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隠し事なんて

石垣島も年末が近づいてくると少しずつ慌しくなってくるみたい。

12月になると街中では東京ほどじゃないけどクリスマスソングが聞こえるようになるんだけどね。

これが、嫌になるほど似合わないって言うか場違いな感じが否めないんだよね。

だって、晴れたらTシャツで十分なんだよ。

少し動いただけで汗をかくし。

それと驚いた事があるの。

それはね石垣島と言うより八重山には色々なお祭りがあって全部を見ようと思うと大変なんだけど、パパが言う所の秋には『とぅばらーま大会』って言う無形文化遺産にも指定されている謡の大きなお祭りや、600年の伝統があって10日間近く行われる竹富島で最大の『種子取祭』って言う重要無形民族文化財に指定されているお祭りがあるの。

そのどちらもパパに聞いたら見た事が無いって言うんだよ、20年も石垣島に住んでいるのに信じられないでしょ。

でね、少し問い詰めたら『祭りを全部見ようと思ったらどれだけ休みを取れば良いんだ? それに俺の都合ばかりで休みを取るわけにもいかないし、偶々機会が無かっただけで興味が無い訳じゃないって』って言われて。

そうかもって思うけどさ。

そうしたら事細かく『とぅばらーま』と『種子取祭』の説明をしてくれたの。

『とぅばらーま』は八重山で一番愛され続けている民謡の中でも最高峰の叙情歌なんだって。

でね、大会では歌詞部門と歌唱部門に分かれていて歌詞は事前に審査があって歌唱部門がメインで大会が行われて出場者は10代から60代と年代の幅が広くって、予備審査を受けた人が歌唱力を競い合うんだって。

『種子取祭』は10日間も行われるお祭りなんだけど7・8日目が最大のイベントになってて、奉納芸能と世乞いが行なわれるんだって。

奉納芸能が終わると世乞い(ユークイ)が行なわれて、島の司を先頭に道唄と呼ばれる豊作を祈る唄を唄いながら、家を訪れて庭先で踊り家の中でまた唄って神聖な行事にもかかわらず観光客・見物人も一緒に唄って踊らせてもらえるんだって。

それが朝方まで竹富中の家々を回るんだって。

本当にパパは何でも知っているし即答してくれるんだけど、そんなパパでも見た事が無い物の方が多いって言うんだよ信じられないでしょ。


それとカクテルコンペは凄く楽しかったし面白いというか凄いの一言なんだけど、パパには全く自覚が無いというか自分の事をなにも判ってないの。

だって、パパは髪の毛をバシって決めると凄く格好良いんだよ。

それに眼鏡なんか掛けられたら私だってドキッってしちゃうんだから。

美味しい料理やカクテルが作れて優しくって、娘の私が言うのもなんなんだけど結構いけてると思うの。

それに周りにはあんなに女の人がいっぱい居てさ、なんとも思わないのかなって言うかニブ過ぎだよね。

それともあんまり考えたくないけど女の人に興味が無いとか。

「そんな事は無いと思うけど。今まで付き合ってきた彼女の事は聞いた事があるし写真を見せてもらったんでしょ」

「そうだけどさ」

実は今日はクリスマスパーティーの準備で瑞穂さんトコの『マッドティーパーティー』に来ていて、瑞穂さんに話を聞いてもらってたんだ。

瑞穂さんは絶対にパパのそう言うことを知っていると思うんだけど絶対に教えてくれないの。

理由は判らないんだけど私がいるからかなぁなんて考えちゃったりするんだ。

だって、私はパパと呼んでいるしパパも娘だって皆に紹介してくれるけど血が繋がっているかって言えばそれはノーに近いんだし。

彼女が欲しいんだったら私なんか邪魔なだけだと思うんだ。

本当にもう再婚する気無いのかなぁ。

「その服が岡谷からの少し早いクリスマスプレゼントなんでしょ」

「ええ、何で判ったの? 瑞穂さん」

「凄くご機嫌だし、ずっと気にしてるのが見えみえだよ」

「えへへ、これだけじゃなくて安いからって他にもいっぱい買ってもらちゃったんだ」

今日の格好はAラインの青と白のボーダーの可愛らしいニットワンピにレギンスみたいなスキニージーンズにこげ茶色のショートタイプのフリンジブーツなんだ。

これ以外にもね、胸元に可愛いリボンとレースが着いてるグリーンの綺麗なペイズリー柄のシフォンワンピとか、ゆるかわワンピやスカートなんかも買ってもらったの。

でも、東京では絶対に着なかった洋服が多いかも。

「いつも以上に嬉しそうだもんね、美緒ちゃんの洋服って自分で選んだの?」

「うんと、パパがネットでこれはどうだって候補を挙げてから私がチョイスかな」

「うわぁ、あいつが女の子の洋服を選んでる姿なんて気色悪くって想像できないぞ」

「ええ、でもパパって可愛らしい革製品とかたくさん持ってるじゃん」

「そうか、そう言うところを考慮するとセンスは良いほうかも」

「それじゃ、岡谷には何をあげるの?」

「う~ん、中々難しくって。東京の友達に頼んであるんだ。それは見てのお楽しみだよ」

「そうか、美緒ちゃんからなら何でも喜ぶと思うな」

準備が大体整った所で泉美となっちゃんと朋ちゃんがお店に来てクリスマスパーティーが始まったの。

クリスマスって言うけど外は涼しい位で雪なんて絶対に降らないし、パーティーも私の誕生日パーティーとそんなに変らないんだけどね。

今回はパパに頼んでケーキを作ってもらったの。

私も秋香さんや茉冬さんみたいにパパにこんなケーキが良いってお願いしちゃった。

私のリクエストは大人って感じのケーキなんだ。

それでパパが作ってくれたのはラズベリームースのチョコレートケーキなの。

ココア生地のスポンジに甘酸っぱいラズベリームースがサンドされててビターチョコレートでコーティングされてるんだよ。

それと定番のブッシュドノエルでね、バニラビーンズが使われてて甘くって蕩けそうなんだ。

それと、瑞穂さんが一ヶ月前に準備してくれたイタリアでクリスマスと言えばパネトーネなんだけど、これもまた甘すぎないで絶品なんだよ。

凄く楽しくお喋りしてプレゼント交換は瑞穂さんも加わってくれてあっという間に時間が経っちゃって、楽しい時間って信じられないくらい早く過ぎちゃうんだよね。

泉美達を見送ってから私は片付けを手伝ってるの。

だって態々パーティーを開いて貰ったんだもん、少しはパパがお金を払ってると思うけど採算度外視してるんだと思うんだよね。

だから、せめてお手伝いはしないとね。

「美緒ちゃんはお正月はどうするの? 東京のお爺ちゃんやお婆ちゃんのトコに帰るの?」

「ううん、島に居るよ。東京はつまらないもん」

「そっか、そうだ美緒ちゃんは受験生なんだよね。どうするの?」

「高校には行くけど……」

瑞穂さんに即答できないのが悔しかった。

私は島の高校に行きたいけど、これだけはパパじゃなくってママに相談しないとね。

「三者面談もあったんでしょ。確か1月の末には願書も出さないといけないし」

「うん、先生はどこの高校にもいけるからって太鼓判を押してくれるんだけどね」

「そうか、問題はお母さんに委ねられてるんだ」

「うん」

「美緒ちゃんの希望が通るといいね。もう直ぐお正月か、岡谷の誕生日もあるしね」

「えっ! パパって1月生まれだったの?」

「あれ? 聞いてないの? 2日だよ」

「どうしよう……」

クリスマスパーティーやパパへのプレゼントを考えるだけで精一杯だったのに、知らなかったじゃなくて聞かなかった私の所為なんだろうけど、パパの誕生日がお正月の2日だったなんて信じられなかった。

だってあと1週間くらいしかないんだよ。

今からじゃ絶対にプレゼントなんて無理だもん。

いっその事……

私とママの事を……

そんな事が頭に中を過ぎると瑞穂さんの溜息が聞こえた。

「はぁ~ あのね美緒ちゃん。これだけは言っておくね、岡谷はそんな顔をした美緒ちゃんからのプレゼントなんて絶対に喜ばないよ。どんな事情があるにせよ秘密にしておかないといけない事を美緒ちゃんから聞かされてもショックなだけだよ」

「隠し事なんて何も……」

「女はミステリアスなものなの。秘密の1つや2つ持っていて当然なんだから、本当に愛すべき人の前じゃなければ丸裸になったら駄目よ」

「もう、今日の瑞穂さんはエッチ過ぎです。そんな瑞穂さんは丸裸になるくらい好きな人居るんですか?」

「うふふ、秘密。女はミステリアスの方が魅力が増すの」

時々、瑞穂さんには驚かされる。

それはまるで私とママの事情を知っているんじゃないかと思うの。

でも、それは有り得ない事のはず。

だってパパだって知っている筈無いんだもん。

それでも飛びっきりの爆弾が投下されてしまった。

パパの誕生日&お正月まであと1週間なんだよ、本当にどうしよう。

そんな事を考えてたけどお正月はそれこそ大変な大騒ぎになっちゃうの。



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