その日の朝の風景
「んー…おはよう」
「…おはよう…」
「おはよう…って、よく一人で起きられたな」
「うん…なんとか…」
兄達に朝の挨拶をすると剛兄さんからは普通に挨拶の返事が、蒼兄さんは挨拶の返事からの驚きの表情と言葉が返ってきた。
チャッチャとチッチャに『飯! メシ!!』『ごはんにゃっ!』と纏わりつかれながら、欠伸と同時に大きく伸びをする。
今朝は蒼兄さんに起こさせることなく、自ら起きることができた。
昨夜は次の日の事を考えて早めに寝ることになったのだけど、昔から次の日に何かしらのイベントごとがあるとなかなか寝付くことが出来なかった私だが何故か昨夜は直ぐに眠れたのだ。
いつもように大きいままのクリスとジルに普通の猫の大きさになったチャッチャとチッチャ、それとシオン達と一緒に寝るためにベッドに入って……と、そこまでは覚えているんだけどもしかしたらクリスかジルが何かしたのかも知れない。
クリスとジルをじーっと見上げる。
ジルがちらりとクリスを見た。
当のクリスは何も言わずにスリスリと擦りついてきたので、まぁいいかとクリスとジルをもふもふと撫で回して朝ご飯の支度をすることにした。
さて、ここまでで皆様のほとんどがお気づきになったであろう。
そうなのだ。今日は待ちに待ったダンジョン探索の日!
『麗ねぇちゃ! 今日の朝ごはんはお肉がいいにゃっ』
「えっ、朝から?」
『だって今日からダンジョン探索なんだぜ。肉食って力付けたいし、それにダンジョンに入っちまったら俺らが食べたいもんなんて食えねぇたろうしな』
「あっ…それもそっか」
ダンジョン探索には私達兄妹三人の他に【深紅の薔薇】のマクシミリアンさん、ヨアヒムさん、グロウ君、ウォルターさんの四人とアランさん、アダムさんに副ギルドマスターのグレンさん、そしてギルドマスターの計十一人とクリス、ジル、チャッチャ、チッチャの四匹で探索に挑むことになる。
さらに、そこにシグ様が加わることになった。
因みにシオン、アジサイ、カスミは非戦闘員である。
「私達だけならまだしも、皆さんとダンジョンで何日も過ごすんだもんね」
ダンジョンの中では今、私達が使っているテントはバレると色々とヤバいのでダミーのテント使い、食事に関してもルナティオースの町で手に入れた干し肉や日持ちのする硬い黒パンなど用意し、地球産の食べ物は可能な限り出さないように事前の兄妹会議で決まっていた。
それにダンジョンによってはダンジョンドロップで、お肉等の食べ物が手に入ることがあるらしい、とのこと。
『僕は麗ねぇちゃと同じのにするよ』
『あたしも同じにするわ』
「じゃあ、カツ丼と豚の生姜焼きね」
クリスとジルはいつものように私と同じ物を、その横でチャッチャとチッチャとシグ様はカツ丼、豚の生姜焼き、牛丼、豚カツ、ハンバーグだけでは飽き足らず、和牛ステーキにローストビーフ等々ものすごい量を平らげている最中だ。
私も普段とは違い朝からお肉が食べれそうなのでこの二つを選んだけれど、兄達はチャッチャ達ほどではないがカツ丼に牛丼、和牛ステーキと私より遥かに食べている。
シオン、アジサイ、カスミもカツ丼や豚の生姜焼きよりも生姜焼きに付いているキャベツの千切りを取り合いっこしているので、追加のキャベツの千切りを出すと、暫くしてカスミは追加のキャベツを少し食べて満足して、生姜焼きと一緒に出したお味噌汁に浸かりはじめた。
そして、ちゃっかりと剛兄さんが食後のデザートにたっぷりの生クリーム入りのシュークリーム3個とこれまた生クリームたっぷりのロールケーキ1本を食べ、その横で団子におはぎ、たい焼きに饅頭を大量に食べまくるシグ様、それを見ないように濃いめのコーヒーを心を無にして飲んでいる蒼兄さん…という構図。
その後は、なんだかんだわちゃわちゃとした朝ご飯を終えた私達は、昨夜も一人、冒険者ギルドに残っていたギルドマスターが迎えに来る前にテントを後にしたのだった。
チッチャ『読んでくれてありがとなのにゃ』
チャッチャ『いや、今日は珍しく麗ねぇちゃが蒼にぃちゃに起こされてなかったな』
チッチャ『急に麗ねぇちゃが起きてビックリしたにゃ』
チャッチャ『だよな』
チッチャ『クリスが寝る前ににゃんかしてたにゃ』
チャッチャ『まぁ、ぐっすり寝れてちゃんと起きれたんだから、いいんじゃね』
チッチャ『蒼にぃちゃが「毎日かけてくれれば…」って、ぶつぶつ言ってたにゃ』
チャッチャ『ははっ。そんなこと言って、実は蒼にぃちゃ、ああやって麗ねぇちゃを起こすのも本当は満更じゃあないんだぜ』




