表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
karate girl  作者: 小田 ヒロ
6/6

 匠による、私と玲司の交際宣言は、速やかに道場の連絡網で流された。迎えにきた古株のお父さん方はみんな玲司とハイタッチしていた。。。


 家に帰るとお母さんは『でかした!』、お兄ちゃんは『玲司の物好きも治らなかったか』と言い、お父さんは寂しそうにネコのミーを撫でていた。夕ご飯はお赤飯だった。好きだからいいけどね。玲司のお母さんからもサムズアップしたスタンプがうちのお母さんに送られてきた。包囲された。ケンカもできん。


 そして小学校最後の地区大会は…………優秀な監督のお陰で優勝した!何故か〈組手〉で。

 渚ちゃんが『約束にこだわらなくなって、肩の力抜けたんじゃない?それに〈組手〉はセコンドの力大きいよ。対戦相手の前の試合分析しててくれるからね。』と言ってくれた。玲司もエントリー始めたら監督業は不可能だけど、県大会までは面倒見てくれるって。


 そして私達は中学に入学した。玲司と真希ちゃんは同じクラス。私だけ離れた。私が下校しようと真希ちゃんを廊下で待ってたら、扉がガラっと開き、二人仲良く出てきた。靴箱まで3人で歩く。


「玲司、部活、剣道部にしたってホント?空手に剣道って将来警察でも狙ってるの?」

「警察狙ってるのは渚ちゃんだろ。剣道部、中体連以外は空手と試合が被らないって聞いたから。」


 私は結局帰宅部にした。才能はないけど、玲司やみんなの力を借りて、もう少し空手にしがみつこうと思った。そして勉強も頑張らないと。勉強くらいは玲司に勝ちたい!


「彩佳、学力テスト3位だったね!やる気マンマンじゃん。匠くんの中学の高校行くためでしょう?」

「真希ちゃん、1位の人に言われたくないよ。」

「マジか………匠の高校狙いなのかよ。11位じゃ無理じゃん。俺、部活しながら行けるのか?」

「真希ちゃんは部活決めたの?」

「ふふふ、じゃーーん!見て見て!」


 真希ちゃんがサブバッグから取り出した紙には〈料理研究会〉〈会員募集なう〉とカワイイお鍋のイラストとともに書かれていた。


「入りたい部活なかったから、作ってみましたー!」

「……………」

「……………」

「私、部長、彩佳副部長 ね。活動日は月、水だけだから大丈夫!」

「待て待て待て待て、そんな簡単な話じゃないはず。いくら何でも先生の許可なんて降りないでしょ?」

「ねえ、何のために私が1位取ったと思ってんの。発言力付けるためじゃん。家庭科の先生に男女共同参画社会と食育絡めてプレゼンしたら、前向きに検討してくれるって。先生のいるときだったら調理室使っていいって許可取れた!」


「……………彩佳、真希ちゃんって、エネルギー使う方向ずれてるね………残念な感じ………」

「はあ?一番恩恵を受けるの玲司くんだよ!?週に2日も彩佳のスイーツ食べれるんだよ!」

「なるほど。」

「なるほどじゃなーい!私に作らせること有りきじゃん!」

「「まあまあまあまあ」」

「二人とも打ち解けすぎだから!スイーツの多数決取るなあ!うわーんーー!」


 私は走って校門を駆け抜けた。絶対抜け出せない罠に既にひっかかってることに気づいてたけど。





 集合時間にはまだ早い時間、私が一人道場でストレッチしてたら、玲司が入ってきた。神棚に参拝して私の隣に来る。部活のあとすぐ空手とか男子の体力はバケモノだ。

「夕ご飯食べた?」

「まだ。腹減った。」

「はい。熱いうちに食べて。」

 私はさっき揚げたドーナツを渡す。玲司は目を輝かせて取り出しかぶりつく。

「………なんとか研究会の練習?」

「なんとか研究会はギリギリまでゴネてみせます!単純に玲司が好きだからだよ。」

「俺が……好き?」

 玲司が急に赤くなる。疲れかな?

「ドーナツ好きだったよね?」

「あー……うん好き、マジ大好き。ありがとう。」

 玲司は急に身を乗り出して………1秒、私にキスをした………私のファーストキスはグラニュー糖の甘い味。

「なっ………」

「美味しい。ご馳走さま。」

 玲司がニヤリと笑ってペロっと手についた砂糖を舐めた。



「うわーーー!あやかちゃんとれーじがチューしてたーー!」

 はい、ここ道場でした〜!チビッコの甲高い声が響き渡る。


 また、これで今日も私はオモチャだ。冷やかされ倒して稽古にならない。連絡網も速やかに回る。私はチビを追いかけまわす玲司の背中に助走をつけて飛び蹴りをした。しかしヒラリとかわされた。


「彩佳!ふざけんな!県大会前に怪我したらどーすんだ。」

「だ、だって、玲司が!」

 私は恥ずかしくて恥ずかしくて涙目だ。玲司が初めてオロオロする。


「ゴメン、調子にのって。また、ドーナツ作ってくれる?」

「…………何キロ?」

「だから正解は何キロなんだ?」



 ドーナツの正解は2キロ!目の前で食べさせる!玲司のウエイト一気に増やして、鈍くなったトコの胃袋に中段ぶち込んでやる!!!


「よし、そろそろアップしようぜ。」

「らじゃ!」

 一緒なら、頑張れる。空手も勉強も。

 私は玲司の合図で走り出した。







おしまい。

読んでくださった皆様、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ