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あたしも聖女をしております  作者: 斉藤加奈子
第一章

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22.ルーシィ先生の助言

誤字脱字報告ありがとうございます!感謝です!

 一日の授業が終わり、いつもだったらエリーとのおしゃべりタイムになるはずだった。


「マリエッタさん。ちょっとお時間頂けるかしら?」


珍しくルーシィ先生が声をかけてきた。


「はっ、はいっ。大丈夫です。」


 そう答えると、エリーが気を回してくれ、「ご機嫌よう」と優雅に挨拶をすると学習室から出て行った。


 ルーシィ先生にこんな風に声をかけられる事が無いので、何か失敗してしまっただろうか?とドキドキしていると、ルーシィ先生の方から話を切り出した。


「マリエッタさん、ファイデリティー国の現在の王妃は誰だか分かりますか?」


ナディール王国は、北に少数民族の集落群、西にアデル聖国と隣接している。

ファイデリティー国は、その少数民族の集落群とアデル聖国と挟まれる形で隣接している国である。


ナディール王国とは隣接していないが、協力関係にあり、有事の際にはお互いに兵を出すことにより、敵国に対して牽制力となったり、兵糧や資材の提供など、無くてはならない同盟国となっている。


そのファイデリティー国の王妃は、現ナディール王国の国王であるヴィクトール王の母違いの姉に当たる、ダリア王妃だったはずだ。


「はい、このナディール王国の王女であらせられましたダリア王妃です。」


「正解です。」


ルーシィ先生はにこりと微笑んだ。

彼女がこんな顔をする時は、授業から少し脱線した雑学的な話だったり、プライベートな話をする時だ。


「実は、私はダリア様がファイデリティー国へ嫁がれるまでダリア様の『御身代』を務めていたのですよ。」


「えっ・・・。わたしと同じ?」


驚いた。でも考えてみれば納得だった。ルーシィ先生は王族では無いのに、王族の方々の人柄等、一般に知られていないことまでとても詳しかった。


「そう。マリエッタさんと同じね。だからかしら。貴女の事が心配になるのですよ。」


ルーシィ先生はそのまま言葉を続けた。


「私は、ダリア様のご結婚を機に『御身代』を退任しました。その時には既に十九歳になってましたわね。

その時にもちろん結婚の話もありました。しかし、私は結婚よりも学問の道に進みたかったのです。『御身代』の退任時に謝礼金も充分頂き、結婚せずともやっていけると思い、迷わず学問の道に進みました。

そして今、このように講師としての職も得て私らしく私の人生を歩んでいます。」


ひと呼吸置くと、ルーシィ先生はわたしの隣のエリーの書机まで来ると、椅子を引き腰をかけた。


「貴女にも、貴女の人生を送って欲しいと願っています。例え今は無理だとしても。」


ルーシィ先生はエリーとわたしが聖女を目指してしていることや、エリーの婚約者探しが打ち切られたことなど色々分かっているようだ。それならばと、今の心情を話す事にした。


「わたしは、『御身代』になるまで、母と同じピアニストになることが夢でした。

でも、『御身代』となって諦めました。

そんなとき王女殿下に、一緒に聖女にならないかって言われて、目標ができて嬉しかったのです。今は騎士の方々に治癒をされる王女殿下の側にいられる事を誇りに思います。」


「そう。それなら良いのです。」


「ただ・・・。」


「ただ?」


「王女殿下は治癒の能力を使うと、聖力の枯渇で倒れてしまうのです。ですから、ポーションを使いながら治癒したら倒れなくなるのではないかって言ってみたんです。」


「それでどうなりましたか?」


「はい。そしたら今日、これからの聖女にも医療の知識が必要だっておっしゃって。

そこから会話の流れで、

聖女でありながら医師とか、薬師とか、騎士でもある事を目指すとか、

そのように言い出してしまいまして・・・。」


「フフフッ。エリザベート様らしいわね。

でも最後の聖女でもあり騎士でもあるというのは何かしら?」


珍しくルーシィ先生が声を出して笑った。


「はい。薬師になると、素材を集めるために森や山へ出かけることもあるので、それはいくら護衛が付いていたとしても危険だって言ったんです。

そしたら、わたし達も剣術を身に付け乗馬もできた方がいいってことになって・・・。」


「なるほど。そういうことね。

でもエリザベート様の言う事にまともに付き合っていたら大変ね。」


ルーシィ先生はクスクスとまだ笑っている。


「はい。わたしにはこれ以上難しいお勉強はついて行ける自信がありません。

どうやって王女殿下を説得しようかと。」


「今日、マリエッタさんが浮かない顔をしていたのはそれだったのね。」


ルーシィ先生はわたしが浮かない顔をしていたから、心配して声をかけてくれたのか。

その優しい心遣いがなんだか嬉しい。


「そうねぇ。医師になる必要もないし、薬師にも、騎士にもなる必要はないと思うわ。

でも、知識は必ず、貴女の力になります。

先ずは、負傷した騎士に対して、必要な医療とはどんなものかを知るところから始めてもいいんじゃないかしら。」


「負傷した騎士に対して必要な医療───。

はい。ありがとうございます。王女殿下と相談してみます!」


「そう、頑張って。これは余談ですけど私、馬に乗りますのよ。」


「え?!本当ですか?」


「ええ。ダリア様がおてんばで、一緒にやらされたのがきっかけ。馬はいいわよ。」


そう言って昔を懐かしむ様に微笑むと立ち上がり、


「お時間を取らせて悪かったわね。また明日。」


と軽く挨拶をしてルーシィ先生は、退室していった。


────ルーシィ先生、いい人だ。


ルーシィ先生から頂いたアドバイスのお陰で、新しく医療を学ぶ事に対しての抵抗感がなくなった気がする。


エリーに相談して、勉強について行ける範囲でポーションを処方できる聖女になれたらいいな、と思う。


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