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第17話 ビックリした。失言したのかと思った。


「はい、それでは合計で、二十二万円になります」


「ありがとうございますっ!」


 昨日に続いてオーク狩りを行うこと二回。合計八体分の肉と魔石を納品したおかげで、所持金がついに百万を超えた。


 これで初めてダンジョンへ来たときに見たあの片手剣を買える!


「やっぱ買うならあそこかな。明日は月城さんと約束した日だし。ゴブリンで慣らすくらいなら大丈夫だろ」


 家からは一番近いダンジョンだし、帰るの楽だしな。ほんじゃま、電車乗りますかね。


 ◇◇◇


「らっせー」


 相変わらずどころか、やる気のなさに磨きがかかった自宅近くの売店の店員さんの声を聞きながら、自動ドアから中へと入る。


 あの頃はバイト出来るの羨ましがってたな。ぶっちゃけ今は考えられないけど。


 たった数日でここまで考え方が変わるなんて、自分でもちょっと笑えるが、想像以上に稼げたからな。


「っと、あったあった。すみませーん、これ下さーい」


 魔鋼製の片手剣(刃渡り五十センチ)百万円。


 俺は今日、これを買う!!


 ピッ


「こちら百万円になりゃーっす」

「Bペイで」

「あっす」


 ピッ


「あーい、こちらどっぞー、ありゃしたー」


 慣れすぎじゃね?お前さすがに、もうちょい……。


 いや、いいか……。


 レジに置かれた短めの片手剣を手に取る。鈍い輝きを放つ、魔鋼製。確か魔力で切れ味がなんか、すごく、イイ!


「おおお……!」


 鉈とは比べ物にならない存在感。重心の違いか、単純な長さの問題か、ズッシリと手にのしかかる重さを噛みしめる。


「あ、ここで振るのは勘弁してくださいね」


「あ、すみません」


 急にガチなトーンで言うなよ。ビックリするじゃん。でも刃物なんか持ってたら、そりゃ怖いか。さっさとダンジョン行こう。


 ◇◇◇


 というわけで、初日に来たのと同じダンジョン、足立第三百八ダンジョンへとやってきた。


「さて、配信ボタンをポチッと」


『おー』

『はじまた』


「あ、どもどもー」


 いつものメンツかは知らないけど、多分そうだな。勝手にいつメンさんと呼ばせてもらおう。心の中で。


「えー、本日はですね、懐かしのダンジョンで、新しい武器を試してみたいと思います。こちらです!ジャーン!」


 ドローンへと向かって買ったばかりのシックな片手剣を見せびらかす。どうだ、百万だぞ。怖いか?俺は怖い。


「おっと、そんなこと言ってたら早速第一ゴブリン発見。それじゃー行くぜー!!」


 オラァ!切れ味確かめさせろぉ!!


 気配感知の反応に従って、曲がり角へ向かって走っていく。そこにいるんだろー!?


 俺の目線の先、土壁を掴みながら曲がり角からひょっこり現れたゴブリンの首へと剣を振るう。


「ゴブ?」


「さよーならああああ!」


 ──スパッ


「うおっ、スッゲェ切れ味」


 抵抗らしい抵抗もなく、ヌルッとゴブリンの首を通り抜けていく片手剣。確認するまでもなく、ゴブリンは魔石へと変わって、土の上を転がっている。


『おおー』

『いつもと一緒やな』

『いやまぁ、楽そうではある』


 なるほど、配信的にはあんまり変わらないのか。確かにやってること自体は一撃でゴブリン倒してるだけだし、そうなるのも納得かも。


『魔鋼ならあれはしないの?』

『たしかに』

『魔鋼だしな』


「へ?あれとは?」


『魔鋼なんだし、魔力操作で切れ味良くなんじゃないの?』

『魔剣士御用達だもんな』

『ってことは、職業は魔剣士か?』


 魔力操作……そういえばそうだった。視聴者さんの助言に従い、魔力を片手剣へと集中させていく。


 うっすらと淡く輝きを放つ片手剣。なんとなくだけど、手に吸い付くような感じすらする。


『おお、マジで魔力操作あるんだ』

『しかもかなりスムーズだな』

『ふむ』

『お、検証班か?』


 魔力のこもった剣を、振るう。

 流れ星のように、一筋の光がダンジョンの中へと軌跡を描く。


 ──魔剣術スキルを獲得しました。


 これもスキルなのか。でも確かに、さっきよりも、魔力を剣にこめられそうだ。


 先ほどよりも僅かに、だが確実に輝きを増した剣を、振るう。


 ──魔剣術スキルのレベルが上がりました。


 さっきよりも。


 ──魔剣術スキルのレベルが上がりました。


 もっと。


 ──魔剣術スキルのレベルが上がりました。


『お、おい』


 ──魔剣術スキルのレベルが上がりました。


『これ、レベル上がってるよな?』


 ──魔剣術スキルのレベルが上がりました。


 もっと、もっと。


 ──魔剣術スキルのレベルが上がりました。


 ◇◇◇


「ふぅ、楽しかった」


 しばらく振り続けたら、レベルアップのコールが聞こえなくなったし、多分20になったな。ま、こんなもんだろう。


「これで月城さんに呆れられることはねーだろ」


 むしろビックリさせるまである。……あるよな?


『月城って言った?』

『月城って、月城ユキナ?』

『剣神の?』

『知り合いなん?』


「あ」


『あって言ったぞ』

『知り合いだな?死神に襲われたときか?』

『あの伝説のやつ?』

『あれそんな感じだったか?』


「あ!あー!!今日はそろそろ終わりますね!バイバーイ!!」


『逃げる──』


 大急ぎでドローンのスイッチを切る。


 やっべぇ……完全に失言だ。


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