第3章2話
翌日 の 朝
なぜ間を開ける必要があったのかは誰にもわからない。いや別に開けなくてもいいはずなのだが開いていたので仕方がない。…いったい誰と話しているんだ?
唐突だが今、伍長以下数名はえっらい分厚い扉をしたリムジンにえっらい厳重な警護の中、えっらい人たちが住まう皇居へ進んでいた。本当に唐突だな!?
どのくらいえっらい警護かというと、青バイ(ス連では白バイの代わりに青バイ)隊員に扮装した特務軍の隊員がリムジンの周辺を囲い、警察車両に見せた軍用の装甲車が前後についている状態である。
もちろん警察車両に見せた装甲車なので、30㎜機関砲が1台5門ほど格納された状態である模様。
そんな厳重な警護でどこへ向かうかといえば、国家元首でもある大天皇帝や皇族関係者が住まう宮殿がある皇居特別区である。
一応皇居特別区は首都であるスウェットハーヴェン特別自治区と同じ自治体。なので首都区から少々離れた場所に位置するらしく、その間彼らはゆっくり外の景色を楽しみたいのだが…
どうも青バイが邪魔で街の景観も確認できない模様。
「しっかし伍長、もう動けるのか?」
と後ろの装甲車を見つめながら伍長に聞く首相。
「さあ、まあ動けるからいいんじゃないか? っと、爺ちゃんありがとさん、私は上がった」
と、トランプのスペードの2とダイヤの2をそろえ、何かの勝負から抜ける伍長。
「む、アドルフ。お前祖父を差し置いて上がるとは何事か!」
「いや、祖父関係ないですよ、ヨシフさん」
と切れかけているヨシフを必死になだめるルーズルート。
彼の手には1つのカードが残っていた。
「あっ、私のカードをアリスがとるのだから、私は上がりか」
「あらあら、お強いことですこと」
アリスティンがルーズルートの残った1枚を取りルーズルートはこのゲームから抜けた。
「ではヨシフ閣下、私と閣下の一騎打ちですわよ」
「むっ!」
アリスティンの手に持つ2つのカードを交互ににらみ、右のカードに手をかけた。
「それじゃぁ!」
勢いよく引っ張ったのは…
「うふふ、ヨシフ閣下。ジョーカーですわね」
いわゆるババであった。
まぁ分かった方も多いと思うが彼らは今リムジンの中でババ抜きをしていた。
最後に残ったのは、ヨシフおじいちゃんとアリスティンの2名のみであった。残りは全員上がり。
「では、閣下。私の番ですわね」
そういい、アリスティンは右のカードを軽く引き抜いた。
「ハートの7。上がりですわ閣下」
どうやら勝負がついたらしい。
ヨシフの手元には、腹立たしく笑うジョーカーのカードのみであった。
「おお~、もうちょっと混戦になると思っていたが…意外と早く決着が付いたもんだな」と驚く伍長。
「まぁ、運も実力のうちといいますしね」少々どや顔のアリスティン。
だが夫であるルーズルートは訝しむ顔でアリスティンを見ていた。
「なるほど…(それでアリス。どういうトリックを使ったのですか?)」
「(簡単ですわ。このトランプの裏側に模様がございますでしょう?)」
「(確かにありますね。これが何か?)」
「(このトランプはもともとマジック用のトランプでしてね。この裏の模様、カードの種類と番号によって変わるのですよ)」
「(まっ、まさかと思いますが…)」
「(ええ、これを使わせていただきましたわ。)」
頭を抱えてうずくまるルーズルート。
つまりアリスティンはどれがジョーカーかわかっていたのである。
そんな彼らを放っておき、一行が乗ったリムジンは首都郊外を抜け、何やら城壁が張り巡る場所へとやってきていた。
はたから見れば要塞であろう。そんな場所に彼らは入っていった。
「おっ、ついに来ましたよ!」
「ここが…?」
「はいそうです。ここが皇宮省、皇宮財閥、そして皇居のある特別自治区つまり皇居特別区です。」
城壁内に入ってからだろうか? 装甲車や青バイはいつの間にかいなくなっていた。
そして伍長たちはそこから見える光景に目を疑ってしまった。
「すごい…これは…」
「ええ、確かにすごいですね」
「…うむ、いいなこれは」
彼らが見ていたもの、それは…
首都郊外にもかかわらず城壁内は別世界化のように自然が広がり、静かな風景を見せていた。今は知っている舗装された道には安全のために作画設置されているがそこを超えたらメルヘンチックな風景があたり一面、様々な動物が生息し、栄えた首都やそのほかの町のすぐ近くなのか!? と彼らは思ったという。
そして皇宮省や皇宮財閥本部があるのは皇居内なのだろう。小高い山の上にさらに城壁とぽつんとビルが見えたからだ。
「いかがですか? すごいでしょう。この特別区はこのス連邦の歴史が始まって以降一回も発展してこなかった区です。
ここには絶滅危惧種の動植物や天然のものが多く存在しているのですよ。初代陛下が皇居を作るときここを作られたということだそうです」
ルーズルートの解説を聞いているのかは定かではないが、とりあえずス連邦は凄いということが今回で分かったと、後に伍長はそう語った。




