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笑天宮御政録 ―自然に暴走する女帝と常識トリオ―  作者: 鑫鑫
第二章 白風の拡張なんよ

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第一話 朝の光が広がるんよ



◆光の殿・天鏡殿


朝光が、笑天宮の朱柱を静かに叩いた。


笑天宮は古装時代の建築様式を色濃く残す巨大宮殿で、

外朝(政務・儀式)と内廷(生活)が明確に分かれている。

その中心にそびえるのが――正殿、天鏡殿である。


天鏡殿は外朝の最北端にそびえる“光の殿”。

東西百二十歩・南北九十歩の巨大空間は、

古装王朝の光学構造を極限まで突き詰めた造りになっている。


黒漆の鏡床は夜の影を薄く抱えたまま朝光を受け、

高窓から落ちる光を反射して殿全体の明度を底上げする。


朱柱は四十八本。

通常の朱塗りではなく「光を拾う朱」を使い、

内部に薄い銅板が仕込まれているため、

光が当たると柱の表面が淡く震える。


天華

「ほい、柱が自然に起きとるんよ!」


官吏

「自然にじゃなくて、光なんよ!!」


蘭花は震える光を見て、静かに微笑んだ。


「ふふふ……姫様、流石です……

 光が……柱の気配を……自然に肯定しています……」


薄花は余白を広げた。


「柱が光を食べとる余白、最高なんよ!!」


官吏

「食べんのんよ!!余白でもないんよ!!」


高窓から差し込む光は、

柱の間隔を計算した配置によって床へ規則的な“光の帯”を描き出す。

この光の帯は儀式の際に天鏡殿を荘厳に見せる重要な要素で、

外国使節が「天意の道」と誤解する原因にもなっていた。


天華

「ほい、天意の線なんよ!」


官吏

「天意じゃなくて、配置なんよ!!」


蘭花は光の線を見つめ、

まるで天意を読み取ったかのように微笑む。


「ふふふ……姫様、流石です……

 この線……姫様の歩みを……自然に導いております……

 朝が……姫様のために……線を引いたようです……」


薄花は完全に乗った。


「姫様が歩くたびに光が“ほい”って寄ってくるんよ!!

 線の余白が美になっとるんよ!!」


官吏

「寄らんのんよ!!寄らんように作っとるんよ!!」


天華

「ほい、光が自然にわたしの道を作っとるんよ!」


官吏

「作らんのんよ!!道は設計なんよ!!」


蘭花

「……姫様の歩みが……殿の気配を……自然に整えております……

 制度も……光も……姫様を肯定しています……ふふふ……」


薄花

「制度の余白も光の余白も姫様の味方なんよ!!

 姫様が歩けば、殿が“ほいじゃけぇ”って揺れるんよ!!」


官吏

「揺れんように作っとるんよ!!余白も言うとるんよ!!」



◆ 回廊と庭園


天華は天鏡殿を横目に見ながら、御政殿へ続く長い回廊へ歩き出した。

三人は自然に付いてくる。


回廊は東西三百歩。

柱は季節ごとに飾りが変わり、

今は夏の初めで柳葉の飾りがさらさら揺れていた。


天井は木組みが美しく交差し、

朝光がその隙間に入り込んで柔らかい影を落とす。


風の精を象った石彫が光を受けて淡く震える。


天華

「風の精さん、今日も自然にええ仕事しとるんよ!」


官吏

「石なんよ!!」


蘭花

「……石が……風の気配を……肯定しています……ふふふ……」


薄花

「石の余白が風を呼んどるんよ!!」


官吏

「呼ばんのんよ!!」


官吏たちが慌てて追いかける。


「天華様、御政殿はこちらです!」

「天華様、そっちは庭園なんよ!」

「天華様、自然に歩いたら御政が始まらんのんよ!」


天華

「自然に御政殿に着くんよ!」


蘭花

「……自然は……導きます……ふふふ……」


薄花

「自然の余白が道を作っとるんよ!!」


官吏たち

「自然に着かんのんよ!!」


庭園は梅林・柳庭・池庭が広がり、

天鏡殿の光が反射して庭園まで届くため、

朝の笑天宮はどこを歩いても明るい。


瓦屋根は黒瓦と青瓦が交互に重なり、

光を受ける角度によって色が微妙に変わる。


天華

「笑天宮は自然に明るいんよ!」


官吏

「自然にじゃなくて、構造なんよ!!」


蘭花

「……構造が……自然を……肯定しています……ふふふ……」


薄花

「光の余白が笑天宮を照らしとるんよ!!」


官吏

「余白じゃなくて反射なんよ!!」


◆ 木の殿・御政殿


御政殿は“木の殿”。

天鏡殿の光学構造とは対照的に、

木の香りと静けさが朝の空気に混ざっていた。


天井は鏡板ではなく木組みがそのまま見え、

床は黒漆ではなく木床が広がる。


天華

「ほい、木の香り、自然にええんよ!」


官吏

「自然にじゃなくて、木なんよ!!」


蘭花

「……木の気配が……朝を……肯定しています……ふふふ……」


薄花

「木の余白が香りになっとるんよ!!」


官吏

「余白じゃなくて材質なんよ!!」


御政殿の入口には初代皇帝の言葉が刻まれた石碑がある。


天華

「自然に笑うんよ!」


官吏

「自然にじゃなくて、笑えるように御政をするんよ……」


蘭花

「……笑いは……自然の肯定です……ふふふ……」


薄花

「笑いの余白が国を照らすんよ!!」


官吏

「余白じゃなくて政策なんよ!!」


深衣の官吏たちが竹簡を抱えて走り回る。

深衣は階級によって色が違う。


青 → 緑 → 赤 → 紫


天華

「ほい、今日は赤の人が偉いんよね?」


官吏

「昨日は紫って言うとったんよ!!」


蘭花

「……色の揺れが……制度を……肯定しています……ふふふ……」


薄花

「色の余白が階級を照らしとるんよ!!」


官吏

「余白じゃなくて規定なんよ!!」


御政殿は朝から騒がしい。

ここは“制度の殿”。


天華の天然が、

蘭花の深読みが、

薄花の美意識が、


制度の線を静かに揺らし始めていた。




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