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【旧】ファントムフリー《phantom.free》  作者: tekuto
【Ⅰ 《Fragment / 救世の絆》】

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12/20

ラスネロ

 自然豊かな草原、ラスネロ。

 そこはプレイヤーを敵対するような肉食系モンスターは滅多に出現せず、誰とも争わないような草食系モンスターがのどかに暮らしていた。

 息を吸えば、上質な空気が体内へと入り、こんなにも空気が美味しく感じるのは初めてだ。

 日光もそこまで暑くない上、余りにも平和過ぎるので、ここではピクニックも出来そうだ。


「何かここまで平和だと、さっきまでの戦闘は一体何だったんだ」


 火の魔神プロメテウス。

 初心者狩りのマイク。

 で、何もかも平和なラスネロ。

 このままずっとこの調子だったら、アルカディアにも着きそうだ。


「でも、ここはPVP可能エリアです。なので、気を抜くと酷い目に遭うですよ」

「それにしてもな……。そう言えば」


 俺はメニューを開き、固有能力(アーツ)と書かれた場所を開くと、ウィンドウが表示された。


━ ━ ━ ━

 ブレイドアーツ


 武器の熟練度を本来よりも大幅に上げる能力。

 未習得の武器を持つ相手から伝授された場合も、対象内。

━ ━ ━ ━


「この固有能力(アーツ)って何だ?」

「それはfreeを引き継いだ時に、おまけで付いてくる特典です。私はマジックアーツを保有しているです」


━ ━ ━ ━

 マジックアーツ


 魔法の熟練度を本来よりも大幅に上げる能力。


 追加能力

 魔法系のファントムリベレイト使用時、能力を二倍にする。

━ ━ ━ ━


「案外、アキラのも使えるな」

「それは、ずっと使っているからですよ。追加能力については、最近ですね」


 それにしても、俺にブレイドアーツを使い熟せるのか。

 否か、不安になってきたな。


 ふと歩いていると、赤や青の小さな果実を実らした木を見つけた。

 他の場所にはそのような木はなく、この一本のみだった。


「あれは?」

「食べれるですよ」


 アキラは赤い実を摘むと、毒味をせず、生で一口食べた。


「但し、赤い実だけですけど」


 俺は赤と青の小さな実を摘み、鑑定した。


━ ━ ━ ━

 リンの実


 赤い実は完熟しており、小さな果実としては甘く、美味しい。

 青い実は完熟初期段階の為、生のままだと毒があり、火を通す必要ある。


 リンの木は自然に生えている場合が珍しく、市場でも一部でしか取り扱わない。

━ ━ ━ ━


 俺も赤いリンの実を一口食べる。

 林檎のようなシャリッとした食感で、確かに甘く、美味しかった。

 リンの実の数自体は多いが、何個も食べる程ではなく、一つか二つ摘むくらいが丁度良い感じだ。


「目的を忘れるですよ」

「分かってる」


 俺達は、赤いリンの実を半分程摘み、少し休憩をする事にした。




   ◇ ◇ ◇




「もう少しで着きそうだな」


 アルカディアの城壁が遠くから見え始めたので、俺はアキラに話し掛けた。


「はいです。あと、あの橋を渡れば直ぐですよ」


 アキラは少し先にある橋を指差す。

 すぐ近くにアルカディアの門が見えるので、あの橋で間違いないだろう。

 ここは何もかもが平和過ぎて、良かったな。

 また来れるなら、仲間を連れて、か……。

 それまでにレベル上げもしないとな……。


(phantom.freeにレベルという概念があるかは、不明だけどな)


《相手からの挑戦を受理しました。バトル形式を強制的にPVPに変更します》


「!?」


(どういう事だ。強制って……)


━━《PVP開始》━━


「避けるです!!」

「何が!?」

「見えてないのですね」


 アキラは俺の前へ飛び出し、杖を盾の様に構えた。

 ガンッと強い衝撃が襲ったが、目の前には何もなかった。

 だが見えてないのは、俺だけだったらしい。

 それは、はっきりと声を発した。


『ホウ。コレガ見エルカ』


 男性のような野太い声が聞こえ、何やら驚いているようだった。


「はっきり見えてないですよ。これも騎士さんとの修行の成果ですが……」

『ホウ。騎士ト言ウノハ、アノ、スカーレットアイズノ……』

「知ってるという事は、貴方が金色ノ白王さんですね」

『娘。我ノ名ヲ知ッテイルトハ、面白イ』


 それは姿を現した。

 その姿は見覚えのある獣の姿をしており、金色の立髪、白き毛並みの百獣の王。

 ホワイトライオンだった。

 口には剣を咥えているので、あれがメイン武器なのだろう。


「あの剣は?」

「あれは、ワールドクラスアイテム、ガラティーンです」


(って事は、破壊は無理か……)


『剣ノ名モ知ッテイルトハ。娘、ナカナカノ博識ダナ』


 金色ノ白王はアキラに襲い掛かった。

 以前とは違い、姿がはっきりと見えているから、素早さだけでアキラを守れそうだ。

 俺は鞘から太刀を手にして、金色ノ白王に刃を向けたが、弾き返された。


「重い!!」


 何だ。この馬鹿力。さっきアキラはこれを防いでいたのか。


『効カヌワ。ソナタデハ、我ハ倒セヌ』

「くそっ!! 〝魔王剣技 桜〟」


 金色ノ白王は剣で俺を追撃する。

 追撃すらも攻撃は重く、衝撃が強過ぎて、俺は倒れた。

 俺はそのダメージ量が酷過ぎて、HPバーが残り二割まで削れた。


『効カヌト言ッタロウ。コレデ止メダ』

「〝シャインチェーン〟」


 光の鎖が、金色ノ白王の手足を束縛する。

 だがそれでも動けるのか、無理矢理にでも解除出来そうだ。


『ホウ。娘ヨ。我ノ邪魔ヲスルカ』

「元々、私を攻撃してたんじゃないですか……」

『良カロウ。デハ、行クゾ』


 すると、金色ノ白王とアキラが目を見開いた。

 次の瞬間。アキラは急いで金色ノ白王の束縛を解除し、倒れた俺に叫んだ。


「ホムラさん、逃げるです!!」


 俺がその理由を尋ねる前に、ある知らせが届く。


━━《乱入発生》━━


《乱入により、バトル形式をPVPから、バトルロイヤルへ変更されました》


(乱入。有りかよ、そんなの)


 俺達の近くから、隕石のような衝撃波が走る。

 ふと視線をそちらに向けると、草原は燃え、大地は剥き出しとなり、中心には一人の少女がいた。


面白(おもしれ)えから来たんだが、弱そうで良かった」


 少女は紙パックの苺オ・レを飲みながら、こちらに向き直り、軽く宣言をした。

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