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半妖グドンの選択  作者: すいかあたま
第四章 再びの渉不城
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203/203

203 セイイツの死

 ゴウイツは、突然やってきたセイイツを悲しみの籠った目で迎えた。

 息子がこれからやろうとしていることが何か、彼には大方の予想がついていたからだ。

「わたしの行っていた任務を、これからは父上が代わってやっていただきたい」

 それだけいうと、セイイツは鍵のようなものを彼に向って差し出した。

 ゴウイツは、拒否できぬものを感じ、仕方なく鍵を受け取った。

「これは、例の奴らから託された任務ということか?」

 セイイツが無言で頷く。

「わしが拒否すると言ったら?」

「それでもかまいません。倉庫に捕えた者たちを解放してやってください。迎えの者が来た際には、セイイツは死んだと言っていただければ結構です」

 ゴウイツは何か言いかけ、途中でそれを思い直したように口を噤んだ。

 彼が言いたかったのは、死んだことにするのか、それとも、本当に死ぬつもりなのか、ということだった。

 だが、訊くまでもないことのような気がしたのだ。

「あのこどもはどうした? 倉庫の中の一員になったのか? それともドミアールの餌食になったのか?」

「ドミアールはもういません。こどもと仙族の少女は倉庫の中です」

「あの二人が特別だと思っているのか?」

「わかりません。まあ、少女のほうは特に何の力もないようです。しかし、一緒でないと、あのこどもが癇癪を起すでしょう」

 ゴウイツが苦笑しつつも頷く。

「最後に一つだけ訊くが、セイイツ、おまえの行動は矛盾しているとは思わないか? わしを自殺させないためにここに閉じ込めておきながら、今、おまえが自らやろうとしていることは完全に矛盾していると」

「父上とわたしは違います」

「どう違う?」

 セイイツはちらりとゴウイツを見た。ゴウイツは、その目の奥に絶望を見た気がした。一時の感情ではなく、本物の絶望を。

「父上は息子を殺しましたか? 母上を自分の手で殺そうとしましたか?」

 ゴウイツは深く溜息を漏らし、これ以上何を言おうと説得するのは無理だと悟った。

「任務のことはわしが何とかする。元々こんなことをするのは反対だが、どうするかは、これからゆっくり考えて決める。まだその時間は十分にあるだろう」

 セイイツは頷くと、最後に小さく微笑んだ。

「さようなら、父上」

「親不孝な奴だ」

 さすがに何か酸っぱいものが込み上げたゴウイツは、それを誤魔化すように笑って見せた。

「とはいえ、どうせ、時間の問題だ。わたしもすぐにそちらの世界へ行くことになる」

「待っています。母上と一緒に」

「冗談をいうな。あいつは…」

 言いかけたゴウイツだったが、最後まで言い切ることは出来なかった。目の前から、セイイツの姿が消えたからだ。

 再び、ゴウイツが大きく溜息をつく。

 しばらく、無言で何かを感じとろうとしていた彼は、突如、この世からセイイツの生命反応が消えたのがわかった。

 これほど簡単なことなのか…。

 英雄と呼ばれた男がこの世から消えるのは、これほど造作もなく呆気ないことなのか?

 彼の脳裏を、まだこどもだったころのセイイツの姿が駆け巡った。

 わしはどこかでこどもの育て方を間違ったのか? それともこれが運命だったのか?

 だが、今さら何を考えても無駄なことはわかっていた。

 それに、セイイツにも言ったように、自分があの世と呼ばれる世界へいくのも、それほど先のことではない。過去にどんな間違いを犯したのせよ、セイイツは許してくれるはずだ。

 ゴウイツは振り向くと、別天袋を収容した。背後に広がっていた世界が瞬時に消えてなくなり、ただの岩肌に変化する。それと同時に四か所に繋がっていたあの扉も消えた。扉ごと、ゴウイツが収容したからだ。

 次の瞬間、ゴウイツの姿が鍾乳洞からパッと消え去った。



                 半妖グドンの選択   おわり

最後まで読んでくださってありがとうございました。心より感謝いたします。

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