帝国での暗躍
8時投稿予定でしたが、編集中にブラウザが強制終了して3000文字ほど消えてしまい、徹夜して再編集をしましたが間に合わず、遅くなりました。
初戦闘シーン描写なのでと張り切って書きました。
一応グロ注意です。
通貨価値を修正しました。
「さて、こんなものかねぇ・・・」
テーブルの上の食器を洗ってキッチンの食器棚に戻し、ワイングラスとワインボトルを指を鳴らして消し、食べかすの付いたテーブルを綺麗に拭き取り、物理法則を無視してバーテン服の懐からコードレスサイクロン掃除機を取りだし床のカーペットに落ちた汚れやと食べかすを吸い取り綺麗にし、また懐に仕舞う。
これである程度綺麗になっただろうと判断したべリアルはミナトが寝転んでいるベッドに目を向けた。
「この状態で部屋に戻す訳にはいかないしね。今日の所はみんなで仲良く寝てもらうとするかな。」
べリアルが指を鳴らすと二人程しか寝れないベッドは一瞬で幅2mを越えるファミリーサイズになった。
「さて、あとは酔いつぶれたお嬢様方をベッドで寝かせれば、今日の私の本業は終わりだ。」
とはいえそのまま寝かせると制服にシワが寄ってしまうしゴワゴワして寝にくいだろう。
そう考えたべリアルは、リーシェ達全員の制服と下着のブラとショーツも脱がし全裸にして、窓際から順番にルクシリア、アルティ、リーシェ、アール、ミナトの順に寝かせて、指を鳴らして浄化魔術を使い布団を掛けた。
「下着は・・・黒がルクシリア、青がアルティ、ピンクがリーシェ、紫がアール、白の猫ランジェリーがミナト」
浄化魔術を掛けた下着を各々の制服の上に置く。
「後は、人数分のエチケット袋も添えて置くとしよう。トイレは1つしかないのに五人も居るからね。」
黒色のエチケット袋も制服の傍に置いた。
「さて、ここからは副業の時間の始まりだ。」
チラッと寝ているリーシェの姿を確認する。
「私は朝まで戻らないつもりだが、まぁ大丈夫だろう。何せ今の私を殺せるぐらいには強い人間が三人も居るからね。」
部屋をでて、廊下を通り、近くにあったトイレに入ってそのまま突き当たりにある窓を開けて窓枠に足をかけて体を乗り出して翼を展開して窓を閉めて高く飛びあがりその場を離れた。
(人間は何かと生きていくには金がいる。そしてそれはいつ何時必要になるか分からない。そして金で解決出来ない問題や事件が発生した際には、揉み消し可能なほど権力、もしくは権力者のコネが必要だ。そうすれば殺すよりはスマートに済むだろう。)
戦闘機並み高速で上空を飛行しながら目的地へと向かう。
(リーシェとは100年近く付き合うことになるだろう。ならば私が、リーシェの金と人脈のパイプを作れば大抵の物事には対処はできよう。)
高速飛行を10分ほどして目的の都市上空にたどり着く。
「それに最も適した国は―――カルディニア大帝国。」
眼下に見下ろすのは、世界最大の人間至上主義国家カルディニア大帝国、その首都である帝都アルガザルムであった。
「さて、まずは基礎となる資金集めだ。」
透明化の魔術を使い帝都の人気がない裏路地に降り立ち、顔に幻覚魔術を掛けて20代ぐらいの若く爽やかな好青年に変え、指を鳴らして燕尾服に着替えた。
表通りに出ると様々な色や形の建物が所狭しと並び深夜遅くにも関わらず街灯が普及している為か、通りはとても明るく、飲み屋を探す男性の集団、カフェで世間話をする女性達、剣や杖を持った冒険者、鎧を着た兵士に、呼び込みをする男性や女性、石畳に敷かれたレールのような線の上を走る路面電車を思わせるような四角い金属性の無骨なデザインの乗り物など、深夜とは思えないほどの賑わいを見せてみた。
「ふむ。これはまた・・・学園島にも勝るとも劣らない発展した都市だね。」
とりあえず、その辺の酒場に入り情報を探しに入った。
(さて・・・この酒場なら・・・おそらく一人ぐらいは居るだろう。)
酒場に入りその人物を探した。
そして割りと直ぐに見つかった。
(やはりいたね。情報屋。)
そこそこ広い酒場の中でカウンターから遠いい目立たない隅っこでローブを着た中年男性が木製のジョッキでビールを煽っていた。
べリアルはその男性の居る席に近づき、男性の対面に座った。
「んあ?なんだお前?」
突然対面に座ったべリアルに男は、怪訝そうな顔をした。
「情報が欲しいのです。売って貰えませんか?」
べリアルの質問に男性は少し警戒心を見せる。
「なんで俺が情報屋だと思うんだ?」
「そうですね。理由を幾つか挙げるなら、カウンターから遠い余り人目に着かない二人掛けの席を選んで座っていること、酒場に来たにも関わらず何も頼まない訳にはいかないので酔わない程度にビールだけを飲んでいたこと、それからテーブルに端にメモ帳とペンが置いてあること、明らかに誰かを待つような時間の潰し方をしていたこと、資料や小物など普通の服に隠すより内側に細工がしやすく、納め方次第ではそれなりに物が入るローブを着ているところ・・・などですかね。」
男性は目を見開く。
「こいつぁ驚いた。まさかあの短時間でそこまで見ていたとは・・・それにあんたのその格好、さしづめ何処かの貴族の執事って感じだな。」
「そうですね。確かに私には仕える主がいます。今回はその為に情報を探しに来ました。」
男性は口元を歪めて悪そうな笑みを浮かべた。
「へぇ。そうかい。ということは報酬は期待できそうだなぁ。」
「ええ。それはもちろん。ですが生憎とお金は持ち合わせが心許ないので、こちらで如何でしょうか。」
そう言ってべリアルは懐から5cmほどのダイヤモンドを出して机に置いた。
「なっ!?こりゃダイヤモンドじゃねーか。これだけ綺麗に加工されていてこのサイズ・・・金貨2枚は下らないぞ!!」
べリアルは笑みを浮かべる。
「こちらでご満足頂けそうですか?」
「おっ、おお。もちろんだ!!それで何が知りたい?俺の知る範囲の情報ならいくらでも話すぜ。」
「それは良かった。では、目立たない広い土地と大きな屋敷を今からでも手配できる不動産屋と宝石をより高価に換金してくれる貴金属店、奴隷を扱っているそこそこ大きな商会、それと食料品を生活用品を大量に購入可能な商店の場所を教えて欲しいのです。」
「なんだ、随分と急な買い物だな。昼間に来た方が空いている店は多いとおもうが、まあいい、この時間帯でもやっていて、大きな土地と屋敷を手配できるのは貴族の街にあるローランド商会だ。宝石の換金、高く買い取って貰うならこれも貴族街のノルミス商会だな。奴隷は・・・ここから一番近い商会でいいんならグラッゾ商会だな。倉庫持ちだからそこそこ大きいはずだ。食料品と生活用品を大量に買うんなら、この酒場の4つ先の商業ギルドに行くといい、商人の利用も加味して大量購入が可能なはずだ。っと、こんなところだな。もっと詳細に聞きたいことあるか?」
「いえ。助かりました。ありがとうございます。」
べリアルは立ち上がり軽く一礼する。
「おう、こちらこそ。いいもんもろうたしな。今後ともご贔屓に。」
「ええ。その際はまたお伺い致します。」
そう言い残し酒場を後にした。
「ふむ、どうにかなりそうだな。しらみ潰しに回っていくとしよう。」
べリアルはまず貴族街のノルミス商会に行き、値踏みするような目で見られたが、5cmのダイヤモンド10個と10cmほどのサファイアを5個懐から出すと、突然血相を変えてヘコヘコとした態度を取り、最終的に金貨35枚と換金はしてもらい、ローランド商会では金は有るのかとうるさい定員に金貨10枚を見せ付けて黙らせ、カルディニア帝国の外れの森の中にある大きな庭と畑のある広い屋敷を購入し、商業ギルドで馬車の荷台5台分の食料品と生活用品を購入し、適当な所まで運ばせて降りさせ、先ほど購入した屋敷に座標を指定して、指を鳴らしてとばした。
「さて。これで残るは、グラッゾ商会のみだねぇ。」
港の付近にあるグラッゾ商会の奴隷用の貨物倉庫には警備として雇われたショートソードや短剣で武装したゴロツキが5人と黒色のローブを着た魔樹士らしき2人が倉庫の番をしていた。
「中にも5人、それと少し強そうなのが二人いるね。後は従業員が8人ほどかねぇ。」
そう言いながら堂々と倉庫の正面入口に向かう。
「おい。なんだおめぇ。ここは、グラッゾ商会の倉庫だぞ。お前みたいな、人間の来るとこじゃねーんだよ。」
倉庫に向かってくるべリアルに気づいたゴロツキの男がオラついた態度で近づいてきた。
「そうか。ここで合っているのだね。説明ご苦労。」
そう言って、右手の中指でデコピンの構えを取る。
「あ?何言ってやがっ―――」
ゴロツキが言い終わらないうちにべリアルはデコピンを放った。
ドパン―――と音を立ててゴロツキの頭部は脳漿と肉片を撒き散らしながら吹き飛んだ。
「な!?」
「こいつ。やりやがったな。」
「ぶっ殺せ!!」
仲間が殺られたことで、番をしていたゴロツキが一斉にショートソードを抜き、魔術士は杖を構えた。
「魔術士の出番はないよ。」
魔術士二人が立つ間に瞬間移動してこめかみに側面から同時にデコピンを喰らわせ魔術士の二人は一言も発することなく頭部が砕け散った。
「嘘だろ・・・ロッゾとミリナが一瞬で・・・」
「今。急に居なくなって、え?」
「なんだよそれ・・・」
ゴロツキ達は何が起こったか分からず、目を白黒させていた。
「心配はいらいよ。直ぐに再開できるからねぇ。」
そう言ってゴロツキ達の方を見て背筋が凍るような邪悪な笑みを浮かべた。
「くっそ。ふざけやがって。」
「ぶっ殺してやらぁ。」
二人のゴロツキがべリアルに突撃した。
「面白味がないねぇ。」
突撃してきたゴロツキを頭を退屈そうに連続で吹き飛ばした。
「ひぃいぃ!!」
「ば、化け物ぉぉぉ!!」
ゴロツキ二人は剣を投げ捨てて、その場から逃げ出した。
「あぁ。いいよ、いいよ、その顔だよ!!!」
前に瞬間移動して一人の頭を吹き飛ばし、もう一人は右手を吹き飛ばした。
「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁ―――」」
甲高い悲鳴をあげ男は地面に倒れ込んだ。
「ほら、もっといい声で鳴いてご覧。」
今度は左足を吹き飛ばした。
「あぎゃぁぁぁあっっぁぁぁぁ―――」
「あぁ、いいぞ。もっと、もっと私を楽しませてくれ。」
右足を吹き飛ばす。
「―――っあぁぁぁあぁぁああっ・・・・」
ゴロツキは失禁して意識を失ってしまった。
「なんだ。もう終わりかね。堪え性のない子だねぇ。」
べリアルはため息をつきながら、ゴロツキの頭を蹴り飛ばした。
「さて。後は中だけだねぇ。」
倉庫の扉を軽く殴って吹き飛ばし、中に侵入する。
「くそ!なんだってんだ。」
「何なんだあいつは!!」
「外のやつらはどうなったんだ。」
ぞろぞろとゴロツキが集まってくる。
「君達、お呼びではないよ。」
指を鳴らすと集まって来たゴロツキが全員の首が順番に吹き飛んで行った。
「私の本命は君達の二人なのでね。」
「はっ。妙な術を使うじゃねーか。」
「何かの魔術みたいだけど、あたし達には効かないわよ。」
大剣を肩に担いだ、褐色の大男と紫色の踊り子みたいな服を着た女性がいた。
「では。お互い殺し会う前に名乗りを挙げましょうか。」
仰々しく手を広げた。
「私の名はべリアル。君達を殺す者の名だよ。」
そう言って不敵な笑みを浮かべた。
「はっ。その余裕どこまで続くか試させてもらうぜ。この元Aランク冒険者〝剛力〟のデルベ様がなぁ」
「そんじゃぁ。この元Aランク冒険者〝炎者〟のオルメナが支援してあげますよっと。」
デルベが大剣を構えて、オルメナが杖を構えて、それぞれ詠唱を始めた。
「我が肉体を強靭にしたまえ、筋力強化」
「彼の者の焼き貫きたまえ、炎槍」
デベルが自身に肉体強化の魔術を掛けて、突撃し、オルメナは3mはありそうな炎槍を展開する。
「一節詠唱か。そこそこやるらしいね。」
「おら、喰らえやぁぁぁ!!」
巨体に似合わない俊敏な動きで、べリアルに接近し左横凪ぎの一撃を与える。
脇腹にもろに喰らったべリアルは、横っ飛びに吹き飛び倉庫の壁にめり込む。
「おい。」
「ホイホイ。」
デベルがバックステップで回避すると、オルメナがべリアルに向けて炎槍を打ち込み爆発が起こる。
「まだまだいくぞ、オラァァァ!!!」
爆炎が晴れると、デベルが再び突撃して今度は右横凪ぎの一撃を与え、重厚な鉄の扉にめり込む。
「ほい。」
そこに再び炎槍が打ち込まれ爆発が起こる。
「ぬうぅぅぅぅん―――」
今度は地面を削りながら下から上に切り上げる。中を舞うべリアルに炎槍が打ち込まれ爆発する。
デベルが一撃与える、オルメナが炎槍で攻撃のコンボをその後8回ほど繰り返した。
「ぜぇぜぇ―――流石にくたばっただろう。」
「はぁはぁ―――そうだね流石に殺したかも。」
仰向けで動かなくなったべリアルを見て、二人は肩で息をしながら勝利を確信した。
「はん。口ほどにもなかったな。」
「だね。結局何もして来なかったし、さっきのゴロツキを殺した魔術なんで使って来なかったのかね?」
「さぁ。勝ったからいいんじゃ―――」
「これで終わりかね?」
二人して目を見開いてべリアルを見た。
まるで糸に引っ張られるようにノーモーションで起き上がった。
「バカなあれほどの攻撃を受けまだ動けるか・・・」
「ちっ。しゃーない、もう一回やるよ。」
デルベが再び筋力強化を自分に掛けて、オルメナは炎槍を展開する。
「しぃぃぃねぇぇぇ!!」
起き上がったべリアルに上段からの一撃を叩き込む。
「それはもう見飽きたよ。」
右手一本でデベルの一撃を止めた。
「なぁ!?―――」
デベルの顔が驚愕の色が広がった。
「どうして君達はそんなワンパターンな攻撃しかできないのかね」
そのまま剣ごと倉庫の反対側の壁まで投げつけられ、壁にめり込む。
「ッ!?炎槍―――」
オルメナは炎槍を放った。しかし、炎槍が当たる寸前にべリアルが視界から消えた。
「そんな!?どこに―――」
「この程度の実力で元Aランク冒険者とは底がしれるねぇ。」
後ろから声がし、震えながらオルメナは恐る恐る振り返った。
拍手でもするかのように、両手を顔の横で構えていた。
「あっ。たすけ―――」
一瞬、手を伸ばし、デベルに助けを求めるような恐怖に支配された悲痛な顔で助けを求める声は最後まで届くことはなく、パァーン―――拍手するかのように両手を閉じると、オルメナの顔は潰れて飛び散った。
「あああぁぁぁぁぁぁぁ―――貴様ぁぁぁぁぁ!!」
デベル中でなにかが切れた。
オルメナを殺されたことに怒り狂い、剣を構えていた駆け出した。
「我が肉体を強靭にしたまえぇぇ、筋力強化ぁぁ!」
二重効果で体は加速する。
「まだぁぁぁだぁぁぁっ。我が肉体を強靭にしたまえぇぇ、筋力強化ぁぁぁ!!」
三重強化で更に加速する。体が軋みだす
「まだまだぁぁぁぁぁぁぁぁっ。我が肉体を強靭にしたまえぇぇ、筋力強化ぁぁぁぁぁ」
四重強化でまた更に加速する。肉が裂け、骨は砕け、体の至るところからちが吹き出しす。肉体が壊れて始めていくの感じる。
まともに振れるのは、ただ一刀。
だが、一刀あればデベルにとっては十分だった。
デベルにとってはオルメナはすべてだった。
幼なじみで、よく一緒に遊んだ。15歳になって、村を出て共に冒険者となった。
あの頃は常に一緒にいた。初めて行った薬草採取クエスト。共に戦った、ウルフの群。初めてダンジョンに潜り、足を負傷したオルメナを背負って出口まで走ったこと。Cランクに上がった頃から、〝剛力〟と〝炎者〟と呼ばれるようになり、ギルドで名を馳せるようになった。そうしてAランクになった一年ほど経った頃に、オルメナに婚約を申込み、晴れて結婚したのだ。
子供が出来た、女の子だ。オルメナと話し合い、育児のために冒険者を引退した。その後、順風満帆に暮らしていた。
そんなある日、冒険者をギルドのギルド長に昔のよしみで奴隷商会の護衛を一晩だけやって欲しいと頼まれ、断り切れずに受けてしまった。
その結果がこれである。
(この一刀を振れば、恐らくこの体は二度と剣を振れぬ体になるだろうな。だが―――そんなもの惜しくなどない!!)
左足を踏み込む。床がバゴンッ―――と音立てて、陥没する。千切れる程に体を捻る。
(例えこの一撃で命を落とそうとも!!オルメナを殺したこの男だけは―――)
捻った体を戻し初める。腕、脇腹、腰、足の筋肉が衝撃に耐えられずブチブチと切れ、出血する。無視して振る。
(絶対にここで殺す!!!)
放たれたその一刀は、デベルの生涯において最高にして、最速にして、最重にして、最も正確な一撃だった。
その速度はほんの瞬間的であるが音すらも置き去りにした世界に到達していた。
「―――何!?」
べリアルの顔に驚愕の色が広がった。辛うじて見えていたが、その一撃を回避するほどの反射神経は弱体化した今のべリアルにはなかった。
(はっ。ざまあみやがれ―――)
べリアルの驚愕の表情を見て、デベルはほくそ笑んだ。
「うおぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
首筋の吸い込まれるに、大剣の刃がめり込み、意図も容易くべリアルの首を切り飛ばした。
バギィィィィン―――べリアルの首を切ると同時に、けたたましい音がして大剣が砕け散った。
デベルはそのまま勢いで地面に激突して、体が5回ほどバウンドして、地面を転がり、仰向けになった。
「ごふッ―――がひゅー、がひゅーひゅー。」
血を大量に吐き出した。体は血塗れで、両手足は変な方に曲がっていた。
(肺に肋骨が刺さって・・・うまく息が出来ない・・・)
もうこの体はそう長くは持たないだろう。デベルは間違いなくここで死ぬ。
しかし、不思議と恐怖はなかった。しかし、後悔は残っていた。
(あぁ・・・すまない。親父、お袋。俺は親より早く死んじまう親不孝もんだ。それと・・・クオンすまないな・・・お前の成人した姿も結婚する姿も・・・見届ける事ができない不甲斐ない両親で・・・で親父で本当にごめんな・・・村のみんな・・・ギルドのみんな・・・本当にすまない。)
そして静かに目を閉じた。
(俺は先に行ってオルメナと一緒に待ってるからな―――)
「いやはや。見事な一撃だだったよ。」
もう聞くことがないと思った背筋が凍るような不快な声が耳に届き、デベルは目を見開いた。
そこには、首のないべリアルの体だけが目の前にいた。
「しかし、人間の可能性の力とは、本当に目を見張るものがあるねぇ。ほんの一瞬であっても神に近い存在を切ることができるとはねぇ。べルフェゴールが人間に興味を持つ訳だ。」
しかしよく見ると首のない体が喋っているのではなく、飛ばされた首がこちらを見て喋っていた。
「はっ―――はんへッ・・・」
デベルの顔は恐怖と絶望で死の間際にも関わらず、全身の血の気が引いた。
「しかし、私が首を飛ばされた程度で死ぬと思っていたのかね?」
そう言うと、デベルの顔を掴み持ち上げた。
転がっていた首がまるで逆再生するかのように浮き上がり元の首の位置に収まり一瞬で傷が再生した。
「――――――あぁ・・・ああ。」
その一瞬でデベルは理解してしまった。
自分は一体何と戦ったていたのかを。
神に近い存在、そう言われも間違いじゃないだろうとそう感じてしまった。
口元を歪め、取り込まれそうなどす黒い瞳で笑うその表情は、どうしょうもなく化け物そのものであった。
そう、生物的本能として感じてしまったのだ。こんなものに人間が勝てる訳がないと。
「はッ・・・はけ・・・もほぉ―――」
目から涙を流し、歯をガチガチと震えさせ、最後の言葉を放った。
「化け物ねぇ。最高の褒め言葉をありがとう。」
グシャ―――デベルの頭部がトマトみたいに潰れてこと切れた。
「さぁ。選択の時間だ」
奴隷の檻が立ち並ぶ方に向き直り、指を鳴らすと、檻の鉄格子が一斉に砕け散った。
「出たまえ。諸君。」
そう促すと達の奴隷たちが歓喜の声を上げた。
「やっ、やった。助けが来てくれたんだ。」
「これで家に帰れるぞぉぉ!!」
「ママ・・・パパ・・・」
「良かった・・・一時はどうなることかと・・・」
檻から解放された奴隷達は抱き合ったり、涙を流したり、神に祈りを捧げながら、喜びを分かち合った。
「あ、あの・・・助けて頂き本当にありがとうございました。」
「ました。」
べリアルの元に若い獣人の母親と幼い娘を連れた親子がべリアルの側に来て深々と頭を下げる。それに習って、娘も頭を下げた。
「君達は何か勘違いしているのではないかね?」
「え?」
母親の獣人が目を丸くした。
「私は選択の時間だと言ったはずだが?」
「え、選択?何の?」
「国に帰るかどうか。とか?」
「こっから出る以外の選択肢ってあるのか?」
獣人達に動揺が広がる。
「君達には二つの選択肢がある。私の元に来て忠実なる駒として働くか。従わずにここで死ぬか。」
「お、おい!!助けに来たんじゃないのかよ!!」
「な、なんだよそれ、奴隷になるか死ぬかしか選択肢にねーじゃねーか。」
「俺たちを外に出しやがれ。」
べリアルの提示した選択肢に、奴隷達は反発した。
「従わなくてもいいけどねぇ―――」
そう言って、指を鳴らすと、こっそり逃げようとしていた、従業員8人の首が同時に吹き飛んだ。
「こうなりたくないだろう?」
奴隷達は悲鳴を上げたり、その場にしゃがみこんだり、泣き出したりし始めた。
「ひぃぃぃ―――」
べリアルの一番近くにいた、母親の獣人は娘を抱き抱えしゃがみこんだ。
「さぁ。どうするかねぇ。」
奴隷達は従業員を殺したことに恐怖しているのではなく、先程放たれた魔術の炎を背に全身血塗れで両手を広げて、口元を歪めて狂気に満ちた笑みを浮かべている人ではない存在に恐怖していた。
その姿は、悪魔など通り越して邪悪と狂気そのものであった。
明日は大丈夫だと思います。多分・・・
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可能な限り返そうと思います。