↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Counter!!  作者: 大和尚
43/63

2-29

2-29




 宴会場のような広いスペース。

そこで俺達はテーブルについて夕食を食べている。

メインは牡丹鍋。

流行のジビエだ。

味噌仕立ての鍋、猪の肉は独特な風味と歯ごたえがあった。

毎日食べたいとは思わないが、また食べてみたいなと思う程度には美味かった。

それ以外の料理も川魚やら煮物など多くの皿が並べてあった。

美味しいけど、細かいのは好きじゃない。

食べ盛りの高校生としてはどんぶり飯でドーンといきたい所です。

はい。

かつ丼、牛丼、大好きです。

それだけで終わる食事は面倒がなくていい!洗い物も少なくて済む!


 部屋で食べる事も出来たのだが、せっかくだし男女ともに食べられる方を選んだのだ。

理由はそれだけではないけどね。




(今、入って来た夫婦っぽい人達は《降臨の家》関係者だね。しかもただの信者じゃなさそう)



 浅井さんが《降臨の家》からの追手が来ると予想していたので、チェックをしたかったというのも理由だ。

実際に来た。

宿の従業員にも《降臨の家》信者はいたが、ただの信者だった。

しかし今、大部屋に入って来た夫婦っぽい人達は違う。

《降臨の家》幹部に知り合いはいるし、《降臨の家》からの依頼で悪い仕事もしているのが『カウンター』で判った。

男女ともに人は殺していないので諜報関係の人達だと思う。

俺は小声で信兄達に伝えた。

信兄達も心得たもので夫婦に視線を向けたりはしなかった。

シンラが挙動不審だったけど、詩織が上手くフォローしていたので怪しまれないはず。

シンラは単純明快な性格だが、隠密行動には向いていない。

ええ。

よく解ります。




「タイヘーお代わりか!俺も負けていられないぜ!」

「へへっ!食べ盛りなめんなっつーの!!」

「俺も同じだっつーの!」

「あたしだって負けねーぜ!?」


「あらあら」

「凄いねー」



 タイヘーが茶碗をもって、ご飯のおひつに向かった。

ご飯食べ放題。

シンラのフォロー第二弾と行くか。

俺もお代わりに動く。

食いしん坊でおバカな高校生に見えるだろう。

見えるだけじゃないかもだけどさ。

そこは言わないのがお約束。

俺、タイヘー、シンラを見てアゲハが微笑ましいものを見るように笑っている。

車酔いで潰れていたアゲハも温泉に浸かって復活した模様。

元気そうでなにより。

詩織はご飯お代わり戦争には加わらなかったが楽しそうに見ている。

甘味以外の食欲は普通だからな。

たぶん。


 信兄、浅井さん、佐久間さん、林さんはビールを頼んでいたり。

ドライブ、温泉、ここまで来たら楽しむつもりなんだろう。

それにお酒を呑んでいる姿を見せれば仕事ではないと思ってくれるかも知れない。

信兄、策士だな。

温泉で失った水分の補給って線は捨てきれないけども。

もっと言えば呑みたいだけだったりして……。

あぁ……浴衣姿の浅井さんは何だか色っぽい……。

浴衣はスラッとした体形の方が似合うと聞いた事がある。

確かにそうかも。

胸の辺りが邪魔そうなシンラではこうはいかない。

いやそれはそれで興味ありますけどね!!

しかもお酒が入っているせいか、少し紅潮しているのが更に色っぽさを増していると思います!

眼福やー。

ありがたやありがたや。

拝んでおこう。




「何だい?拝んだりして」

「感謝の気持ちを込めてみました!」


「若い子の考える事は解らないねぇ……」

「解る!カズ!解るぞ!!」

「タイヘーうるさい」



 大部屋に響く俺達の声。

騒がしいのは俺達だけだ。

チラッと視線を向けてくる人達はいるが、何のアクションもない。

怒られたりもしなかった。

あー、何だか楽しい。

こんな敵地も同然な場所で、追っ手らしき者の存在もいるというのにだ。

修学旅行みたい。

俺と詩織は来年あるけどな。

どこだろう?沖縄とかかな?楽しみ!!


 ただ……班決めがあったらやだな……詩織は一緒に組んでくれると思うけども。




「カズちゃん、笑ったり、暗くなったり忙しいね!」

「お、おぉ。旅行のおかげでテンションが安定しない!」

「わかるー」

「あたしもわかるー」

「俺もー」

「僕もですね」

「ふふっ、私だって」


「若いねぇ……」

「浅井さんだって似たような、と、ものじゃないの」

「そう?」



 詩織は俺を見ていたようで、ツッコまれた。

だがテンションがおかしいのは俺だけではなかった模様。

詩織自身も同意して来たし、シンラ、タイヘー、それから林さんにアゲハまで同意して来た。

なんだか同じ気持ちを共有できるっていいね!

ビールの入ったグラスを傾けている大人組からは温かい視線を送られていたり。

浅井さんが俺達に若いねぇという感想を漏らした。

それに反応した信兄。

似たような、の後に間があった。

似たような歳って続くのを無理やり変えたと見た!

女性から振られた歳の話でも難しいのに、自ら突っ込んでいきかけた信兄。

危なかったね!

セーフ。

たぶん。



 ふーん。

怪しいのはあの夫婦だけだな。

俺は出入り口を背にしているので大部屋の中を見渡せる。

バカ話をしつつもチェックは続けていた。

後で宿の外を見てみようかな……車で追って来ていた人達の数字は固定してある。

まだ張り込みをしているようだったら直ぐに判る。




「ブフッ!!」


「カズちゃん、きたなーい!」

「お前なぁ……」

「タ、タイヘー、顔、米粒だらけ……あははっ!」

「ふふっ」

「お似合いだ」



 俺は咀嚼していた口の中のものを吹き出してしまった。

すまん、タイヘー。

だって仕方ないだろ!今、新たに部屋に入って来た人を見たら……。




「温泉、サイコーデス!」


「オゥ!」



 その人は胡散臭いしゃべりをしていた。

腰の位置が高すぎるせいか浴衣が似合っていない。

一緒に入って来たガチムチのくすんだ金髪男もそうだ。

浴衣、似合わねぇ……。


 えぇ、最近うちのクラスに転向して来たジョージがいた。

ハッハァッ!とか騒ぎながら案内されたテーブルについた。

俺は詩織、信兄に視線を送る。

詩織は目を丸くしていた。

信兄は頭を左右に振っている。

えっと……知らんぷりしろって事かな?

それともどうしようもない?

何かをする必要はないと思うので知らんぷりの方かな……。

うちの誰かが動くまで黙って無視していよう。

そうしよう。


 しかし……どう考えてもジョージの狙いは俺か詩織だよな……。

思わずため息が漏れた。



 デザートのアイスと苺は美味しかったです。









「あんにゃろ……面倒を持ち込みやがって!」


「あれが転校生の金髪君なのね」

「そうなの。ジョージだよ」


「ムカつくぜ!」

「イケメンだからか?」

「じゅぴたーは黙っててくれませんかねぇ!」

「林だ」



「何しに来たんだろうな……監視は確実についているようだが……」



 大部屋での食事を終え、男部屋に集まった面々。

俺が悪態をつくと、アゲハが先ほど見たジョージの事を確認して来た。

タイへーは何をされた訳でもないのに怒っている。

あぁ、林さんのツッコミでタイヘーが怒っている理由が判った。

ちょっとだけわかる。

ジョージはイケメン野郎だからな。

背も高いからどこぞの俳優に見える。

同じクラスにいなければ年齢不詳だから、尚更だ。


 信兄がジョージについて考え込んでいる。

ジョージの思惑はともかく、俺達に監視が付いているのは間違いないと思う。

そうでなければこんな所で会うはずもない。

大友さんはジョージの二つ名を知っていた。

気まぐれな天才。

ジョージは天才という部分は否定していた。

そして気まぐれは否定していなかった。

気まぐれな自覚があるのだろう。

今回もただの気まぐれ、思い付きだったりして……。




「でも接触はしてこなかったわね」

「ですな」


「向こうにしてみたら顔見知りだ。接触して来て当然のはず……」


「私達の目的を知っているんじゃないかしら?」

「まさか……」


「なるほど。俺達の邪魔をするつもりはないという事か……だが姿を見せて来た理由が判らん……」

「それはそうね……」



 浅井さんも考えていたようだ。

佐久間さんも頷いている。

確かにジョージは俺達の前に姿を晒したが接触はしてこなかった。

信兄が頭を悩ませている。

信兄はカンより理詰めでいくタイプだからな……ジョージは気分屋らしいし相性が悪そう。

相性が良さそうなのはカンの鋭い感覚屋の浅井さん。

浅井さんはジョージが俺達がこっちに来ている理由を知っているのではと疑っている。

俺達は《降臨の家》本拠地の現地調査で来ている。

それを知っているというのか!?

俺の驚きと同じように佐久間さんも驚いている。

信兄の考察は続く。




「《ワールドワード》も《降臨の家》と関係がある?敵対?」



「信兄……調べてみたけど親密ではないみたいだよ」

「そうか」


「今、全ての答えは出ないわ。カズ君に任せましょう」

「そう……そうだな。学校という接点があるんだから調べ放題だな」


「任せろー、バリバリ」

「わー、パチパチ」


「お前ら能天気だな……」

「タイヘーも大差ないぞ?」

「そんなこたぁねーよ!!」

「ある」

「ぐふっ」



 頭から煙を出しそうな信兄に向かって浅井さんが俺に任せようと言って来た。

うん、今、答えは出そうにないから正しいと思う。

信兄も今、答えを出す意味がないと思ったのか顔を明るくした。

そうだね。

俺とジョージは同じクラスだ。

いつでもいくらでも調べられる。

俺の『カウンター』でだ!

やはり期待されるというのは気分が良い。

俺と詩織の様子を見たタイヘーがぶつくさ言っている。

シンラがお茶とテーブルのお菓子を食べながらツッコむ。

林さんからも追撃。

タイヘーに味方はいないようだ。

南無。




 結論として、追っ手の有無を見ながら今回は撤退する事になった。

異常な殺人数を持つモノ。

その存在を確認出来た事は大きい。

得体が知れないが、《降臨の家》に深く関わりがあると思う。

そこを調べて行くのが最大の攻撃ではないだろうか?

俺達の方針は決まった。

ジョージは無視。

学校でタペストリーをくれてやろう。

喜ぶがいい。



 特に危険はなさそうなので、再び温泉へ。






「あ゛ー」



 帰りたくない。

そう思いましたね。




「何度も入るのがツウってやつデース!」



 ガララッと扉が開く音と同時に響いた声。

帰りたい。

そう思いましたね。

しかも後ろにガチムチと諜報夫婦の男の姿も見えた。

何の嫌がらせか?

信兄には関係ないって言ったけど関係ありか?それとも偶然か?

いきなり温泉が楽しくなくなった……。


 まぁ、チラチラ見てくるジョージを無視してサッサと上がりましたとも。

後ろからの視線が痛かったね。

あっ!?まさか俺の尻に興味が!?

うそうそ、そんな事あるはずがなーい。

いらん事を考えてしまった。

俺も疲れているらしい。

部屋に戻ったらすぐに寝ようかな……。






 翌日、宿を出る時まで身内と宿の人以外とは話もしませんでした。

宿の外には追っ手の車はいなかった。

夫婦で十分だと思われたのなら助かる。


 帰り道でも追っ手を探ったがいなかった。

少なくとも前日俺達を追っかけて来ていた奴らはいなかったよ。

でも写真とか取られたんだろうな……ブラックリストとはいかなくても何らかのリストに入ってしまった気がする。

《降臨の家》は思った以上に大きい組織だと解った。

諜報機関らしきものまで持っているなんて思わなかった。

それに町どころか市全体に力を持っていそうだった。

さすがに市民が敵になるとは思わないがやり難い事には変わりない。


 ジョージの動きも気になる。

何のために来たのやら……学校で色々調べてやる!

恥ずかしい情報だって調べてやるもんね!!

ジョージめ……笑っていられなくさせてやるぜ!!


 まぁ、今の所敵対しない程度にして置くけどさ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。