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第1章 12 異世界編

第1章 12 異世界編




[アンナ side]



なにか呪文のような声が聞こえた瞬間、後方で火柱が上がった。


私はあまりの轟音にしゃがみこんでしまった。


――なぜ魔術がこの先から放たれたの?


私達は盗賊に襲われて町から逃げてきたはずなのに、逃げた先にも盗賊がいたということだ。

しかも、町にいるはずの魔術師がいるという事は自分達は盗賊の罠にまんまと嵌ってしまったのだろう。

前方には魔術師、左右は木々に覆われて、後方は火柱で塞がっている。


私は今の状況に絶望して不安からお父さんにしがみ付いていた。


「ジャンさんとアンナは、ここで待っていてください」


エンドウさんは立ち上がると前方を睨みつけた。


「エンドウさん?」


私はエンドウさんが何を考えているのか分からなかった。

エンドウさんは私に微笑むと人ごみを掻き分けて前方に向けて駆け出した。


エンドウさんが人ごみの中に消えていくのを私はただ呆然と見ていることしか出来なかった。




私は冷静になるとエンドウさんが戦いに打って出た事に気づいた。


「エンドウさん!」


私は前方に向かって叫んだが気づいたときには遅かった。

エンドウさんの姿はどこにも見えなかった。


――あなたは死ぬ気ですか?


いくら、エンドウさんが強くても無茶だ。

今の状況で魔術師でない私達が勝てるはずがない。


――あなたはどうして助けてくれるのですか?


エンドウさんのあの身のこなしなら私達を見捨てれば助かるかもしれないのに・・・


――エンドウさんが頑張っているのに私達はこのまま待っていていいの?


エンドウさんについて行っても足手まといになるだけだろう・・・・


――それでも私は・・・・エンドウさんの力になりたい!


私は立ち上がると前方に向かって駆け出した。

背後でお父さんが私を呼ぶ声が聞こえた。



[side out]






俺はこの場にいる最後の一人を昏倒させるとその場にひざを着いた。

さすがにシルティの体も限界からか呼吸が乱れる。

その時


「ブラスト」


魔術弾が俺に向かって飛んできた。


『あの茂みに向かって走れ!』


俺はシロンの言葉を信じ、最後の力を振り絞って走り出した。




魔力弾と俺が衝突すると、目の前に魔方陣のような物がまるで守るかのように発生して魔力弾を消した。


ドラゴンは幻想種の中でも最強の存在であり鱗はどんな名剣・名槍でも弾き、ドラゴンのみが備えると言われている反魔術障壁アンチマジックシールドによってある程度の魔術は無効化されてしまう。

ゆえに、ドラゴンは最強の種族であると語られている。


シロンは反魔術障壁アンチマジックシールドでボスの魔術弾ブラストを防ぐ。


『杖を斬れば魔術は使えなくなる』


俺は茂みに隠れていたローブの男に近づくと黒刀で杖を斬った。

男は避けようとした拍子で尻餅をついた。

シロンの言葉が正しければ、これで魔術の心配はなくなったはずだ。

俺は目の前の男に向かって


「降参しろ」


と言って首元に黒刀を突きつけた。






すると目の前の男は笑っていた。

おかしい、気でもふれたかと思った次の瞬間


「エンドウさん、危ない!」


後ろから警告が聞こえて俺は即座に後方に飛んだ。




ヒュッヒュッ


という音が聞こえた。

どうやら弓で狙撃されたらしい。

俺は普段の体なら問題なく避けられたが疲労困憊のシルティの体では避けきれることができず左腕を掠ってしまい激痛が走った。


「ッ―――!」


『エンドウ殿!』


シロンの叫ぶ声が頭に響いた。


だが、掠っただけだ問題ない。


俺はすぐに体勢を立て直し、右手一本で黒刀を握ると魔術師に近づこうとした。




だが、俺は魔術師にたどり着く前に地面に倒れてしまう。

おかしい、疲労にしては体が熱くて指先一つ動かせない。


「俺様特注の麻痺毒だ。動こうとしても無駄だぞ〜」


魔術師は勝利の確信からか、笑いながら俺に近づいてきた。


「俺のブラストを防いだのは驚いたが詰めが甘い、甘い」


魔術師はしゃがみこむと俺の髪をつかんで顔を上げさせた。


「あの瞬間、お前は即座に首をはねて俺を殺すべきだった」


俺は近くで魔術師の顔を見た。

暗くてよく見えなかったが魔術師の顔には無数の切り傷があり片目は眼帯をしていた。


「だが、お前は目の前の敵に情けをかけた」


魔術師は腰からナイフを抜いた。


「その結果がこのざまだ」


ナイフの腹で俺の頬を挑発するようにペチペチと叩いた。


俺は怒りで頭が凍りつくように冴えてきた。

確かに俺のミスだろう。

あの時、止めを刺しておけば良かったのだろう。

だが・・・・


――俺は人斬りにはならないってあの日、誓ったんだ。






中学3年の夏、俺は幼い頃からやっていた円堂流剣術の鍛錬のおかげで同年代では敵がいないと言われるほど強かった。

剣道の試合に出場すれば、全国出場確実と言われてたほどだ。

その頃、俺はまわりからちやほやされていて天狗になってしまっていた。

長年の苦労が実を結び、周りに認められたことが単純に嬉しかったんだ。


そんな時、ある事件が発生した。

俺は、剣道の選抜合宿の帰りに地元のヤンキーに絡まれている女子達を見つけた。

絡まれている女子はうちの学校の後輩ということもあって、俺は怪我させないように助けようとした。

だが、ヤンキーの一言に思わず我を忘れてしまった。


「そっちの女の子もかわいいね。剣道なんかしてないで俺らと一緒に遊ぼうぜ〜」


俺が幼い頃からやっていた剣術の成果である剣道をなんか呼ばわりされた怒りから本気を出してしまった。(男なのに女に間違えられた屈辱よりもそちらの方がその頃は大きな割合を占めていた。)

その結果、相手は全治一ヶ月の大怪我。


さらに、俺はその年の剣道の大会には出場停止。

実質、中学3年最後の大会は出れずに終わった。



俺はさらに地元で「人斬り」というあだ名で有名になってしまった。



奇しくもその名は幼い頃に憧れたマンガの主人公の呼ばれ方と同じだった。

――こんなやりきれない思いをするんだったら剣道なんてするんじゃなかった。

剣術は剣道とは違うという父の言葉を訊かなかった俺はそれを契機に剣の道をあきらめた。




その後、高校でふたたび剣の腕を振るう機会がありそれから剣術の方は元の実力ぐらいまでの実力は取り戻したが、俺は普段の状態では本気を出せなくなってしまった。

その誓いを破るくらいなら死んだ方がマシだと思うほどに・・・・

しかし、その結果が借り物の体を傷つけてしまい。

さらには一人の女の子を危険にさらしてしまった。


「おらよっと」


後ろからそんな掛け声と共にアンナが俺の横に放り出された。


やはり、さっきの声はアンナだったのか。

アンナはネグリジェ姿で猫耳をさらけ出され恐怖からか、おびえた目で見つめている。


俺はアンナだけでも助けたいと思うが毒が回ってきて意識が朦朧としていて助けられる状態じゃない。


「ボス、この娘も捕まえやした」


弓を担いだマッチョが笑いながら出て来た。

どうやら、あの弓矢はマッチョが放ったものらしい。


魔術師は辺りを見回すと

周りには俺が昏倒させた盗賊達が呻いている。


「こんだけの被害がこの小娘一人に負わされたなんて堪ったもんじゃねーっな!」


そういうとナイフを振りかぶり俺に振り落とした。






ナイフは体は傷つけずに服だけを切り裂いた。

シルティの体は服が縦に切り裂かれ、前がはだけた状態で胸元がへそまで見えてしまっている。

マッチョと魔術師はいやらしい目つきになると次はスカートにナイフを引っ掛けえてきた。


俺はシロンに


『アンナを助けて逃げてくれ・・・・あと、シルティにすまないって謝っておいて』


と薄れる意識の中で呟いたが返事はなかった。

いつの間にか俺の髪には髪留めはなく、黒髪が下ろされていた。


俺は目線を上げるとそこにある姿を見て安心から意識を失ってしまった。






前回は円堂が無双状態でしたが、今回はボスの仕掛けてた二つ目の策によってピンチに陥ります。


だがしかし、終わりで気づいてるかもしれませんが次回で戦闘パートは終了です。


やっと異世界編の終わりが見えてきました。



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