第4章6話
「って! 熱!」
爆炎が伍長のいる場所まで届き額から汗がにじみ出てきてしまった。
それを拭おうと額に右腕を当てたその時!
「っ!」
ちょっと前まで降っていた小雨のせいでぬかるんでいた地面に足を取られ顔面から思いっきりヘッドスライディングしてしまった。
伍長から見ると、目の前に地面が迫ってきたかと思うと口の中から泥の味がし、顔面が何やらドロドロしてる…。という風だろう。
実の話、確かに小雨が数時間前まで降っており、そのせいで地面が多少ぬかるんでいたのだろうが、コケるほどぬかるんでいる訳ではなく、こけた主な原因は伍長のお歳だからだと思う。
「って! 大丈夫ですか!」
隣を走っているはずの伍長の気配がないことに違和感を覚えた首相は振り返り、万歳状態で地面に顔面から倒れている伍長のもとへ引き返しそう声をかけた。
「! ぺっぺ! うへぇ~口の中が泥の風味でいっぱい…」
むくりと起き上がり、口の中に入っていた泥を吐き出す伍長。
ってか、泥の風味っていうな! なんか美味しそうに聞こえるだろう!?
というかその間に機動兵器が彼らの進路をふさぐように空中で停止し、光らせる砲身を殺意丸出しでこちらに向けていた。
「伍長…私はもう死ぬかもしれん…」
「いやいやいや! シールドがあるし即死とはならんだろ…。多分…」
「多分ですか!?」
すっごい絶望的な顔をする伍長と首相。
キュゥゥゥゥン
砲身内の光がいっそ強くなり発射の時になる特有の機械音が鳴り響き、伍長達は互いに抱き合って…
「首相! ヘルプミー」
「伍長さん! それはむりぃ!」
お互いに涙目になりながら抱き合うという、ちょっと面白い光景が広がっていた。だが彼らがどう思おうが結果は変わらず光はさらに強くなっていき、
「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁ!」
「助けてぇ!」
どっちがどちらをしゃべったかは中の人でもわからないが、光の筋が発射される瞬間、二人はそう絶叫していた。
そして…
ドゴオオオオオオオオォォォォォンッッッッ!
伍長達に向かって発射されたエネルギー弾は一直線に二人の方へ飛び、大爆発を起こした。
確かに彼らが展開しているシールドでは即死には至らないだろう。
だが最悪搬送中に死亡か、大やけどはすると思うので結局は絶体絶命でもあった。
着弾地点では徐々に煙が晴れていき、そこには二人の倒れた体が…
「っと思っているのかい?」
何とピンピンしている状態で、お互い抱き合ったばっかりだった。
伍長達は徐々に自分たちが置かれている状況を把握していき、自分たちをエネルギー弾から守った正体を確認した。
それは…
『ス連邦の科学技術は! 宇宙一ですぅ!』
ハウニブⅡ出会った。
いや、違う。主に武装が78㎜対戦車砲AP弾から110㎜対エネルギー砲であった。
あとびみょーに砲塔が1㎝ほど大きくなったような…。って! わかるかぁい!
「は、ハウニブ?」
『いえいえ、ハウニブⅢです」
伍長の疑問に答えたのは機外用スピーカーから流れた女性の声だった。
「その声…シェリアさん!?」
『はい、アドルフ閣下。シェリアです。遅くなりました、』
そう、このハウニブⅢの操縦者はシェリアさんだったのだ。
「何で…!? ってかハウニブⅢって!?」
『えっと、あっ、とりあえず後で説明しますね。援軍が来るまでもうちょっと耐えてくださいね』
「はっ? 援軍」
何がなんやらな伍長達にまたしても機動兵器の砲身が光りだしていた。それを防ぐかのようにハウニブⅢの周りに空気の波紋が広がり、対エネルギー弾ようにス連で試作的に作られたシールドが展開され、攻撃を防ごうとしていたその時、
『あっ、援軍が来ましたね。意外と早いです』
「は? 援軍って「ええええええええぇぇぇぇぇ!」」
伍長と首相が見たもの、それは…
空から空挺部隊真っ青の速度で頭から落ちてきている…。薄い灰色の統合軍専用の軍服にそれに合うマントと白銀の髪をなびかせてるいるフェルトベルク大天皇帝陛下の姿だった。
相変わらずの男の娘である。
そしてフェルトさんの手には、バールのようなものを持っていた。
『わぁ、速いですねぇ…。』
「いやいや! 他人事みたいに言っているけど、あれ機動兵器に直撃コースだよね!? ってかどこから落ちてきたの!?」
『えっと…。高度1万メートルほど』
「「えっ!?」」
それもパラシュートなし。
フェルトさんは速度をさらに上げながら、機動兵器へ一直線に落ちてくる。
なんか…大体一定の高度となるとパラシュートが起動して減速するはずなんだが…そんな気配は一切なくただただ超スピードで落下していた。
そして…
ドゴオオオオオオオオォォォォォン!
機動兵器と生身の人間が衝突した。
茫然となる伍長と首相。
煙が機動兵器周辺に立ち込め、まだ何も見えなかった。
「…大丈夫なんだよな」
「さぁ…」
あまりの出来事に言葉を失う伍長と首相、抱き合っていた二人はぬかるむ地面にへたり込んでいた。
しばし待ち…
煙がかかったあたりの視界がクリアになっていき、ようやく機動兵器の行方を把握することに成功した。
機動兵器に馬乗りになりバールのようなもの…。実際はそんじょそこらのバールなのだが、そのバールのようなものを機動兵器の溝に押し込みてこの原理を使いこじ開けようとしていた。
「…何してんのかね?」
「さぁ…」
無人機動兵器を止めるシステムを起動するのかな? と伍長は思ったが、後ろのハッチらしき場所が開いたと同時にフェルトさんは驚くような表情を見せ、一瞬にっこりと笑った後こういった。
「みぃ~つけた~♪」




