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あたしも聖女をしております  作者: 斉藤加奈子
第一章

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39.ポーション作って夕日とライオネル

誤字脱字報告ありがとうございます!感謝です!

 ポーションを村人達のために優先的に使ったため在庫が底を突いてしまった。それにより捕虜の人達にまで与える分はないと言うので、わたしがポーションを調合する事となった。そのためのポーション工房へグレーテン様が案内して下さった。


 エステルスーン城とは別棟にポーション工房は建っていて、捕虜が収容されている建物とさほど離れていない。薬草などの素材や、道具などは自由に使っていいと許可をいただいたので思いっきりポーションを調合する事にした。工房の脇に倉庫があったので在庫の素材を確認すれば、少し薬草がくたびれてはいたものの、問題無く使えそうだった。


 どうせ作るならいい物をと思い、メリッサに厨房から塩を分けて貰うようお願いした。特製ポーションにしようと思う。


 重い物は護衛騎士のロビンに手伝って貰い、大鍋一つと中鍋二つに水を張り火にかける。大鍋で熱湯浄化、中鍋で二種類のポーションを同時進行で作る。それを二回繰り返して四種類のポーションを五十本ずつ、合計二百本を調合するつもり。


外用ポーションと、打ち身用ポーションと、治癒力増強ポーションと、疲労回復ポーション。


 今まで二百本なんて数のポーションを調合した事なんてなかったから、大忙しだ。腕が鳴る。夢中になって作っていたら気分が乗って来た。やはりポーションの調合は楽しいみたい。つい、歌を口ずさみながら作業をしていた。


「♪

 湖の畔に咲いている

 可愛い花はアマリィス

 遠くで雲雀が鳴いている

 思い出すよ母さんの子守歌


 紫色の可憐な花びら

 小さな花はアマリィス

 遠くで響く木を切る音

 思い出すよ父さんの大きな手  ♪」


あれ?昨日村の子供達が歌っていた歌を覚えてしまったみたい。前世の日本の童謡を思い出す様なメロディで、つい懐かしい気持ちになってじっくり聞いちゃったんだよね。


 気が付けばわたしはポーションを調合しながら、繰り返しこの歌を歌っていた。







 完成した二百本のポーションをグレーデン様に預け、怪我をしている捕虜へ渡すようお願いした。気が付けば日も傾き、冷たい風と共に少しの疲労感がわたしを襲う。


 今日のわたしは結構頑張ったから、このまま休憩させて貰う。


 ポーション工房から客室へ戻る途中、廊下の窓から夕日を眺めるライオネル王太子を見かけた。


「ライオネル王太子殿下、ご機嫌よう。」


「ああ、マリエッタ嬢か。」


「ここで夕日を?」


「まあ、そんなところだ。」


わたしも沈みゆく夕日に目を向けた。エステルスーン城から見える日没は王都よりも早いように感じる。


「ライオネル殿下、実の付きのいい小麦と、寒冷地でも育つ小麦の二種類も品種改良が成功なさったと噂で聞きました。誠におめでとうございます。」


「ああ、マリエッタ嬢の知識のおかげだな。」


「そんな、もったいないお言葉です。実際に品種改良に尽力なさったのは殿下です。成功まではいろいろとご苦労があったと思います。本当に凄いです。

ところで寒冷地でも育つという小麦はこの辺りでも育つのでしょうか?」


「そうだな。多分育つだろう。」


「それは素晴らしいです!

それで新しい小麦の名前は何とつけましたか?」


「名前?それは考えて無かったな。

普通はどんな名前を付けるんだ?」


「何でもいいと思うんですけど、

掛け合わせた品種の名前を用いたり、土地の名前を用いたり、開発者の名前を用いたり。ライオネル小麦なんてどうですか?この先ずっと、名前が残ります。」


「おお、なかなかいいな。ライオネル小麦。」


「でしょ。ふふふ。」


「小麦の名前の件はもう少し考えてみるか。

今日はマリエッタ嬢もご苦労だったな。捕虜の少年も持ち直したし、ポーションも調合してくれて助かった。」


「お役に立てて嬉しいです。

あの、捕虜の人達はどうなってしまうのでしょうか?」


「それを今夜、会議で決める。」


「そうですか。北方には心臓病用のポーションに使われるアマリィス草という希少な薬草の群生地があるのです。一介の薬師としては、アマリィス草が手に入る方法が閉ざされない事を望むばかりです。」


「そうか、気に留めておこう。さて、少し冷えてきたな。執務室へ戻るか。」


「わたしもここで失礼します。」


「ああ、じゃあな。」


 わたしはライオネル王太子の背中を見送ると、客室へと戻った。そしていつもより早い夕食を済ませると、少年はこの先どうなるのだろうかとか、ポーションの数は足りていただろうかとか考えながら眠りに就いた。


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