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「なんだ……これ……」
俺達の目に映った光景は俺の思考を停止させた。
思わず言葉が漏れ出た。
まるで動画で見た外国の暴動のよう……。
カラオケ、ゲーセン、パチンコ、ボーリング、総合アミューズメントパークに隣接された駐車場では車がボコボコにされ怒声が飛び交っていた。
殴り合っている奴ら多数。
なにこれ……。
目的地は合っている。
氏家のダチだという不破と何人かがここで暴れているとは聞いていた。
だが目の前の光景は俺の想像以上だった。
駐車場の端っこで氏家の後輩のバイクから降りた俺達は暴動のような光景を見て固まっていた。
俺だけではなく、みんな理解が追いついていないのがわかる。
茫然として言葉もない。
「カズちゃん……」
「お、おう!詩織は俺から離れるなよ?」
「うん!」
「どうなってんだこれ?まさか不破のせいで!?」
「先輩、いくらなんでも不破先輩が暴れたからってこうはなりませんよ!?」
「そ、そうだよな」
「え、ええ。何かあったんですよ!」
袖を引かれた。
そして詩織の声。
あぁ、怖がっている……そうかそれが正しい反応だなと思った。
俺はそこまで頭が働いていなかった。
目の前で起きている事、それから参加している奴ら大勢を俺が何とか出来るとは思えない。
俺がやらなくてはいけないのは詩織を守るという事だ。
余裕があれば氏家の仲間達を何とかしたい……無理かな……。
氏家の声も聞こえた。
どうやら俺と似たような展開になっているらしい。
驚いている。
俺以上に混乱してるのかも知れない。
氏家のダチだという不破って奴のせいでここまでの事になるはずがない。
俺達をここまで乗せて来てくれた氏家の後輩君の一人が冷静にツッコんでくれた。
氏家よ、後輩に窘められてんぞ?
俺も人の事はあまり言えないけどさ。
『お兄ちゃん、前に行ったアミューズメントパークがこんな事に!』
詩織がスマホに撮ったであろう画像を乗せて信兄に報告していた。
うん、一番頭が働いているね。
間違いない。
その差にも愕然とする……俺って一体……。
あ、そういやここに来る前にサイレンがうるさかったし救急車やパトカーとも一杯すれ違ったっけ。
あれ?すれ違った?ここに向かってたんじゃない?あれれ?
いや駐車場の奥にパトカー数台の姿の見える。
そりゃ通報もいくわな、これじゃ……。
俺は改めて駐車場を見回した。
止まっている車の上に乗って棒を振り回している男。
車のドアに蹴りを入れている男。
大笑いをしている女。
奇声をあげる女。
殴り合いなんて、そこかしこで行われている。
倒れている奴らも結構いた。
大丈夫なのか?
まるでバトルロイヤルだ。
しかも武器あり。
見える武器は棒だが、十分すぎるほど危険だ。
マジか……そう思わざるを得なかった。
何かが起きている。
それだけは解った。
「世紀末かよ……」
「氏家!ボーッとしてる場合じゃねーぞ!!まずはお前の仲間達を見つけて隔離すんぞ!!」
「あ、ああ。そうだな!」
「先輩!連絡は俺達が入れます!」
「おう!ここから動くなよ?ばらけたり乱闘に巻き込まれないように様子を伺え!!」
「「「はいっ!」」」
氏家が目の前の光景を見て呟いた。
世紀末かよと。
解る。
映画の世界だが、こんなのから始まりそうだよな。
俺はそう思いながらも、動かない訳にはいかなかった。
氏家を叱咤し、やるべき事を伝える。
周りがうるさいので大声でだ。。
「あ゛……」
「ケン、どうした?」
「あ゛ぁぁっ!!」
「ぐっ!?」
氏家の後輩の一人がふらつきながら前に出て来たのはそんな時だった。
他の後輩君達はスマホを取り出して操作していたが、そんな彼に気が付いてどうしたのかと聞いた。
彼はケンと言うらしい。
問いかけられたケンは突如殴り掛かった。
殴られた後輩君……ショウだったっけかな?は腕で防御が間に合ったものの二メートルほど吹き飛ばされた。
えっ!?何事?
俺がそう思っていると動いた男がいた。
「落ち着け!!」
「……」
氏家だった。
手加減してなさそうなボディーブロー。
躊躇しないんだな……氏家の先輩後輩関係ってのが少し見えた気がした。
体をくの字しながら下を向いたケン。
「おっ?」そんな事を言いながら両手を組んでケンの背中をぶっ叩いた。
一撃で仕留めたと思ったのだろう。
それが持ちこたえたので驚いていたんじゃないだろうか?
氏家の二撃目で地面に横たわったケン。
おぉ……ケンよ、こんな所で死んでしまうとは情けない。
いや、生きてます。
ピクピクと痙攣しながらうつ伏せになっていた。
氏家、強い。
なんかシンラと同じ空気を感じる。
あぁ、ヤンキー繋がりか……。
「どうしたんだ?こいつ?」
氏家が俺達の方を向いてそう言った。
「殴ってから聞くのな」
「えっ?」
「えっ!?」
俺は思った事をそのまま伝えた。
何の事?ってな顔なった氏家。
俺の方がそう言いたいよ!
「いてーな!ケンめ!!」
「ケンは今日相談する奴だったんですよ」
「相談?あ、あぁクスリの件か!!」
「はい。最近様子がおかしかったんで先輩に話を持って行ったんです」
「そうだったのか」
「そうだったんだよ」
ケンにぶっ飛ばされたショウが立ち上がって悪態をつく。
大丈夫そうだ。
頑丈だね、君。
そんなショウを構わず話しかけてきたのは、さっき氏家にツッコんでいた後輩君。
彼らの中では殴り合いも珍しくないのかも知れない。
嫌な集団だな……。
ツッコミ後輩君はタケって言ってたな。
武とかだろうか?
冷静だし氏家とはかなりタイプが違う。
見た目はガチムチでいかついのは同じだけども。
ファミレスで相談というのはケンの事らしかった。
ケンがクスリ《エンジェルラダー》に手をだしてしまったのだろう。
俺はタケの説明を聞いて納得。
確かに黒スーツの男に似た感じがあった。
同じクスリだと思っていいだろう。
「周りの奴らに引っ張られたのかな……!?ここで暴れている奴らもクスリか!?」
「「「!?」」」
俺は周りの暴動に目を向けた。
ケンが突如暴れた理由を考えていた。
暴れている奴らを見て衝動が湧き上がったとか?
そこで思いあたった。
この異常な光景を作りだした者達の事をだ。
クスリ……暴れている奴らは全てクスリを服用しているんじゃないか!?
俺はそのまま口にだした。
詩織、氏家、それから後輩君達の視線が集まったのを感じた。
彼らの中でも納得できる部分があったのだろう。
いや単純に異常な光景に理由を付けたかっただけかも知れない。
それだけ日常から離れた光景だった。
「カズちゃん、私もそんな気がして来た」
「カズ、俺もそう思うぜ!」
「カズさん!きっとそうですよ!」
「なるほど!」
「それならあり得る?……のか?」
「あっ!?不破、不破もそれで暴れてるんだな!!」
詩織も俺の意見に同意っぽい。
氏家もだ。
詩織はいいけど、氏家に同意されると逆に不安だ……。
間違ってんじゃないかとさえ思えてくる不思議。
氏家の後輩君達からも次々と同意の声があがった。
そして氏家が不破の名前を出して叫んだ。
あぁ、ここに来たのは不破ってダチが暴れてるって話からだったな。
異常な光景ですっかり忘れていた。
そうか不破って奴もクスリに手を出しているって言ってたな。
この暴動のどこかにいるんだろう。
大丈夫なのか?
俺は顔も見た事もない氏家のダチが心配になった。
「後輩君達は強いんだろ?」
「お?こいつらはまぁまぁだな」
「先輩がおかしーんですよ!!」
「まったくです!!」
「そうっす!!」
「俺ら弱くないッス!!」
「お、おう。ウッジーはおかしいよな。色々」
「ウッジーじゃねぇ!!それにカズに言われたくねーぞ!?ボクシング部の先輩らはカズの名前を出すとビクッとすんぞ?何したんだよ!!」
「あー、そんな事もあったな。まぁいいじゃん」
「よくねーよ!?」
「不破って奴が心配だな……」
「!?」
俺は後輩君達にここで待っていてもらいたい。
不破って奴と他のダチってのが連絡を見て来てくれるのが一番だが、クスリが関わっているとなると難しいかな?って思った。
逃げるにしろ安全な集合場所は確保しておきたかった。
だから氏家に後輩君達の強さを聞いた。
偉そうな態度で上から目線の氏家。
実際に後輩君達より強いんだろうけどさ。
なんかムカつく。
俺が言われている訳じゃないのにね。
そんな氏家に後輩君達四人が食ってかかった。
異論があるらしい。
氏家が強すぎるだけで後輩君達は普通に強いのかな?
後輩君達は倒れているケンを含めたら五人。
それだけいたら集合場所の確保は問題ないか?
いやクスリでリミッターが外れた奴は怖い。
棒で殴るにしろ躊躇しないだろう。
危険すぎるか?
頭の中で考えながらウッジーがおかしいと同意しておいた。
ウッジー呼ばわりが気に入らないらしい氏家。
俺はおかしくない。
まったくもって普通だ。
ちょっと目つきが悪いと言われるだけだ。
どうでもいい事に喰い付いてくる氏家をいなす。
不破の名前を出したら効果覿面。
黙った。
「うらぁっ!!」
「あ゛ぁぁぁぁっ!!」
俺達の近くから雄叫び。
ニッカボッカを履いた作業員風の奴と黒い長そでTシャツの男、それぞれが棒を持って駆け寄ってきていた。
お前ら同士で殴り合えよ……そんな事を思いながらそっちへ向かって足を踏み出した。
いやね?こいつら破壊力はありそうなんだけど、動きはトロく見えるのよ?
身体能力があがったおかげか、浅井さん達の動きに慣れたせいかいは解らないがその辺が関係しているだろう。
俺も弱くはない。
浅井さんが凄すぎるだけだ。
だから足は竦まないし前に出れる。
後ろで氏家の声が聞こえた気がしたが無視。
作業員風の男が振り下ろした棒を横に躱しそのまま腹を殴る。
「ぐえっ」と声が聞こえたがまだ動いて来たのを見て氏家はやったように肩甲骨あたりに両手の一撃。
ケンと同じ様に地面と仲良くなってもらう。
加減が難しい。
最初の一撃で倒せると思ったのに、ダメだった。
氏家もこんな事を思ったんだろうな……そう思いながら黒Tシャツも同じように殴り倒した。
ええ、加減が難しいけど問題なく倒せました。
襲われたらやり返す。
まぁ、手に残る殴った感触は好ましいものではないけど仕方ない。
俺は倒れた二人の足を持って引きずって端に持って行く。
「人の事言えねーだろ!?」
「カズちゃん、やるー!」
「カズ先輩凄いっす!」
「さすカズ!!」
「さんを付けろよデコスケ野郎!!」
「カズさん!!」
「スゲー!!」
「つええ……」
氏家は驚いてはいないようだったが文句は言って来た。
さっきおかしいって言ったからだな。
詩織は心配してなかったっぽい。
まぁ、一緒に浅井さんに鍛えられているからな。
詩織は俺といい勝負が出来る。
出来るけど荒事を好んではしない。
それでいいと思う。
氏家の後輩君達からの賞賛。
彼らの中では強いはステータスらしい。
脳筋どもめ。
とは言うものの気分は悪くなかったり。
おっと、調子に乗るのが俺の悪い所。
俺は学習できる男なのだ。
上には上がいるって知ってるしね……浅井さんは遠い。
遠くを見つめてしまう。
「やれやれだぜ。君らはケンやこいつらを縛り上げておいてくれ」
「「「うっす!」」」
「後、ここを集合場所にするから確保しておいてね。危なかったら逃げる事!」
「「「「うっす!!」」」」
「俺の後輩なんだが……」
不破達に送ったメッセに返信は来ていない模様。
仕方ない。
やはり動くか。
そう思って俺は指示を出していく。
後輩君達も強いんだろうけど、クスリの服用者相手では何が起こるか判らない。
無理しないように言っておく。
氏家がなにか言っていたが無視。
「詩織は連れて行きたくないけど、行くよな?」
「もちろん!」
「俺も行くぞ!」
「当たり前だ。俺は不破って奴を知らんからな」
「おう!任せておけ!!」
氏家の後輩君達の一人が縛る物を探しに動いた所で俺達も動き出した。
うわー、パトカーも襲撃されてんじゃん!
大丈夫かな?
数で押されているっぽい。
助けに行こう。
それから信兄とかの名前を出して氏家の後輩君達と一緒にいてくれないか提案してみよう。
民間の協力者がいた方があっちもいいよね?
俺、詩織、氏家は世紀末を連想させる駐車場の中を進むのであった。
モヒカンでヒャッハーとかいないよね?




