最終話
様方のおかげで 無事 最終話を迎えることができました。誠にありがとうございました。次はまた入れ替わりネタで行くか、官能小説をかくかまよっています。大またお会いしましょうでは
深夜の大学研究室。窓の外には激しい雨が打ち付けている。
元自衛官志望の葵(中身は東大生)は、机の上のノートPCに数式を叩き込んでいた。画面の隅で、謎の現象が解析を終えるカウントダウンが刻まれている。残り時間は、あと3分。
「おい、本当にこれで戻れるんだな!?」
背後で声を荒らげたのは、東大生の身体をした葵(中身は葵)だった。慣れない男の身体で、焦りからネクタイを乱暴に引き千切る。
「僕の計算が正しければね。……だけど、条件が一つある」
キーボードを叩く手を止め、葵(中身は東大生)が振り返る。その表情は、いつもの冷静な彼らしからぬ、どこか切なげなものだった。
「この同期シグナルがゼロになった瞬間、僕たちは同時に意識を失う。もし、どちらか片方でも『元の自分に戻りたくない』と少しでも躊躇したら……プログラムはエラーを起こし、二度と戻れなくなる」
「躊躇するわけねえだろ! 私は私の身体で、絶対に自衛官になるんだ!」
葵(中身は葵)は、東大生の大きな拳をぎゅっと握りしめて言い放つ。
だが、その視線が、自分の本来の身体――今、目の前で華奢な肩を震わせている、東大生(中身)の姿と重なったとき、ふと動きが止まった。
この数週間、自分の代わりに慣れない生理痛にのたうち回り、それでも必死に自分の夢のためにトレーニングを続けてくれた男。
「……お前は? お前は本当に、それでいいのかよ」
カウントダウンが残り60秒を切る。
「……正直に言うよ。君の身体で過ごした日々は、僕の理屈だけでは測れないことばかりだった。筋肉痛も、あの腹痛も、君が背負ってきた熱量も……全部、僕のデータにはない宝物だ」
葵(中身は東大生)は静かに立ち上がり、自分の本来の身体へと歩み寄る。
「でも、僕の頭脳は、君のその真っ直ぐな生き方に救われたんだ。だから――」
ガチリ、と部屋のブレーカーが落ち、停電が周囲を闇に包む。ノートPCのバッテリー画面だけが、2人の顔を青白く照らしていた。
残り10秒。
「戻ろう、お互いの場所に」
「……ああ。お前のその理屈っぽい頭、嫌いじゃなかったぜ!」
2人は暗闇の中、互いの「本来の右手」を、目に見えない記憶を確かめ合うように強く握り締めた。
カウントがゼロに到達した瞬間、閃光が走り、2人の意識は深い底へと沈んでいく――。
ご一読いただきまして誠にありがとうございました。またお会いできますように




