだ。
わたしはしばらく悩み、引き出し金額を『全額』と書いてリカルド様へ書状を託した。
書状を受け取ったリカルド様は、書面を確認すると少し渋い顔をした。
「残高が分からなかったんだね・・・。」
「はい・・・。」
「君にとって使う予定のないお金のようだから、遠慮なく活用させてもらうよ。もちろん温室栽培が成功して二日酔いポーションが売れて利益が出たら還元する。
君を信じて僕もお金を出すよ。」
「でも、リカルド様に損害を与える訳には・・・。」
「大丈夫だよ。君には充分儲けさせて貰った。無理のない金額にするよ。感謝の気持ちだと思って。」
「はい!ありがとうございます!」
それからのリカルド様は二日酔いポーションの販路開拓、ターメリックの温室栽培を軌道に乗せるための指示などで忙しい日々を過ごしたらしい。
一年後には、リカルド様のおかげでターメリックの温室栽培はみごとに成功し、二日酔いポーションを大量生産することが可能となった。
大量生産が可能になると、買いやすい価格となった二日酔いポーションは、瞬く間に全国へと広まっていった。
リカルド様が言うには、わたしが出資したお金はあっという間に元を取ることができて、更に貯金が増えたらしい。どんだけ増えたかまだ確認してないけど。
リカルド様の手腕に感謝だ。




