第6章15話
サブタイトルを変更しましたが、内容にあまり変わりはありません。
長くなりましたが、第6章はあと数話で終わりです。
「おーい、そろそろ戻ったほうがいいと思うぞ!」
ボストンバックに詰めれるだけお金を積み込み、それを何千束か残っているカートの上に乗せる伍長閣下。 ちなみにボストンバックには詰めれるだけ詰めたと言ったが、実はボストンバックが小学生が修学旅行に持っていくくらいの大きさしかなく、云千億円どころか10億円も入らなかった。
そして紙で作られているお金といっても、云億円分入れたら結構な重さになり、到底肩で担ぐことが無理だった。
「えっと、今は……うわぁもうすぐ1時ですよ……。そんなに長くいましたっけ?」
「多分あれだろう、金庫扉を開くときにだいぶ時間がかかったからだろうな」
「ああ、なるほど……。どうです伍長さん、詰め終わりましたか?」
「うむ、ボストンバックじゃなくてアタッシュケースかキャリアバックとかのほうがもっと多く入ったと思うが……」
「無茶言わんでくださいよ、コスト的に一番安くて多く運べるバックでゴーゴレで検索したらその鞄が出てきたんですから……」
「でたよ、ゴーゴレ」
ちなみにこのボストンバック、なかなかス連やフェルトワンでは見かけられないもので、生産国家はアメリカ製だったりする。つまりメイド・イン・アメリカまたはメイド・イン・USA。
ゴーゴレも惑統連加盟国でボストンバックを一部国家を除いて流通していなかったので、わざわざUSAからお取り寄せしたらしい。
「えっと……私のほうは一通り終わりましたし、伍長さんのほうは終わっていますね。ならばそろそろ上に上がったほうがよさそうですよ。」
「ああ、そうだな。ならこれを持って……。……なぁルーズルート、このカートどうやって地上まで運べばいいんだ? さすがに階段を上げる力は無いぞ……」
ボストンバックに詰め込んだ分を肩に担ぐだけでも無理そうだったのに、残りの札束とルーズルートが貸金庫から取ってきた貴金属類を合わせるとなると、数百段はある階段を何往復もしなければならない。
初老過ぎのおじさん2名にはさすがに過酷すぎる。
あと、なぜ個人の資産である貸金庫内の貴金属も取らなければならないのかというと、実は伍長閣下は知らないのだが、惑統連の連盟憲章の一部に”制裁措置中の加盟国で制裁違反ととらえられたものがあった場合、違反国家は違反分の金額または鉱物を支払わねばならない”というものがある。
で、ペルシアント惑星王国、ダ・ローゼンクロイツ領での違法でプルトニウムやウランを採掘している。今までの採掘量的に違反金額は約1000億円弱なのだが、下手をすれば核兵器が大量生産されてしまう恐れがあるため、その資金をつぶす意味で貴金属類も取らねばならない。
「ああそれなら大丈夫です。昇降機があったのが見えましたし……」
「昇降機? ああ、あれのことか? それなら大丈夫だな。よしならルーズルート! カートを反対側から引っ張って行ってくれ。私は押していくから」
「えっ? あ、はい」
言われるままに、彼らは鉄格子で囲まれていた部屋から、重いカートを押しまたは引きながら円状の金庫扉を潜り抜け、丁度制御室の右隣、制御室同様鉄格子で仕切られていた小部屋があった。
これが地下の巨大金庫室からお金を運ぶ際に用いられる昇降機である。
ただ、このエレベーター、実に難癖がある。まず動かすためにまたまた総裁または幹部職員の登録された指紋が必要である。
そして一番の癖のある部分というのが、稼働方式がロープ式ではなく試作型反重力エンジンを用いたエレベーターである。
試作型反重力エンジンとは宇宙開発で必要になる反重力エンジンを開発製造するために、惑統連加盟国に無料供給されたものである。ス連邦などの列強国が加盟国に無料で設計図とエンジン構造などを供給されている。
で、その一つにこの試作型反重力エンジンたるものがペルシアント惑星王国で開発製造された。
現在ペルシアント惑星王国は、これの発展型である反重力エンジン甲型を製造しているが、元々惑統連で民間用に開発されたとあって信頼性に高く、反重力というものを利用して昇降機の稼働方式に採用された。
仕組みとしては、指紋認証の時に昇降機の床に付属設置されていたエンジンを稼働して発生する力場を利用して浮かしたりゆっくりと降下させたりしてかごを動かしている。
「……という稼働方式をこの昇降機はどうやら採用しているようですよ」
ルーズルートは昇降機の仕組みを詳し気に伍長に語っている。
現在彼らは、その反重力装置を付けた昇降機にめっちゃ重い現金+貴金属を乗せているカートごと乗せ、総裁の指紋が付いた手袋で指紋認証をしていた。
「ふぅむ、そういう稼働方式もあるのか……。でもこの試作型反重力エンジンだったか? それを動かす動力はなんだ? ス連邦みたいに永久的に発電したり動力を生み出すことができるエンジンは使われていないんだよな?」
「まぁ実は私も詳しくはわからないんですよ……」
「そうなのか?」
「はい、あくまで一説ですが、小型の原子力を使って電力を供給して反重力力場を発生させているというのがりますが、まぁ恐らくは普通に電力を供給して力場を発生させているだけだと思いますが……。あっ着きましたよ、地上一階……丁度地下階段付近です」
確かに伍長が地下階段へ向かうために穴をあけた場所付近に到着した。
「さて、ではついてきてください。伍長さんが穴をあけている間に焼却用のガラスボックスを組み立てておきました。こっちですよ」
ルーズルートは手招きし、伍長をカートごと引っ張ったまま排気ダクトがある待合スペースへと連れてきた。
その待合スペース、中央の豪華に彩られたシャンデリアの丁度真下に伍長たちが持ってきたガラスボックスが組み立てられていた。
その横にカートを止め、カートに乗ってあった現金を札束ごとガラスボックスの中に放り投げる。もちろんボストンバックに入れていた札束もだ。
札束がどんどんガラスボックス内を埋め尽くし、何百束かは入りそうになかった。
「えっと、ライターありましたっけ?」
「ああ、ここにあるぞ」
荷物の中から小型のライターを取り出し、ルーズルートのほうに放り投げる。
「しっかし本当に勿体ないよな。こんな大量の金が全部灰や塵になるんだろう? 普通なら全部猫糞すると思うけどな」
「ええ、だからこそ陛下は私と伍長さんの二人で越させたのでしょう。相互ともに監視でき任務の効率化を図ることができる。一石二鳥ですね」
「ああ、そうだな。そう考えると陛下は凄いわ」
今更何をおっしゃいますか。とルーズルートは小声でつぶやいたが、伍長閣下は意識を完全にお金のほうに向けていたのであんまり聞いていなかった。
「もういいですか? 名残惜しさはそこまでにして、早く燃やさないと……。必要な札束取りましたか?」
「おう、ばっちし」
右手の親指を立る伍長。
それを横目で確認したルーズルートは、ガラスボックスの中に大量に入っている札束の中から一枚お札を引っ張り出してライターで火種を作る。
その火種となった札束をガラスボックスの中に放り投げた。
するとどうだろうか?
火はあっという間に札束に燃え移り、数秒も待てば巨大なキャンプファイヤーとなってきたのだ。
ガラスボックスは、熱と煙によって曇りはじめ、白い煙も上がってきていた。
そんな燃え盛る札束をうっとりと眺めながら伍長は気になったあることをルーズルートに問うことにする。
「なぁルーズルート」
「何でしょうか?」
「火災報知器とかならないような? スプリンクラーも……」
「ああ、それなら大丈夫です。事前に切っておきしました。」
ほめればできる子、それがルーズルートである。




