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Counter!!  作者: 大和尚
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「ヒーローのご登校だぜ!」

「ひゅーっ!」

「キタキタ!」

「マジなんか!?校内に侵入してきたテロリストをぶちのめしたってのは!!」」

「……銃を持って覆面をした奴らなんて学校には来ないからな」

「やべぇな」

「あぁ、やべー」



 俺と詩織が教室に入ると視線が集まった。

一拍置いて爆発したかのような騒ぎになった。

うるせーし、何言ってるかわかんね。

一斉にしゃべらないでもらいたい。


 ほら、詩織だって引いてるじゃん。

っと、その詩織は柴田と前田に連れていかれた。

クラスメイト達は、昨日、俺と詩織に起こった出来事を知っている模様。

やれやれだぜ。

ちょっとだけ嬉しいのは内緒だ。

あんまり人から褒められた事ないからな。

詩織は結構褒めてくれるけど、幼馴染びいきというか、カウント出来ない。




「困ったなぁ、俺の事聞いちゃった?ホント困る、誰情報よ?」



 俺はドヤ顔なんじゃないかと思う。

頭の後ろを掻きながらヤレヤレといった風情で話す。

ちょっと声が大きいけど、スルーしてほしい。




「で、マジなんか?」

「いや、俺は先生を殴ったって聞いたぜ?」

「盗んだバイクで走ったりするんか?」

「ガラス割って回ったんだろ」

「ワルだな」

「目つき悪いもんな」


「あー、お前ら悪口大会になってんぞ!?はったおすぞ、こら!!」


「そうだぞ、お前ら、斉藤のいない所で言えよ!気分悪くされて話を聞けなくなったらどうすんだ!」

「そりゃいかんな」

「コッソリ言う事にするよ」

「だな」


「お前ら……まぁ、いいや。昨日の放課後、屋上に行ったんだ」



 俺に詰め寄ってくる野郎ども。

ええ、女子の目も集まっているけど、遠巻きです。

どうでもいい野郎どもばっかり……しかも面と向かって悪口かよ!陰口じゃなきゃいいってもんじゃねーぞ!!


 後、お前らのせいで女子が来れないじゃないか!(怒

それでも話したくてうずうずしている俺がいた。

俺が話し出すと、うるさかった教室が少し静かになった。

みんなが聞く体勢に。


 ちょっといい気分。




「でな、爽やかな風に吹かれていたんだ」

「そういうのはいいから」



 くっ、端的に話せってか。

すかさずツッコミが来た。

誰だっけこいつ?いつもクラスで目立ってるやつだったはず。

チャラそう。

佐藤?佐竹?なんかそんな感じの名前だったと思う。




「黒いスーツの男が後から来てな、俺は先生かと思ったんだがそいつが襲い掛かって来たんだ」

「ほぅ」


「聞いた話だと学校関係者ですらなかったらしい。部外者だな」

「続きを」



 こんにゃろ、上から目線で偉そうにいいやがって。

でも、みんなの視線を代弁しているようだったので話を続ける。




「あと少しって距離でナイフを取り出しやがってな、最初は横に振ってそれでこの怪我さ」

「おぉ」

「今日来れてるんだから軽傷なんだろうな」

「おっかねーな……」

「マジかよ……」

「やべーな」

「あぁ、やべー」



 俺が右手の包帯を見せるようにすると、そこに視線が集まる。

そして口々に騒ぐみんな。

俺の一挙一動で、みんなが動くのは俺が操っているみたいで気分良い。

こんなの初めての事なので、ちょっとだけ嬉しい。




「その次は腰だめにナイフを構えて体ごと体当たりに来たんだ」

「うへ」


「それはヤバイ。怪我をさせるだけじゃなく殺意のあるやり方だ」

「俺は知っているんだって言い方うぜー」

「でも初めて聞いた」

「そうなのか」



 メガネ君が顎に手をやって薀蓄(うんちく)を少々。

それを聞いた周りの連中が反応。

メガネ君物知りっぽい。

でも俺は名前を覚えていない。

すまぬ。




「何とか避けてナイフを持っている腕を抑えたんだ。ついで左の腕もな。そこでナイフは落とさせたぜ」

「おぉ!」

「達人かよ!」

「拳闘部だったよな?すげーんだな……俺も入ろうかな」

「やめとけやめとけ。ダチが入ったけど走ってばっかりだとさ」

「じゃー、斉藤が凄いだけか」

「だな」




 俺が身振り手振りを交えて話すと盛り上がる野郎ども。

俺が拳闘部に入部した事を知っていた奴がいる模様。

そしてまだ技術なんかを教えてもらって無い事まで知っている奴もいた。

詳しいなお前ら。

しかしあれだな……この空間には潤いが足りないと思うんだ、うん。

女子は遠巻きに話を聞いていてくれるが、やはり遠い。

詩織が俺に手を振ってくれた。

良い奴だな、詩織。




「俺も力には自信があるんだが、あいつも異常な力を発揮してたんだ。左手で喉を締め付ける所まで持って行かれた」

「「「……」」」



 想像出来たのか、黙って聞いている。

誰かの喉がゴクリと鳴った。

状況を想像したのかも知れない。

想像力豊かだな。




「俺は腕を思いっきり締め付けつつ、自由だった足で脛やら膝やらを蹴りまくってやった」

「おぉぉ!燃える!」

「首を絞められてる状況でだろ?すげーな……」

「必至だったんだろうな」

「おっかねぇ……」


「まぁ、俺の記憶はそこまでなんだけどな。犯人は捕まって俺は保健室で起きた」


「おぉ?」

「そこで終わりかよ!?」」

「良い所なのにっ!!」

「斉藤、倒してないじゃん!」

「いや倒してなかったら無事じゃないだろ?なぁ」

「気絶したのか……」

「相手は誰が捕まえたんだ?」

「どうなったんだ?気になって夜も眠れねー!」

「授業中寝てるじゃん、お前」




 俺が結末を知らずに終わった事を告げると騒ぎ出すみんな。

まぁ、気になるよな。

わかる。

俺も話でしか知らないんだ。

もっとも詩織の力については話すつもりはない。

だからここまでだ。



「そりゃないぜ、斉藤君!」

「頼むぜ!斉藤!」

「ダメな奴だ、サイト」

「ホントだぜ、サイ」

「使えねーな、サ」


「お前ら言いたい放題だな。後、名前略してんじゃねーよ!?もう俺だって解らねーじゃねーか!!」



 しかし、こいつらナチュラルにケンカ売ってくるな。

締めるべきだろうか?

悩む。

エスパーが混じってる?俺が考えただけで目を逸らしたり、距離をとったぞ!?

世の中は不思議で一杯だな。




「詩織が知ってるわ!!」



 騒がしい教室に響いた声。

柴田だった。

あぁ、詩織から話を聞いたんだな。

お前がドヤ顔をする理由はないけどな。

でも注目を浴びて嬉しそう。

俺も人の事は言えないが。




「し、詩織ちゃんが!?」

「呼び捨てなんて百年はええぞ、小僧!!」

「織田さんだろ、なんなら織田様だ!」

「さんを付けろよ、でこすけ野郎!!」


「呼び方はどうでもいいだろう!?続きを教えてくれ!!」

「「「よくねーよ!」」」


「私も聞きたーい」

「私もー」

「織田さん、教えてー」

「詩織ちゃーん」

「お願い!」



 野郎どもは詩織の呼び方で揉め出したり。

詩織はショートカットな元気っ子だが、人当たりもいいし人気あるんだよなぁ。

一人冷静に続きを聞いているのはメガネ君、ぶれない男なのかも。

女子も詩織が相手になった事で口を出し始めた。

俺との差はなんだろう??

性別?

見た目?

く、悔しくなんてないんだからねっ!

俺は話の中心から外れた事を悟った。

三日天下。

短い主人公人生。




「カズちゃんと相手が一緒に倒れたんだよ。カズちゃんが守ってくれたの!」

「「わぁっ!」」

「「いいな!」」



「カズちゃん……くそっ」

「俺もちゃん付けで呼ばれたい……」

「世の不平等を実感した!」


「斉藤め……」

「やっぱり、サでいいだろ斉藤なんてもったいない」

「だな。サイト、サイ辺りじゃなんかカッコイイもんな」


「幼馴染とかありえねーだろ!!」

「幼馴染だったのか!どんな勝ち組だよっ!!」

「これが格差社会……」

「裏サイトに書き込んでやる!」

「藁人形ってどこで売ってんだ?」

「月のない夜道と駅のホームに気をつけるんだな……」



 詩織の言葉に盛り上がる女子連中。

人の事で盛り上がれるんだな。

そして野郎どもは違う事に憤慨していた。

俺と詩織の関係にだ。

なんか負のオーラが立ち上ってる。

視線で人が殺せそうだぞ?いやマジで。

血の涙まではいってない。

そして最後に危ない事を言った奴、駅のホームは魔法陣があるから洒落にならんぞ!?



 そこで俺は静かに、だが熱い視線で詩織を見つめている人を見つけた。

大友さんだ。

周囲には何人かの男子が群がっているが眼中なしか?

昨日、俺が黒いスーツと揉み合って倒れる前に見た人だ。

詩織に熱い視線を送っている。

まさか!?


 ……百合?

俺の活躍を見て欲しかった!

世の中間違っている!




「うるさい!廊下まで響いてたぞ、お前ら!!」



 教室に入って来た担任に怒られたクラスメイト諸君であった。

俺と詩織も例外ではなかったね。

説教は長かった。

ホームルームが潰れましたとも。

その後、担任の授業だったので説教は続いたのであった……。









 信兄と浅井さん、それから部下の人が俺と詩織を迎えに来た。

覆面パトカーなんて初めて乗ったよ。

内部が色々と変わっていたのでまじまじと見ちゃったね。


 そして本庁で事情聴取。

俺は力の事を伏せて話した。

既に詩織から聞いている話だからか、確認みたいな感じだった。

後、信兄は知っているのでスルーしてくれた部分が結構あって助かったよ。

浅井さんが何度か口を挟もうとしていたが信兄が全て防いでくれたのだ。




「……という訳だ」


「薬物ですか?」


「そうだ。今、うちの者が調べている」

「危なそうな代物っぽいね」

「所持していた薬からある程度調べられたわ。詳しい事はこれからね」

「あぁ。どうやら気分の上下が激しくなるみたいだ。そして一番の効果はリミット解除と痛覚が鈍くなる事だと言ってたな」


「噂にはなっていたのよね。誰が薬物を流しているのかしら……」

「あんな奴が量産されたら表を歩けないよ……怖かった」

「まったくだ」

「暴力団か、軍辺りが怪しいわね」

「そうですか」



 俺と詩織からの話が終わった所で信兄が調べて判った事をいくつか教えてくれた。

どうやら黒いスーツの男は薬物を使用していたらしい。

気分の上下は判らないが効果の方は心当たりがある。

俺が掴んだ腕は骨が逝っていたはずだったからだ。

痛みを感じていないと聞いて納得。

あれは異常だった。

そんな状況でも首を絞め続けられるのかは疑問だが、奴ならやりそうな怖さがあった。


 噂になっている薬物なのか。

浅井さんは結構詳しいのかな?

暴力団と軍が怪しいって……暴力団は解るけど軍ってフソウのじゃないよな?

外国の軍だろうか?

でも簡単に持ち込めるのかね。




「目つきもおかしかったよ。怖かった」

「だな。あれは近寄りたくない感じだった」


「二人が無事で良かったよ」



 俺と詩織が黒いスーツの男のおかしさを主張する。

信兄は頷いて、俺達の無事を喜んでくれている。

詩織だけでなく俺も入っていたか。

シスコンとは言え俺の兄貴分でもあるからな。

良かった。




「それであいつの素性は判ったんですか?」

「身分証明書とか持ってないしだんまりを続けているんだよなぁ……薬物から調べるつもりだがな」

「そっか……」



 まだ本格的な調べはこれかららしい。

長くなりそうだね。

信兄、頑張ってください。

俺と詩織は遠くから祈っておきます。



 それから雑談も交えて話をした。

明日は休みなので夕飯は信兄のおごりで焼肉なのだ。

ついでにホテルで一泊。

滅多にない事なので嬉しい。

英二は織田さんちのおばさんにお願いした。

あっさり了解してくれたおばさんには感謝しかない。

何かお土産を買って帰らないとな。




「信兄の部署って何なの?浅井さんは同じ部署なんでしょ?」

「あ、私も聞きたかった」



 雑談の中で気になっていた事を聞いてみた。

詩織も知らない事らしい。

情報の秘匿とかあるかも知れないが知りたい。

だってカッコイイじゃん。




「俺は広報三課だ」


「信兄が広報とか……笑える」

「冷たい目で相手を見たりしてないでしょうねー?」


「カズ、てめぇ……詩織、俺は人気あるんだぞ?本当だぞ?」



 信兄が広報だってさ……似合わねぇ。

切れ者がやる感じじゃない部署だな。

ちょっと意外。

詩織もそう思ってそう。

信兄が俺を睨んだ後で、詩織に何やら弁解している。

態度に差が激しすぎないだろうか?




「私は『特圧』ね」

「お、おい」

「大丈夫ですよ。私達はある程度、表に出てますからね」

「そうだが……」


「えっ?同じ部署じゃなかったんだ」

「ね」



 浅井さんも教えてくれた。

教えてくれたが信兄は動揺している。

言っちゃいけない事だったのかな?

でも表に出てるって浅井さんは言っている。

しかし……信兄と浅井さんは同じ部署じゃなかったのか。

詩織も意外そう。




「『特圧』って何ですか?」


「あー」

「特殊鎮圧課、暴れるのが得意な脳筋の集まりね」

「自分で言うのか……」

「だって本当だもの。周りは筋肉ゴリラばっかりよ?」

「……聞かなかった事にしておく」


「鎮圧は何となく解りますけど、特殊って?」



 『特圧』?何だろう?

俺が聞くと、信兄が浅井さんの方を見た。

浅井さんは信兄に目を向けず答えてくれた。


 特殊鎮圧課……それで『特圧』なのか。

『特鎮』では言葉の響きが良くないもんな。

マヌケな感じになってしまう。

そして浅井さんは自分の所属先を脳筋呼ばわり。

俺と詩織は、つい浅井さんを凝視してしまう。

俺達の驚きを信兄が代弁してくれた。

自分で言うのかと。


 目つきの鋭いカッコイイお姉さんである浅井さん。

スレンダーなんだが筋肉ゴリラ達の中にいても平気なのかね?

筋肉ゴリラってのが本当だとしても、それを言えるだけの力があるに違いない。

きっと強いのだろう。

そう考えると太く見えない体も筋肉の塊みたいに見えるから不思議だ。

俺の脇腹を突くな詩織。

ジロジロ見るなって事だろう?わかってるって。

あ、信兄が手の平で目を覆って溜息を吐いている。

そして今の発言は聞かなかった事になるらしい。



 何が特殊なのか気になるので、そこも突っ込んでみた。




「元々はテロ鎮圧が目的だったんだけど……特殊な部分はちょっと言えないかな」


「ありゃ、残念」

「浅井さん、強いんだぁ!カッコイイ!!」


「そう?ありがとうね、詩織ちゃん」

「えへへー」



「くっ……転属願い、どう書くんだ?調べねばなるまい」



 特殊な部分については教えてもらえなかった。

顎に指を当てている浅井さんが、ちょっと可愛い。

ギャップ萌えってヤツだな。

詩織が浅井さんの事をカッコイイと言ってキラキラした目で見ている。

髪型は同じショートカットで体型はスレンダー。

活発に動くタイプだし似たような二人なんじゃないかな?

ほんわかした空気を作る浅井さんと詩織。


 信兄が何かブツブツ言っていた。

まぁ、無視しましたけどね。




「あれ?じゃあなんで信兄と浅井さんが一緒にいたんですか?」



 俺はおかしいなと思ったので聞いてみた。




「んー、それも秘密かな」

「うむ。いくらお前にでも言えない」


「ちぇーっ」

「お兄ちゃん、私にも内緒なの?」


「うっ!?な、内緒だ」


「そっか……」


「や、焼肉食べ放題!そこらのチェーン店じゃないぞ?美味いぞー!!」



 教えてもらえませんでした。

詩織は内緒と言われ悲しそうな顔。

俺には解る。

演技だ。

だがシスコン兄には効いたようだ。

慌てだす信兄。

食べ物で誤魔化すつもりらしい。

そんなのが効くかよ。

焼肉!楽しみ!!

ロースにカルビ、タン塩、ハラミも捨てがたい。

網が汚れるから豚トロは最後だな。

そういう意味ではホルモン系も後だね!

おっと、涎が!!

白飯だって頼んじゃうもんね。

文句は受け付けないぜ!



 痛い目にあい、事情聴取って面倒もあったんだ、ご褒美は遠慮なく受け取るぜ!!




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