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笑天宮御政録 ―自然に暴走する女帝と常識トリオ―  作者: 鑫鑫
第三章 白風の天華国なんよ

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第九話 揺務なんよ ―静に沈むんよ―

まだ夜が明けきらぬ薄暗さの中、朝の政務殿には張り詰めた緊張感が満ちていました。

官吏たちが執務を始めた瞬間──音が消えた。


官吏A「……声が……聞こえません!」

官吏B「紙をめくる音が……しません!」

官吏C「足音が……消えています!」

官吏D「お腹の音が……しません!」

官吏E「隣りのいびきの音が……消えています!」


兵卒「政務殿の“音”が……全滅しています!」


天華はまったく動じない。


天華「聞こえぬなら、聞こえるように勅令をすればよいのじゃ!」


玲音「……音の記録欄が……ありません……」


琴雪が静を落とす。


琴雪「……静の領域が……政務殿全体に触れている」


空気が沈む。


官吏A「ひっ……! 政務殿が沈んでいます!」

官吏B「机の気配が……遠いです!」

官吏C「筆が……眠りました!」


兵卒「政務殿が……沈んでいます!

空気が……重いです!

気配が……どこかへ行きました!」


天華「沈むなら、浮くように勅令をすればよいのじゃ!」


玲音「……浮くように命じる記録欄が……沈みました……」


政務殿中央で、竹筒勅令布告筒が突然動き出す。


官吏A「勅令布告筒が……走っています!」

官吏B「筒の中の勅令布が……勝手に配布しています!」

官吏C「布告の文字が……飛び出しています!」

官吏D「余白の走り書きが……落ちたままです!」

兵卒「勅令布告筒が……政務殿を巡回しています!」


天華はむしろ喜んでいる。


天華「働き者じゃのう! 自然に走ればよいのじゃ!」


さらに政務殿全体が動き出す。

• 記録欄が机から降りて別の机へ出張

• 筆が勝手に走り回り官吏の袖に署名

• 行が別の文書に転職

• 勅令布告筒が官吏の足元をコロコロ転がりながら勅令を配布


兵卒「政務殿全体が……働いています!

文字が……移動しています!

勅令布が……昇進しています!」


玲音「……記録欄が……別の部署へ移動しました……」



官吏A「制度文書が……読めません!」

官吏B「行が……旅先から帰りません!」

官吏C「文字が……寝たままです!」

官吏D「余白の走り書きが……落ちたままです!」


兵卒「政務殿が……静の向こう側にあります!」


天華「向こう側なら、こちら側に戻るよう勅令をすればよいのじゃ!」


玲音「……戻るように命じる記録欄が……逃げています……」


琴雪が最後の静を落とす。


琴雪「……命じても……戻らない」


官吏・兵卒・玲音「戻らないんかい!」


政務殿は静かに沈んだまま──



天華「……むにゃ……静じゃけぇ……」


ふわりと布団が揺れる。


ぱちっ。


天華は 自室の寝台の上で 目を覚ました。


天華「……夢じゃったんかい!」


天華「政務殿が沈んでおったのに……

文字が逃げておったのに……

勅令布が転職しておったのに……全部……夢じゃったんかい!」


そこへ、侍女・蘭花が入ってくる。


蘭花「姫様、お目覚めでございますか?

……なんだか、胸が静かに揺らいでおられるような……?」


天華「蘭花よ! 聞いてくれ!

政務殿がのう──とんでもないことになっとったんじゃ!」


天華は夢の話を蘭花に楽しそう語り出した。


天華「文字が逃げて、行が旅に出て、勅令布が転職したんじゃ!」


蘭花は即座に深読みしつつ甘やかす。


蘭花「ふふふ……流石姫様。

制度の文字が自由を求めて走り出すなんて……姫様の御心そのもの……」


天華「ならば制度を走らせる勅令を出すかの!」


蘭花「ふふふ……流石姫様。国家が姫様に追いつけなくなりますね……」


蘭花の深読みは止まらない。


蘭花「姫様、行が旅に出るとは、改革の胎動……」


天華「なら改革を始動する勅令を出そう!」


蘭花「ふふふ……流石姫様。未来が姫様の前で正座します……」


まだまだ続いている。


蘭花「姫様、勅令布が転職するとは、新しい風……」


天華「なら風を吹かせる勅令を出せばよいのじゃ!」


蘭花「ふふふ……流石姫様。自然界が姫様の出勤を待ちわびています……」


蘭花は、またまた、甘やかす。


蘭花「姫様、筆が勝手に署名したのは、自律の夜明け……」


天華「なら夜明けを延長する勅令を出すかの!」


蘭花「ふふふ……流石姫様。太陽も姫様の都合に合わせるのですわ……」


またもや盛り上がる。


蘭花「つまり姫様の夢は国家の未来そのもの……!」


天華「なら未来を前倒しする勅令を出せばよいのじゃ!」


蘭花「ふふふ……流石姫様。歴史が姫様のスケジュール帳を確認しに来ますね……」


二人はキャッキャと笑い転げる。


蘭花「姫様の夢は……本当に陽気でございますのう……」

天華「ほいじゃけぇ、また見るかもしれんのう!」

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