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5-23 エブニーザ アンゲル エレノア
エブニーザが目を覚ました。
しかし、エレノアの顔を見たとたんブランケットの中にもぐって、
「近寄らないで!」
と叫んだので、エレノアはショックを受けて出て行った。
エブニーザは怯えていた。
夢で『彼女』を犯している男たち……いずれ自分も同じことをしてしまうのではないか……?
そう考えているので、女性(エレノア)が近づくと、夢の女の姿とだぶって見え、全身で恐怖を感じるのだ。
アンゲルが様子を見に来たが、やはり何も話そうとしなかった。
「お前、なんでエレノアに冷たいの?」
「冷たい?」本気で驚いたような声だ「そんなことありません」
「じゃあなんだよ、最近の態度は」
「それは……」
口ごもる。『襲ってしまいそうだから』なんて言えないからだ。
エブニーザは質問に答える代わりに、
「僕は人間じゃない……」
かすかな声でつぶやいた。
「は?何それ?」
アンゲルが聞き返したが、返答はなかった。




