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棺桶を担ぐ少女は死に場所を探している  作者: 久我 一
#第1章
4/13

棺桶を担ぐ少女4

 目的地である隣村に到着した。


 隣村に着くと、山賊達の衣服はボロボロになっている。


 隣村までの道中、道という道に体を叩きつけられ、身も心も衣服も全てボロボロになっているのだ。


 目的地に着いた僕を含む、センさん、ツシさん、コビヤさんは村人に協力してもらい、荷馬車に積んだ荷物を降ろす。


 全ての農作物を降ろした後、隣村の村長の紹介もあって、村にある空き家に泊まることになった。


 空き家は二つ。


 部屋割りならぬ家割りは、僕とコビヤさん、センさんとツシさんに決まった。


 隣村に着いたのは、日が暮れた後。僕は特にすることもないので、泊まっている空き家で横になる。


 今日は色々と疲れた。


 僕は、「はぁ~」と息を吐く。


 そんなため息に気づいたコビヤさんが、運んできた農作物にある果実水を僕に渡した。


「今日の護衛はお疲れ様です。まさか山賊が出てくるなんて思ってもいませんでしたよ。これもアーサー殿のおかげです」


「えぇ……ありがとうこざいます」


 何か知らないけれど褒めてくれた。


 実際戦闘に参加していた僕だが、戦ったのは棍棒を持った人だけ。コビヤさんは僕が人を殺さないことを知らない。もしも僕が剣を持った相手と戦っていたら、勝ち目があったかは分からなかった。


 人を殺すという恐怖は、まだ僕から離れていない。


 いつになったらこの恐怖は僕から離れるのだろうか。


 いつか僕の人生において、とあるきっかけがあれば、何か変わるかもしれない。そう願うばかりだ。


 一方的に気まずくなってきたので、外の空気を吸って落ち着くことにする。


 気分は最高に良くない。最悪の一歩手前だろう。そんな気分だ。


 人を殺すことは普通に暮らしている人にとっては、経験することはないだろう。


 では、騎士を目指している人や冒険者を志している人にとってはどうだろうか?


 自分が人を殺せなくても職務上殺さなくてはならない。それが仕事というものだろう。


 できなければ諦めろ。そういうことなのかもしれない……。だが、人を殺すこと、命を取ることは出来ない方が良いだろう。


 一度、僕は外の空気を吸う。そして吐く。


 気分はさっきと比べて良くなっている。悩んでいたことが無くなった感じだ。


 空は黒く、光っている星が点々と見える。


 そよ風が吹き、ガタガタと僕達が泊まっている家の窓が震えている。風はそんなに強くないはずだ。


 震えている窓を見ているうちに僕の気分はさっきと同じ最悪へと変わっていった。


 これは僕の感だが、これから何か大変なことが起こるのかもしれない。


 この感は僕が生きてきた中で最も頼っていることだ。


 急いで家の中に戻って剣の点検をする。見たところ剣の刃を研ぐ必要はなかったので、剣先を磨くことだけにした。


 戦闘で使った剣の鞘は折れたり、傷ついているところがないか確認しておく。剣の鞘はこれしかないから。


 剣の確認をした僕は、次に荷物の整理をした。


 いつ何があっても動けるように……。


 荷物の確認が終わり、特にすることもないので寝ることにした。


 睡眠は大事だ。これは僕の経験上とかの話ではなく、父さんの話である。


 父さんはある日、依頼で森に訪れた時期があった。


 その時期の森は魔物達が、たくさん出没している森で当時冒険者ギルドが出した依頼でCランク依頼だったそうだ。


 依頼の内容はその森にしかない特殊な花の納品クエストであったらしい。


 父さんは依頼前日、他所の冒険者と騒ぎに騒ぎまくって一睡も眠れず、依頼に応じたそうなのだ。


 森に着くまでの馬車で、父さんは仮眠を取ろうとしたが、デコボコの道を行く馬車に揺れて仮眠どころではなかったらしい。


 結局父さんは眠れなかったのだ。


 そのまま依頼は続行で、父さんはその時の気持ちを表すならば、後悔と言っていた。その後悔とはもちろん寝とけば良かった、と……。


 冒険者ならば、パーティーを組んで依頼を受けてるだろうと、僕は疑問に思い、父さんに聞いたのだが、『パーティーなんているか!』とその言葉と父さんの性格上いないのを僕は納得する。


 そして父さんは納品クエストを無事終わって宿に帰って寝たらしいのだが……三日間ずっと寝ていたらしい。


 寝てた期間に報酬が良い依頼があったのだが、他の冒険者に取られたのだと言う。この期間で父さんは二回目の後悔をしたのだという。


 というわけで僕は父さんと性格や行動も違うので、一度の後悔……ましては二度の後悔なんて事はありえない。


 こんなことを父さんに言うのは失礼なのだが、僕は父さんほどバカーーいや、アホではない。


 そういうわけで僕は寝る!僕の感がもう一度働くまで……。


 そう思いベッドに横になろうとした時、嫌な感じがした。


 体の内側から締め付けるようにドス黒い何か......黒い塊が溢れているように感じられる。


 その黒い塊は僕に何かを訴えているようだ。


 何だろうか?この嫌な感じは......。気分が悪い......吐きたくなってくる。この嫌な感じが早く終わってほしい。いや、終われ。


 早く終われ!早く終われ!早く!早く!早く!早く!この嫌な感じが早く終わってくれ!


 僕は早く終われ!と願うばかりだ。


「早く!早く!早く!早く!早く終わ──」


「アーサー殿!どうしたん……って大丈夫ですかい!?」


 コビヤさんが心配している。まぁ、家の中で叫んでいたら普通は心配するよな......。


 僕は乱れた呼吸を整えて、「大丈夫」と笑顔で答える。無論これ以上心配させないために。


 まだ、気分は悪い。凄く悪い。


 壁にもたれかかり、もう一度深く呼吸する。数十回ほど深く呼吸をしたら、だいぶ楽になった......が、まだ気分が悪い。さっきまでの嫌な感じはまだ収まってはいない。


「とりあえずこれを飲んでください。落ち着きますよ」


 すると、コビヤさんが木のコップに水を注いで持ってきてくれた。


 ゆっくりと僕は水を飲んだ。


 気分がだんだんと落ち着いてきた。


「コビヤさんありがとうございます」


 再度、壁にもたれかかる。


 これ以上コビヤさんに……他の人たちにも心配させないためにどうするべきだろうか。


 僕が出した結論は、寝るということにした。


 寝て、体力を回復させ、気分も良くする。


 これしかない!という結論に至ったのだ。


 ということで、僕はベッドの上に横になる。次こそはゆっくりと眠りにつけることを望みながら。






♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎




「アーサー殿!!起きてください!!アーサー殿が住んでいた村が大変なことに──」


 騒がしい声が聞こえてくる。


 村が大変……?そんな事はないだろう。だって、僕が半日前まで何事もなかった村だ。


 だが、大変な事とは何だろうか?火事だろうか?いや、もしかして盗賊なのかもしれない。


 寝起きで鈍っている思考を活性化させる。事の次第を聞きながら僕は剣を持ち、家を飛び出した。


 村の門まで向かい、僕はその光景に目を疑った。


 商人らしい中年の男の腕が無くなっていたのだ。正確に言えば、右肘から先が無くなっている。大変だ。


 この光景を見た村の人達は、一度は慌てふためていき、騒いでいたのだが、指導者らしき人の手によって、今では落ち着いている。


 村の人達が家の中に入っていく中、僕達冒険者らは、怪我した男性の手当てをしていた。


 主に治療をしたのは、僕ではなく、ツシさんやコビヤさんだけど......治療以外のことなら頑張ったと思う。まぁ、治療に貢献できたのだ。憧れの騎士として一歩近づいただろう。


 自己満足という言葉が浮かんでくるが、僕は気にしない。


 コビヤさんやツシさんの治療によって、商人らしい中年の男性の腕の出血は収まった。


 中年の男性は呻き声をあげながら、口を動かして何かを言っている。


「ま………い……がと………む…に……」


 まいがとむに?


 何のことか僕には全くわからない。


 もう一度、中年の男性は何かを言おうとしている。


 僕達は耳を澄まして中年の男性が言おうとしている言葉を聞き取る。


 その言葉を聞いた瞬間、僕は何も考えずに目的の場所へと走り出した。


 後ろから、コビヤさんやセンさんの「戻ってこい!」という声が聞こえてきたが、僕はその言葉を無視して走った。


 中年の男性が発した言葉……その言葉とは──


 ──魔物の大群が近くの隣の村にいた。


 この村から隣の村といえば、僕が住んでいた村しかない……。


 村には母さん、父さんやサミスがいる。将来、僕が守るべき人達がいる。


 だけど、何故僕は走ったのだろうか?


 魔物の大群ならば、父さんや村の人達が倒せるし、逃げれるといつもなら思えていた。でも今は……そう思えていなかった。






♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎


 隣の村から全速力で村まで戻ってきた僕が見たものは、火に包まれた村だった。


 その光景を見た僕は力を振り絞って、住んでいた家へと向かう。


 どこの家も火に包まれてたり、何かの魔物に踏みつけられた跡があったり、護衛で出た時と変わらない家は一軒も見当たらなかった。


 そして、住んでいた家に向かう途中で家の下敷きになっている黒焦げの死体に目がいった。


 その死体を見た瞬間、最悪の光景を僕は浮かべた。


 家は燃え、母さんは家の下敷きとなって黒焦げの死体となり、父さんは魔物と戦って嬲り殺される。そんな光景を僕は見てしまった。


「いや、そんなことはない」


 すぐさま、僕は否定する。


 そんな死に方なんて、僕の母さん、父さんらしくないだろう。


 だから……だからこそ、母さんと父さんは必ず生きている。


 火に包まれた家などを抜けて、遠くから家を見る。


 僕の予想とは反して家は燃えていた。


「母さん!父さん!」


 無意識のうちに僕は叫んでいた。


 燃え盛る畑の道を走り抜け、燃えている家まで来て、燃えている家の柱を運び出す。


 燃えている柱は、物凄く熱かったが、そんなことを気にすることなんてできない。


 何度か火が着ていた服へと燃え移ったが、僕はやっとの思いで柱をどけた。


「ハァ……ハァ……」


 息を切らした僕は、最後の力を出し切って、燃えている家へと視線を向ける。


 そこにはあってはいけない“物”が目に入った。


 僕の足が動かなくなった。いや、動けなくなった。


 僕が見たもの......そこにあったものは......焼け焦げたドス黒い死体だった。


 脳がその光景を拒絶している。それもそのはず、信じられない光景を見たのだから。


 足に力が入らなくなり、膝が崩れ落ち、地面に接触する。


 考えたくもなかった。見たくもなかった。そんなことはないと思っていた。


 ポタポタと目から涙が零れ落ちる。


 母さんならば……母さんならば……生きていると思っていた。でも確信はしていなかった。確信していたら、ここまで来なかっただろう。


 生きていると思ってた。でも、そんな淡い期待は裏切られた。


 母さんは死んだ。それ以下でもそれ以上でもない。結果から見れば、生きてはいない。


 僕はゆっくりと立ち上がり、手で涙を拭いながら歩き出した。


 まだ父さんを発見していない。


 だが、僕は気づいている。もうすでに父さんは死んでいる。だって、母さんが死んでいるのだから。


 少しばかし歩くと、無残にも四肢が残らず、血が溢れ出ている男の死体を見つけた。


 やはり、父さんだった。


 空を向き、呟く。


「僕は結局、誰も守れなかった」


 生まれ育った村、生まれた時から住んでいる家と大切な家族、仲の良い友人達。そして思い出。


 何で僕は無力なんだろうか。僕に力があれば、何か変わるのだろうか?いや、変わらないだろう。変えられないだろう。その勇気がないのだから。きっかけも作れなかったのだから。


 変えるというスタート地点にすら、僕は立てなかった。未熟者。それ以下でもある。


 本当に無力だ。本当に自分が憎い。憎くてしょうがない。僕だけが生きているなんて卑怯だ。卑怯者だ。


 今の僕に生きる意味などあるのだろうか?


 今までは、守りたい者がいたから生きていられた。

 

 視界の端から口元から血が垂れている狼の群れが出てきた。


 十中八九、標的は僕だろう。だって、僕に視線を向けているから。


 狼達は、ゆっくりと観察しながら、一歩ずつ向かってくる。


 対して僕は、ただ茫然と立ち尽くしている。


 戦っても勝てないことが分かっているからだ。


 狼との距離、わずか数メートル。口から血とよだれが垂れているのが、直にわかる。


 これから僕は死ぬ。でも、あの口で食べれるのは痛そうだ。


 満を持して、一匹の狼が飛びかかってくる。


 アーサーはただ空を見上げ、立ち尽くしている。


 その時、横から何か分からない物体が飛んできた。


 その物体は狼に当たり、肉片へと変わっていた。


「えっ……?」


 アーサーは狼を肉片へと変えた物体が飛んできた方向へと目を向ける。


 そこにはこの世にいるとは思えないくらいの銀髪の美少女がいた。


 僕の目は彼女に釘付けになった。美しいと思った。


 胸の内が熱くなっているのが分かる。こんなことは初めてだ。


 彼女の右腕には彼女には似合わない黒色の鎖を巻きつけている。黒色の鎖の先にはさっき飛んできた物体に繋がっている。


 彼女が右腕を上げると、黒い鎖が彼女の腕に巻きついて、飛んできた物体を引っ張っているように見える。だが、彼女の右腕に巻きついている黒い鎖の量は変わっていない。


 後ろの方からあの時の嫌な感じがしてきた。そう思って後ろを向く。


 そこには、さっき飛んできた物体──黒い鎖に繋がれている禍々しい黒色の棺桶があった。


 再び、彼女の方を見ると、手で触れるくらい近いところで僕を見ていた。


 僕は驚いて後ろに転んだ。


「え?私と同じ力を……いや、違う。混ざってる?だけど、面白い力ね」


 僕はその時、初めて彼女の声を聞いた。透き通った美しい声だ。そして近い。もう彼女が何を言っているのか分からない。近づきすぎてそれどころじゃない。


 心臓がバクバク言っているのが分かる。体全体が熱くなっている。


 彼女はポンっと手を叩いて、僕に提案してきた。


「ねぇ、私と一緒に旅をしない?」


「はい!喜んで!!」


 僕は何故、その言葉が口から出たのが分からない。反射的に出たから分からない。


 だが、一つだけ言えることがある。


 一回失った生きる意味を僕は、新しく生きる意味を見つけた。







『騎士に憧れた青年は成人した日に王都へ向かうために村を出る。


 王都に向かう道中、彼はものすごい凶暴な魔物に対峙した。


 序盤は優勢かと思いきや、終盤となってくると劣勢へと変わっていく。


 青年は全ての力を出し切り、魔物と戦っていたが、限界をとっくに過ぎてしまった。


 その時、青年は絶望した。


 自分が憧れた騎士になる前に死んでしまうのだろうか、と。


 魔物の攻撃が青年を捉えた時、突然横から漆黒の棺桶が飛んできたのだ。


 青年は漆黒の棺桶が飛んできた方向を確認すると、そこには絶世の銀髪の少女がいた。


 すると、彼女は青年の方に向かいながら、口を開いた。


「ねぇ、私と一緒に私が眠れる場所を探してくれない?」


 その問いに青年は賛定の言葉を送り返す。


 この少女との出会いがこれからの青年の未来を作る事を青年はまだ知らないのであった。


 眠り姫と聖魔騎士の英雄譚   作:マクス・リーヴェル』










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