婚約破棄後
「……それではこれでよろしいですな?」
お父様、ゼンメル・コンシュ公爵が貴族の笑みを浮かべながら言った。
「うむ……、此度は本当に申し訳無かった……」
向い側に座るハイラール王国の国王であるジェヌス・ハイラール様は冷や汗をかきながら言った。
(お気の毒としか言いようが無いわね……)
心の中で私は国王様に同情した。
何故、この様な事になっているのか、と言えば1週間前に私アレーヌ・コンシュが婚約破棄された事が全ての始まりだった。
所謂『真実の愛に目覚めた』と言う小説でよくあるパターンだ。
王太子様と真実の愛の相手である男爵令嬢にとって私は悪役令嬢らしい。
しかし、小説は小説、現実は現実。
どんなに綺麗な言葉を並べても結局はただの浮気で私が嫌がらせしたとか男爵令嬢に虐めをした、という物的証拠は無い。
速やかに警備兵により拘束され何処かに連れて行かれた。
真実の愛劇場はわずか数分で閉幕、その後は大人の話し合いである。
結果、我が家は王家から莫大な慰謝料をもぎ取り、今後の発言権ももぎ取った。
お父様がネチネチと追い込んでいく姿は親ながら恐怖を感じた。
「それで……、アレーヌ嬢よ、長年婚約者として愚息を支えてくれた事に関してはお礼がしたい。 望みがあれば叶えたいのだが……」
「え? 望みですか?」
「例えば新たな良縁を用意してもいいし、留学でも良い」
私はお父様の方を見た。
「せっかく言っているんだ、家としての詫びは頂いたしアレーヌ個人の欲しい物を言えばいいだろう」
うーん、とちょっと悩んだが頭の中でポンとある事が浮かんだ。
「それでしたら……、王領に手つかずの土地がありますよね?」
「勿論あるが……」
「その土地を頂きたいです」
「と、土地をか?」
「はい、土地です」
国王様はポカンとした顔をしている、きっと想定外だったんでしょう。
お父様は面白そうな顔をしている。
「私、土地の開拓というのに興味がありまして……、自分の力でどれだけ出来るのかやってみたいのです」
「ふむ……、用意出来ない訳では無いが……」
「では、よろしくお願いいたします」
私はそうニッコリ笑い言った。




