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【旧】ファントムフリー《phantom.free》  作者: tekuto
【Ⅰ 《Fragment / 救世の絆》】

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16/20

アルカディア

 ミシロ達が姿を消した後。俺達はアルカディアの前にある城門へと来ていた。

 このphantom.freeがαテストと言う理由もあり、城門に並ぶ者はNPCを含め、プレイヤーはほとんど居ないらしい。

 アルカディア内には、ほんの数名のプレイヤーが滞在してるみたいだが、その殆どが移住メインでの活動している。攻略メイン、戦闘メインは、そもそも他のダンジョンにいる可能性がある為だそうだ。


「一時はどうなるかと、ヒヤヒヤしたです。主にホムラさんが最後に喧嘩を売らずに済んだからですけど……」

「悪い悪い。俺もミシロに言われるとは思わなかったんだよ」


 ジト目で返すアキラに、俺は何も反論出来なかった。


「もうその話は良いだろ。別の話でもしないか?」

「そうですね。では、白猫さんついて思った事があるんですが、あの方はホムラさんと一緒。初心者でした」

「!? どう言う事だ?? あんな技術を持ちながら、俺と同じ初心者な訳無いだろ」


 PVP時に張られた結界や魔王剣技で作られた氷を借りた二本の紅いナイフで斬る時点で、俺にはとても白猫が、同じ初心者には見えなかった。

 あれがプレイヤースキルだとすれば納得してはいたが、あの強さで初心者な筈がない。


「信じられないとは思うですが、phantom.freeには、freeにあったレベルが存在しない為、ランクである程度の戦闘力が判別出来るんですが、白猫さんにはランクそのものが無かったんです」

「ランクって何だ? そんなものミシロにも無かっただろ」

「それはホムラさんがまだ冒険者では無いからです。それはアルカディア内で話すですよ」


 アキラの話を聞いてると、初心者狩りのマイクはランクD、PVPを仕掛けた金色ノ白王はランクD。乱入して来たミシロはランクEだったらしく、バトルロイヤルになっても勝ち目はあったが、あのスキルのせいで遅れを取っていたみたいだ。

 そして白猫はランクすら表示せず、あの異常なプレイヤースキルを目の前で見せられた為、アキラは俺を見て断念したという。


「次の方、どうぞ」


 兵士の男性が俺達に声を掛けた。


「行くですよ」

「ああ」


 俺達は前へ進んだ。

 アキラは兵士の男性に冒険者カードを提示し、俺には冒険者新規発行の為と情報を流し、アキラは通行料の60ベルカを兵士の男性に渡した。


 どうやら冒険者は都市や街などに行く場合、通行料は無料になる様だが少し違うみたいだ。

 通行料が完全に無料になるのは、上位ランクの冒険者のみ。下位ランクの冒険者だと通行料を払わないと、魔法で都市に転移しても却下されるらしく、最初の頃のプレイヤーは泣き叫んだそうだ。


 じゃあ、アキラは上位ランクの冒険者って事か??

 アキラが話さない時点で、冒険者になった後でも、ランクを見る価値はある。パーティーの情報はある程度緩和してるらしいから、すぐ見てみるか。

 俺達は、アルカディア前の城門を抜けた。




   ◇ ◇ ◇




━ ━ ━ ━

 始まりの都市 アルカディア


 七つの都市の中で最も古くから存在し、冒険者達が訪れる最初の都市。

 アルカディア中心にはオルタナ王国があり、また周辺にある城門を越えれば、緑豊かな草原ラスネロや洞窟の中にあるダンジョンなど冒険初心者達の狩場がある。

 最初の都市とあって、freeでは大手ギルドが多数存在したが、phantom.freeではオルタナ王国の騎士達と移住民メインのプレイヤーが治安維持を任せている。

 また、このアルカディアでは三つのギルドが存在するが、主に戦闘狂の者が多く、たまに治安悪化に繋がる事が多い。

━ ━ ━ ━


(駄目だろ)


 俺はアルカディアの説明欄を見て、笑ってしまった。

 ギルドが治安悪化に繋がるとは、freeでは考えられない事だ。いや、初期のfreeでもMMO時代に何度か合ったが、そこまで酷くはならなかった。


「ホムラさんも説明欄見たですか??」

「ああ。見た見た。笑えるな、これ」

「いつもの事です。と言っても、この説明欄は各案内人の上司が記入してるので、たまに見る事をオススメします。情報がアップグレードすると自動で表示されるので邪魔かと思うですが、設定でも通知は切れるので」

「いや、面白そうだから通知設定はこのままで良いよ。ある程度情報が無いと、何があるか分からないし」


 そう言って、俺はアルカディアの説明欄を消す。

 アルカディア。街の風景はfreeと変わらず、中世時代を模した建物が並び、遠くには城のような物が見えるので、あれがオルタナ王国で間違い無いだろう。


「では、先に冒険者登録ですね」

「ああ。そうだな」


 俺はそう言って、アキラに付いて行く。

 アキラは俺にも分かる冒険者組合の簡単な道を教えつつ、アルカディアを軽く案内してくれた。


━ ━ ━ ━

 鍛冶屋


 武器や防具を購入したり、売却が出来る場所。

 アルカディアには二つあり、NPCの武器職人がいる鍛冶屋と、ギルドが経営している鍛冶屋がある。


 道具屋


 冒険に必要な道具や回復アイテムを購入したり、売却出来る場所。

 アルカディアには四つあり、NPCの経営する道具屋は、道具、回復アイテムとそれぞれ一店舗ずつあり、ギルドが経営している道具屋、移住メインの人が作成した道具屋がある。


 教会


 一度でも訪れると、死亡した時ここで復活する。

 デスペナルティとして、戦闘行為禁止と全所持金没収があり、現実時間、一日で解除される。つまりこの世界では三日となる。

 教会は、各都市もしくは特別な場所に必ず一つある。


 宿屋


 プレイヤーの宿泊施設。個人経営のみ、料理を提供している。

 解除しない限り、ログアウト後も自動決済される。

 アルカディアには二つあり、NPCの宿屋と、個人経営の宿屋がある。

━ ━ ━ ━


 案内している内に俺達は、冒険者組合と書かれた看板がある三階建ての巨大な建物へと着いた。




   ◇ ◇ ◇




━ ━ ━ ━

 冒険者組合


 冒険者が任務を用いて、モンスターの討伐やアイテムの納品などを遂行する為に作られた場所。

 壁に任務票を多く貼っているクエストボード、情報収集を円滑に出来る酒場や、各素材を買い取る業者は標準で各都市ごとに設けられている。

 冒険者にはランクを設けられ、Z、SSS、SS、S、AからFまでがあり、新規登録時はFから始まる。

━ ━ ━ ━


 俺達が冒険者組合へ入ると、ゲームで馴染みのある光景が広がった。

 木造で作られた円形のテーブルや不格好に並べられた椅子には、数人ではあるがNPCの村人達が座り、酒に酔い潰れていていた。そんな中でも俺達を睨み付ける者は何人かいる。

 また、装備を整えた冒険者達がいるなと思えば、初めて見る俺達以外のプレイヤーだった。彼等も同様に酒を飲みつつ、目の前の料理を楽しんでいた。

 二階に上がる階段は左にあり、右には買取業者のスペースが設けられている。

 奥には受付があり、案内スタッフ達が三人体制で配置されていた。


「行くですよ」

「ああ」


 前へ歩いていると、四人パーティーの冒険者プレイヤーの男性が俺達に声を掛けて来る。


「こんな時間帯に案内人が来るとは、時間外に御苦労なこった」

(時間外?)

「この方は案内人からの選出では無いです。貴方には分からないとは思うですが……」

「何が言いたい??」


 アキラの返事が挑発に感じたのか、男性は懐の剣に触れつつ、アキラを睨み付けた。


「駄目よ、クロさん。この子だけは駄目」


 と、仲間の女性が冷静に考えて、クロという男性を止めた。


「何だよ、シロッコ。俺に楯突くのか」


 シロッコと呼ばれた女性はクロを鋭く睨み付けると、クロは面倒臭そうに諦める。


「わかった……。降参だ。命拾いしたな、案内人」

「貴方の命は貰ったですよ」

「へ??」


 クロはいつの間にか自分が四散した事に気付いた。

 だが、クロ本人が気付いた時には、既にアキラの魔法が当たっていた上、ダメージは一瞬でゼロになった後だった。

 すると、シロッコ以外の他のプレイヤー二人が椅子から立ち上がり、アキラに襲い掛かった。


「正当防衛だ」

「良くもクロさんを」

「〝シャインチェーン〟」


 アキラはプレイヤー二人に向けて光の鎖を解き放ち、無慈悲に身体を貫通させて串刺しにした。弾け散る様に二人は四散した。


「ごめんなさいね。私が言っても無駄だったみたい……」


 シロッコは、再度俺達を見て確認する。

 俺達も彼女を良く見なかったが、シロッコは茶髪のロングヘアで桃色の瞳、胸と身長は平均女性と比べて普通。

 装備は、白い魔法使いのハットを被り、白色のローブを着ていた。

 シロッコは、アキラと同じ魔法使いなのか……。


「貴方は、魔眼持ちの方ですか?」

「ご明察通り。と言っても、私はfreeをしてた時と変わらないわ。鎖使いのアキラに、初代魔王の……って、まさか本物……」

「そうですよ。ホムラさんは初代魔王、桜の継承者です」

「良いな〜。私も魔王になってたら今頃、魔眼との相性バッチリだったのに……。まあ貴方以外、まともな魔王なんていなかったしね」


 freeでも変わらず魔眼持ちだったシロッコからすれば、やはり魔王になりたい願望はある。確かに魔眼持ちの魔王なんて強いからな。

 俺は魔眼を持たないが、他の魔王には確か魔眼持ちが二人いた。だが彼等を含めた俺以外の魔王は、やりたい放題した常習犯達だったのを俺は覚えている。


「確かにな……」


 俺は思い出しただけなのに、シロッコに同感してしまった。


「では私達は、ここで。仲間にはあとで」

「良いのよ。クロさん達は自業自得。このphantom.freeではfreeの安全地帯やセーフティエリアなんて無いのにね」

「そうなのか!?」


 知らなかった。じゃあアイツ等みたいに喧嘩売ったら、俺も……、あ。

 いつも強い相手にチート呼びして、アキラもそうだったが、ミシロにも怒鳴られたのは、俺が喧嘩を売ってる様に見えたからか……。

 だとしたら、今後も視野に入れて、気を付けないとな。


「知らなかったの??」

「まあ。助かった」

「どう致しまして。じゃあこの機会にフレンド登録しましょ」

「ああ」

「私もお願いするです」

「分かったわ」


 俺達は、メニューを開きつつ、シロッコをフレンドに登録した。


《シロッコがフレンドになりました》


 俺達はシロッコに別れを告げて、受付へと着く。

 受付では、案内スタッフの女性が笑顔で話掛けた。


「初めまして。アルカディアの冒険者組合へようこそ。新規冒険者登録をする場合は、この用紙に記入をお願いします」

「分かった」


 冒険者登録は、極めて簡単な文章が記入されていた。

 プレイヤー名。職業。特殊職業。種族。メイン武器。得意な技名。ファントムリベレイトの所持数。


━ ━ ━ ━

 プレイヤー名 《ホムラ》

 職業     《剣士》

 特殊職業   《初代魔王の継承者》

 種族     《魔王》《人間》

 メイン武器  《太刀》

 得意な技名  《魔王剣技 桜花一閃》


 ファントムリベレイトの所持数

 《ソードマン》

━ ━ ━ ━


 俺は用紙を案内スタッフの女性に渡した。


「登録費は5千ベルカですが、組合費として月一に千ベルカを徴収するので、合計で6千ベルカをお願いします」


 俺は6千ベルカを払う。

 結構、冒険者って金払うんだな。主に組合費。

 お金がfreeと共有してて良かった。


「VIP登録はしないのですか?」

「流石に高過ぎる」


━ ━ ━ ━

 VIP登録


 別途登録費5万ベルカ。年一に1万ベルカ。

 各冒険者組合の設備、一部無料。任務失敗費、無料。特別優先受付。

━ ━ ━ ━


 金持ちなら可能だが、今の所持金だとこれが限界。

 銀行の金を卸しても足らないな。

 この冒険者組合に銀行は無かった。あとでシロッコにでもメールしてみるか。このアルカディア全体を知ってそうだし。


「では、これが冒険者カードで御座います。ホムラ様のランクはFから始まります。盗まれたり紛失等をしますと再発行は無料ですが、他人の冒険者カードを使用しますと、案内人に報告する事となっていますので、注意して下さい。また、他にお困り事があれば、我々案内スタッフがサポートしますので、その時は受付へ来て下さい」


 俺は、案内スタッフに冒険者カードを手に入れた。


━ ━ ━ ━

 冒険者名   《ホムラ》

 職業     《剣士》

 特殊職業   《初代魔王の継承者》

 種族     《魔王》《人間》

 メイン武器  《太刀》

 ランク    《 》

━ ━ ━ ━


(ランクが空欄になってるけど、バグか?)


 それよりもアキラのランクを先に見てみるか。

 アキラのランクは、Sだった。

 はあ!? Sって上から4番目だろ。え……俺。アキラに殺られたら終わりなんじゃ……。

 走馬灯の様にさっき四散した彼等を思い出し、俺は青褪めた。


「ホムラさん??」


 ビクッと、俺はアキラの声に動揺して驚いた。


「どうしたんですか?」

「いや。ランク……」

「ああ。ランクでしたか。あまり気にする事は無いですよ。自然に上がる物なので」


 アキラの笑顔が怖いんだが、これもSランクの特権か……。


「では、もうそろそろお別れの時間ですね。アルカディアに着くまでが条件でしたし」

「そう言えば、そうだったな。俺はこのまま宿屋に泊まってから、ログアウトだったよな」

「そうです。そうしないとログイン時に襲われる可能性があるので」

「アキラは、これからこの後何かするのか? もう少し時間があるなら、あの宿屋探すの手伝ってくれないか? 無理にとは言わないけど」


 アキラが道案内中に教えたプレイヤーの宿屋。

 もう外も暗いだろうし、アキラに頼めるなら、俺が迷う事もない。


「すみません。今から用事があるので」

「良いよ。また何処かで会えるか?」

「その時は連絡するです」


 アキラは俺に手を振り、冒険者組合を去る。

 すると数分後。プルルプルルとメールのアラームが鳴った。

 俺はメニューを開き、そのメールを何の前触れも無く開いた。


━ ━ ━ ━

 《宛先不明》


 アキラを助けてあげて。

━ ━ ━ ━


「え……。どう言う事だ。これ……」


 それは、アキラが去った後の出来事だった。

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