新しい居場所
「ここがオスカー様のお家ですか。あの・・・本当にいいんですか?」
─オスカー様は食料を恵んで頂いただけでなく一緒に住んでいいとまで
言ってくれた。
雨露を凌げるだけでもありがたいのにベッドまで用意してくれた。
何故こんなに見ず知らずの私達に優しくしてくれるのだろう?
ありがたいと思う一方で早くこの人のお役に立てるようにならないと
また捨てられるかもしれないと言う恐怖が付きまとう。
だと言うのに私は翌日ベッドから起き上がれないでいた。
オスカー様が言うには連日の疲労と栄養失調によるものだと教えてくれた。
彼はしばらく安静にしていなさいと言って下さったが、
私は気が気じゃなかった。
こんなお荷物二人いつ追い出されてもおかしくない。
動かない体を恨めしく思いながらベットで悶々としていたのだが・・・。
「川魚をほぐしたお粥だ。熱いから気を付けてお食べ」
「あ・・・ありがとうございます」
そんな私の心配とは裏腹に彼は献身的なまでに私達を看病してくれた。
きっと日の出から陽が落ちるまで食糧を得るために奔走したのだろう。
いつもちょっと疲れた顔をした彼を見るのが心苦しかった。
それから三日ほど経ってからようやく私は普通に歩けるまでに回復した。
リーシアに至っては元気に走り回っている。
「お姉ちゃん立てるようになったんだね。もうお体は大丈夫なの?」
「ええ、もう大丈夫よ。オスカー様のお陰ね。リーシアもお礼言った?」
「うん!ありがとーって言ったよ!」
「マーガレット、起き上がれたのはいいがまだ無理はするんじゃないぞ」
「いえそんな訳には参りません!オスカー様、何か私に出来ることは
ありませんか?何か手伝わせてください!」
最初は駄目だと断られたけれど、私が何度もお願いするうちに彼も折れ
川魚を採る罠を仕掛けてあるからその回収を頼まれた。
教えられた小川に行って見ると、川沿いに大きな石で囲ってある筒状の
罠があったので引き上げてみると、私の両の手のひらくらいもある
川魚が5匹も入っていた。
「すごい!!」と思わず声がでた。
大地が穢れてから動物たちが激減していると聞いていたのに・・・。
ここは特に自然に恵まれているのか、この漁具がすごいんだろうか?
「オスカー様、川魚獲って参りました!今日は5匹も罠に掛かってましたよ。
すごいですねあの罠、あんな漁具見た事もありません!」
「ああ、あれは”ずうけ”というんだ。ところで様付で呼ぶのはいい加減
やめてくれ」
大喜びでオスカー様に報告したら、彼は照れくさそうにそう言った。
やめてくれと言われても命の恩人なのだから、そういう訳にもいかない。
はにかんだ彼の笑顔に少しドキドキしてしまったのは内緒。
それにしても驚いたのは、オスカー様が農業を諦めていなかった事だ。
あの戦争のせいで大地が穢れ、作物は育たないと言うのが世界中で
常識になっていると聞いていたのに彼の答えは・・・。
「マーガレット、それでも俺は諦めたくないんだ。穀物を何でもいいから
育てないと安定した食は得られない。だからここ何年も勉強してきたんだ。
この過酷な環境でも諦めなければきっと実りは訪れると思っている」
「そう・・・なんですね。わかりました!何かお手伝いできることは
ありませんか?微力かもしれませんがオスカー様のお力になりたいんです!」
と言われ思わずそう言葉が口から出てしまった。
だからたとえ失敗したとしても私は彼を全力でお支えしようと思う。
不思議と彼なら不可能も可能にしてしまうのではないか?と
思わせる独特の雰囲気があったのだ。
「ねえお姉ちゃん、オスカー様ってとっても良い人だね」
「そうね」
「それにおさかながすっごく美味しいし、パパもママもここに住んだら
いいのにな~。きっと楽しいよ!」
「・・・・・・・」
確かにここは私達が住んでいた場所と違って略奪や強盗もない。
人が周りに住んでいない事もあるが治安がいいというのは何物にも代えがたい。
とはいえ食料の調達が難しいのはそれほど変わらない。
人が増えればそれだけ色々な問題も起こってしまうだろう。
だから勝手に移り住んではきっとオスカー様に迷惑が掛かってしまう。
それだけは絶対に避けなければ・・・・。
ただ幼いリーシアにとっては親と離れて暮らすのは辛いだろうな。
寂しさからか夜中にぐずって泣き出すのはもう毎日だ。
その度にオスカー様に迷惑の掛からないように口を覆って外に連れ出し
泣き止むまで抱っこして歩いた。
正直私だって泣いてしまいたい。父さん母さんが恋しいのは私も一緒だ。
でも強くあらねば。
この子が大きくなって自立できるようになるまで私が守らないと。
もしオスカー様に捨てられたらと思うとぞっとする。
もうモンスターの徘徊する森を彷徨うのは嫌だ。
嫌だ。いやだ。嫌だ。
いざとなったら私の身体を彼に売ってでも置いてもらう覚悟はある。
オスカー様に限ってそんな事を許すような人ではないと思いたいけど
私は前の街で優しかった人が急に豹変する姿を何度も見て来た。
信じたいけど甘えた考えは持たないようにしないと・・・・。
それまでは自分に出来ることを毎日精一杯やろう。。。




