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プロローグ

 ブレイブワールド。

 今、十台の若者に流行ってるVRゲームがある。

 ブレイバーと呼ばれる人型のロボットに乗って、荒廃した世界を傭兵となって戦うという趣旨のゲームだ。このゲームの中で誰が一番優れているのか。その決勝戦が今行われている。


『おっとぉ。ブロイエリッターがここで、ミサイルを全弾発射。ライフルも投げ捨てて重荷を取り外したブロイエリッターがエネルギーソードとライフルだけを持って、バーニアを吹かす!』


 機体のカスタマイズに、武器。その数は数百あるパーツを選びに町を歩き、組み上げたご自慢の機体で戦う。これに、世界が絡んでるというのだから、大ヒットは間違いなしだった。

 世界がお金を出し合い、世界大会まで行うこのゲームが廃れるはずが無い。そのからくりは値段にある。

 優勝者には、十億もの賞金を受け取る事が出来るというのだから、ゲーマー、果ては、賞金に目が眩んだ者達さえ手を出してる。


『出たぁ! 蒼の騎士所以たるこの技。どんなミサイルであろうと、ライフルの弾であろうと避け、斬り落とす高速の移動! 伊達のプレイヤーじゃ反応は出来ない! どうする、レッドバレッド』


 フルバーニアでの高速移動で、エネルギブレードが弾を斬り、ミサイルを斬る。

 一気に加速させた機体と飛んでくる弾。それを神業と言ってもいい操作で潜り抜け、遠距離から、中距離、果ては、エネルギーブレードの攻撃範囲まで飛び込んできて、ブロイエリッターは、レッドバレッドの左アームを斬りつける。

 本来なら、機体を深く斬りつけられていた所だが、レッドバレッドのパイロットも決勝まで勝ち進んできたプレイヤーだ。左を捨てて、即座に後方へとバーニアを吹かすと、後退しつつ、けん制のミサイルとライフル弾を追加で浴びせて、同じく左のアームを盾にしたブロイエリッターの腕を飛ばす。

 一撃必殺が見込めるエネルギーブレードと、遠距離、中距離からの攻撃を得意する双方の、この戦いの勝利の条件は、どちらかの集中力が切れた方だろう。


『レッドバレッドも勝を見え据えた行動だぁ! 接近戦は不利と判断して退く! 賞金の十億により近いのは、どちらかなんてのは、この俺ッチにもわからねぇ。毎年、決勝は凄まじいが、年々レベルが上がりすぎだろうよ!? レッドバレッドから出たのは、なんだ?』


 転がり落ちるそれは、対ブレイバー用の手榴弾。


『あんなもん使うのかよ!? 俺ッチ初めて見たぜえ。あんなの、制圧ミッション用のもんだろ。てか、ミサイルあれば事足りるしな』


 距離を取らせてくれないブロイエリッターに対しての策なのだろう。ブロイエリッターは去年も一位を取ってる。二冠目に手をかけているとはいえ、一年もあれば対策は取ってくるものだ。

 爆風の中から、最初に飛び出してくるのは、レッドバレッド。自機も少し損傷しているが、あのまま張り付かれた状態よりはマシと言う事だろう。手に持っていたライフルの代わりに、狙撃銃を手に持って爆風からいち早く飛び出してくる。続いて、爆風から出て来るのは、ブロイエリッターだ。

 不用意に飛び出せば、レッドバレッドの的。それを分かっていないはずないが、先に構えられているのと、そうではない者の差。


『ブロイエリッターも、これはピンチか! レッドバレッドが狙撃の体制だ』

 ブロイエリッターを目標にして飛ぶ弾丸。不意打ちにも等しいそれを躱す事が出来ずに、右足に被弾する。するだけならばまだいいが、この弾丸は被弾した場所を中心に爆発する。

 スラスターの一部が壊れ、スピードを落とす。好機と見たレッドバレッドが次々に狙撃。あるいは、残り少ないミサイルを飛ばして、勝負を急ぐ。


『レッドバレッドの通り名所以の紅い炸裂弾がブロイエリッターを襲う! コイツは避けきれない! 右足のスラスターがやられたぁ! 機動性能は勿論、それに準じて操作も難しくなる。これは、レッドバレッドに風が吹いてる。これは、これは、もしかするのか! だが、終わってみるまで分からなのが、この大会だぁ!』


 弾の数、エネルギー。双方限界が近づいている。勿論、機体も。

 動き出したのはブロイエリッターだ。再度バーニアを吹かして、ステージの外周に沿うようにして速度を上げて行く。どの道、動かなければ狙撃の的だろう。

 そのまま近づくなと言わんばかりにレッドバレッドは狙撃を続ける。


『撃たれっぱなしだ。ブロイエリッター! バーニアを吹かして、避けちゃあいるが、エネルギーは無限じゃない。少し、ふらつき気味のブロイエリッターが速度を上げただぁ!? こいつはたまげた。逃げながら、機体の制御補正をしてやがったのか! 制御した上で、速度を上げやがった。更に速度を上げる! こいつは、ツッコム気だぞ。しかもエネルギーブレードを投げつけやがった! 撃たれまくって、イラッとしたからじゃあねえよな、おい!』


 狙撃銃を十分な姿勢で構えられない様に、レッドバレッドにとって射撃のしずらい姿勢を取らせる為、あえて投げつける。


『レッドバレッドは難なくエネルギーブレードを避ける。これはどういうことだ!? メインウェポン無くなっちまったぞ。いや違う。ワイヤーがついてやがる』


 ブロイエリッター目論見どおり投げつけられたエネルギーブレードから、回避行動を取る。

 その回避行動に使う時間こそが今のブロイエリッターに取って必要なものなのだ。さらに、ブロイエリッター右の足から飛び出した三つのナイフを手に持つ。


『ナイフを出したと思ったら、何をする気だ? 見た感じ、エネルギーブレードの小型版に見えるが……投げつけた剣の代わりなのか!? いいや、理解したぞ! 剣を投げたのは距離を詰める為の布石だぁ!』


 レッドバレッド側のレティクルには間違いなく、ブロイエリッターの頭部が表示されている。左右に大きく揺れながらの突進ではなく、ほぼ一直線にレッドバレッドへと向かって行く。

 多少左右上下に揺れたところで、外すはずの無いという自信。それは、ブロイエリッターも理解しているだろう。だから、くれてやると、最短を進んでいるのだ。

 その誘いにあえて乗る。頭部さえ破壊してしまえば、大部分の視界を奪う事も出来る。距離と引き換えにしても惜しくは無いというレドバレッドの算段。

 それは、ブロイエリッターにとっても痛いはずだ。互いの機体のディユアルアイが何かに反応すかのように光り、次の瞬間、レッドバレッドの狙撃と同じ瞬間に、ナイフを投擲する。


『投げただ!? てか、FCSであれは制御できるもんなのかよ? 誰か教えてくれ!』

 ブロイエリッターの頭部が飛び、レッドバレッドの頭部にナイフが刺さる。

 仮に、レッドバレッドが好機とブロイエリッターのエネルギーブレードの破壊を優先するのであるならば、簡単にブロイエリッターが懐に飛び込んで来ただろう。


『これは、どういうことだ!? 痛み分けなのか? それとも、ブロイエリッターの策略なのか!』


 お互いにすれ違い、ブロイエリッターは姿勢を整え、レッドバレッドは射撃の態勢に入っている。

 大部分の視界を封じさられているブロイエリッター。それに、対するレッドバレッドも頭部の機能の一部をやられている。FCSだ。射撃に事おいては、このシステムが優秀であればある程、命中率が上がる。敵の軌道、回避、それらを計算して、射撃を合わせてくれる。

 そのシステムが無い以上、全て自分でこなさなければいけない。それだけならば、レッドバレッドも対応できただろう。システムはあらぬ方向へと射撃補正をかけていたのだ。

 結果、飛び出した弾丸はブロイエリッターから反れていく。

 

『目を殆ど潰されたブロイエリッターに対して、レッドバレッドはFCSがイカレタみたいだぁ! レッドバレッドがあの距離で弾を外すなんてそれ以外考えられない! システムアシスト無しでの射撃は至難を極める。逃げる逃げるレッドバレッド』


 もしもがあるのならば、すれ違いざまに撃った弾で勝利へ傾いたかもしれない。だが、これこそが時の運というものなのだろう。

 狙撃銃の大事な弾消費し、補正しつつ射撃する。が、今までの様には上手くいかず、狙いは精密ではなくなっている。これでは、ただ弾を撒き散らしているだけだ。

 ワイヤーを巻き上げると、エネルギーブレードはブロイエリッターにの手に戻ってくる。


『手元に戻ったエネルギーブレードの出力を上げたぁ! 今度こそ仕留めにかかるぞ!』


 制御出来ない火器程無駄なデスウエイトは無い。

 ミサイルと残りのメインウェポン以外の武装を捨て、狙撃銃だけの身軽になったレッドバレッドは、逃げの一手を打って、弾頭補正をかけて行く。が、この試合に関しては、そんなに悠長な行動は命取りになる。


『逃げるレッドバレッド! 追いかけるブロイエリッター! 殆ど目が潰されてるってのに、ブロイエリッターは、ありゃどうなってるんだ!? スピードの差は歴然。レッドバレッドの射撃は最早威嚇射撃にしかなっていないぞ!? 捕まえたぁ!』


 フル加速したブロイエリッターに、腹部にあるコックピットを串刺しにされて、レッドバレッドの動きは、完全に止まる。


『決まったぁぁあああぁぁあ! ブロイエリッターが二冠達成だこの野郎! 十億はお前の物だぁぁあぁぁあぁああぁあ!』


 湧き上がる会場。ゲーム内のアバター姿で、トロフィーが受け渡される。それは、十億を手にした者の証しだ。

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