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第三幕

二本更新です(予定)


 この世界の魔法は、大きな力をもつものだ。


 科学が発達していない分魔法が発達したようで、電球の灯りの代わりに魔法の灯火だったり車の代わりに箒や絨毯、魔法生物...これはあとで説明するとして、とりあえず馬にみえるけど馬じゃない生物がひく馬車が交通手段だったりする。


 

 だから魔法学は必修で、潜在魔力が高ければ高いほど社会において有利になるのだ。


 よって将来没落するかもしれない私は、魔法を身に付ける必要がある、...というか魔法学以外、前世でやりこんでてやる必要がない。



 

 公式が発表した設定ではアリスは潜在魔力が高いが努力していないせいで魔法が下手となっていた。


 つまりアリスは磨けば光る原石なのだ。ならばやらねばなるまい、やらなきゃもったいない。




 「おかあさま、アリスはまほうをまなんで、おとうさまとおかあさまを、たすけたいです」




 ということで親の情を頼りましたとも。えぇ。

この言葉をうるうるとした(計算でできた)涙目で下からのぞきこみながら言えばお母様1発KO。


 

 貴族の箱入り娘だったお母様こと、メアリ・ヘルキャット伯爵夫人は娘に甘い。


 記憶によれば怒るときは怒るけど、いつもは優しい人だ。そんなお母様を頼って、本日からめでたく国有数の魔法の使い手であるお父様...ギルバート・ヘルキャット伯爵から魔法を学べるようになりました。



 お母様、お父様ばんざい。



 「いい、アリスちゃん。お父様の言うことをちゃんと聞くのよ?」


 「わかりましたわ、おかあさま」




 精神年齢は高いですからそこはご心配なく、と内心思いつつ、にっこりと笑うとお母様もにっこりと笑う。


 流石アリスの母親と言うべきか素晴らしい美貌のお母様は笑うと破壊力が半端ではない。


 花が舞っているエフェクトが何故か見えたような気がしたくらいだ。




 そしてお母様の隣で微笑むお父様もこれまた素晴らしい美しさの持ち主で、中性的なその顔にお母様が愛しくて堪らない、というのが伝わってくるような眼差しを携えて微笑んでいる。




 これで、確信した。アリスが可愛いのはこの両親のおかげだ。





 「愛しいメアリ、アリスが賢い子なのは知っているでしょう?」


 「そうだけど...アリスちゃんは愛するギルの娘とはいえ、まだ子供だし本来ならまだ魔法は習わない年頃だから心配だわ。」


 「私のメアリの子供が魔法に特化していない訳がありません。...勿論、血筋が受け継がれていればそう簡単ではないでしょうが、ね。


 それではアリス、始めましょうか。転移するので捕まってください。絶対に離さないで下さいね?」



 「はい、おとうさま...」





 訂正。アリスが可愛いのは、この美しいバカップルのおかげだ。


 前世で恋愛経験なし、ましてや今世ではお父様以外に親しい異性がいない私にとって、この会話は甘すぎて聞いているだけで胸焼けがしたわ。


 例えるならケーキに蜂蜜をかけて、さらに砂糖を一袋まるごといれたくらいの甘さだ。


 何でいちいち、『愛』がついてくるんだ。


 ゲームでの後日談シナリオより甘い悪役令嬢の両親の日常って何だか知りたくなかった。







 そうして、お父様の腕に手を回すと同時に世界が回り出す。


 お母様が段々見えなくなっていくのと同時に虹色の光が私を包み込んでいった。





 書物で読んだ『転移魔法』の成功時の景色、そのものだ。


 でもこれは、あっさり使ってるけどコントロールの難しさは勿論、魔力も相当ないと使えない魔法だ。



 ...流石お父様、といったところか。




 お父様の姿は私には転移魔法を使っている間はみえないし、お父様からも私はみえない。


 大体お父様は5分くらい待つと着くと言っていた。


 でも、転移魔法を使っているものの体感時間と外の時間の流れは違うから、きっとまだ外では1秒もたっていないのだろう。





 こんなに凄い魔法がある世界なんて、前世ではあるとは思わなかった。





 実際問題、魔法はいい。


 何かしら苦労しようと頑張ればいいだけだ。

 


 ...さっきのお父様とお母様の会話を聞いて魔法に関しての問題点で分かったことは、ひとつ。


 このアリスの潜在魔力は開花させるのが大変難しいということだ。

 でも、1回開花すれば後はさくさくと進みそうな言い方だった。






 だから、本当の問題は攻略対象のことだ。


 あのあと、私は色々と思い出そうとした。この世界のこと、魔法のこと、アリスの結末。



 色々と思い出した。


 でも、攻略対象に関することだけは思い出せなかった。





 きっと、天才だった私がハマっていたことを覚えてなかったなんてことはない。


 それならこの現象はきっと今世での『ルール』なのだろう。






 生きている間上手くやれるスキルは身に付けられる。でもその肝心の生き続ける術が分からない。


 お誕生日会を避ける、なんて言葉では簡単でも攻略対象がいるかもしれないから全部行かないなんてことは家に迷惑をかけるからできないし。



 正直、先は暗い。






 「...でもまぁ、何とかなるよね」






 パンと『両手で』自分の頬を叩いて前世でもやっていた気合いの入れ方をやる。



 ...昔もこれをすれば出来たんだ。今回だけ出来ないなんてことは、ないはず。






 これからは、魔法をーーー『アリス!手を離さないようにと言っただろう!!』





 「...お父様?え、手...?あ、きゃあ!」


 『アリス!』





 あぁ、どうして私は前世の死因と同じように、こんなうっかりとしたミスをしてしまうのだろう。



 


 ぐるぐるぐるぐる。






 虹色の光が今度は逆に消えていって、森が現れて風が私の髪を吹き付けてくる。




 あーあ、魔法を習う予定だったのに。





 虹色の光が消えて、空へ投げ出されるのを頭で認識しながら、ぼんやりとそんなことを考えながら落ちていく。










 《「お前は天才なのに本当に変なところで馬鹿だな、『ーーー』」》




 どこか遠くで声が聞こえたような気がしたのと同時に私の意識はぷつりと途切れた。


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