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1.家庭菜園でレベルアップ。


――キコン。

静かな庭に、どこか気の抜けた電子音が響く。

スマホと連動した探索者用端末に表示されたのは、見慣れない「レベルアップ」の通知だった。

……いや、おかしい。

俺は今、そら豆の葉っぱについていたアブラムシを指先でぷちっと潰しただけだ。

「なんで、アブラムシ潰してレベルが上がるんだ……?」

思わずそんな独り言が溢れる。

少し前までの俺なら、あり得ない奇跡だった。


◇◇◇


数ヶ月前――。


『超晩成型』

それが、俺の持っていた成長特性スキルだった。

レベルアップに必要な経験値が、バカみたいに多い。

そのくせ、苦労してレベルを上げても、ステータスの伸び幅はスズメの涙。


結局、都会のダンジョンではろくにレベルも上がらないまま。

気付けば俺は三十路を過ぎ、探索者としての限界を感じて引退した。


しばらくは実家で引きこもっていたのだが、当然のように「いい加減、ニートは出ていけ」と親に追い出される羽目になる。

ただ、手切れ金代わりに、亡くなった祖父の遺産である「田舎の古い一軒家」を譲り受けられたのは幸運だった。


少ないながらも、しぶとく探索者を続けていた頃の蓄えもある。田舎なら暫くは、暮らしていけるだろう。

そう、今にして思えば、この時点で俺の運命は回り始めていたんだと思う。


引退したとはいえ、探索者に必須の身分証代わりになる端末は持ったままだ。

スマートフォンのアプリで管理できるし、車の運転免許なんかとも紐づいているから、そのまま所持していても問題はない。

自嘲気味に、もう二度と更新されることはないだろうステータス画面を開く。


【ステータス】

名前: 三雲 瑛雅ミクモ・エイガ

レベル: 4

称号: 勇者

戦闘力: 10

持久力: 10

魔法力: 10

魔力量: 10

器用さ: S

運: S

成長型: 超晩成


戦闘力の「10」というのは、戦うための力。だいたい一般人の平均値がこれくらいだ。つまり、探索者としてはまったくの戦力外。


魔法力「10」は、その名の通り魔法の強さ。これっぽっちの数値では、ピンポン玉くらいの小さな火の玉を撃ち出すか、生活用水レベルの水を出して終わり。嫌がらせにもなりゃしない。


「器用さ」と「運」の良さは、レベルに依存しない固定のステータスだ。


特に「運:S」といえば、普通ならレアドロップをザクザク引き当てるような超レア特性のはずなのだが……。


高難度ダンジョンじゃないと、そもそものレアドロップってのが大したことがない。多少ドロップ率が良いくらい。低難度ダンジョンで、棍棒のドロップを引き当てまくっても、売っても1個数十円だし⋯


日常生活での運はどうだったか?


残念ながら、宝くじが当たるとか、信号待ちをしないとか、目の前でタクシーがすぐ捕まるとか、そんな都合の良い奇跡は、起きない。

もちろん、突風が吹いて女の子のスカートがふわりとめくれたり、お風呂上がりにラッキースケベが起きたりするようなことも、ただの一度だってなかった。


悲しいかな、日常生活にはこれっぽっちも影響しないステータスなんだ。


それでも、学園に入りたての頃は「期待の新人」なんて持ち上げられた時期もあった。


なにせ『勇者』という希少な称号を持っている。

近接戦闘の適性があり、魔法も使える万能職。おまけに初期値の「器用さ」と「運」は最高ランクのS。

初期ステータスだけを見れば、誰もが俺の明るい未来を疑わなかった。


けれど、現実は残酷だった。


ダンジョン学園の同級生たちとパーティーを組んだものの、他のメンバーがレベル20に達してステータスが30を超え始めた頃、俺のレベルはまだ「2」。戦闘力はたったの「7」というゴミっぷり。


足手まとい以外の何物でもなく、俺は半ば追放されるような形でパーティーを去った。


その後は持ち前の「器用さ」と「運」を活かして、初心者パーティーの引率をしたり、レアドロップ狙いの助っ人枠として都合よく使われたりしながら、泥水をすするような日々を送った。


10年以上泥臭く戦って、ようやく到達したのが「レベル4」。


それでも、いつか大器晩成の大輪が咲くと信じて、なんとかしがみついていたのだが。

かつて俺を置いていった同級生たちが「レベル40」を超え、誰もが知る上級ダンジョンを制覇したというニュースを耳にした瞬間。


――ポキッ。


本当に、心の中でそんな音が聞こえた気がした。


心が完全に折れた俺は、実家での引きこもり期間を経て、こうして田舎の一軒家で一人暮らしを始めることにしたんだ。


現代ファンタジーもの書いてみたくて、投稿しました。

続き読んでみたいと、感じていただいたらブックマークしていただけると嬉しいです。

評価も入れていただけると、凄くやる気出ちゃいますので、よろしくお願いします!



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