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前世の思い出

「ようし、こんなものだろう。あとは芽が出るまで待つだけだ」



生成してもらった何百個もの種芋をマーガレット達の手を借り陽の当たる場所に

ズラリと並べて貰った。

種芋を手に入れたからといってすぐに土に埋められるわけではない。

しばらく陽の光を浴びさせて芽が出てくるのを待つ『芽出し』という工程がある。


別にそのまま土に入れても育たない事もないが、この『芽出し』をすると

芽が太く丈夫になるので病気を防ぐ効果もあるのだ。

その他にも色々な理由があるが、春先だと地温が低いので芽出しをせずに

植えると収穫までに時間が掛ってしまう。

今は何より食料の確保が最優先なので大事な工程だ。


さて、今日出来る畑作業は一旦ここまでだ。

やるべきことはたくさんあるが、今日は川で水浴びをすると決めていた。

マーガレットにリーシア、あの二人はずっと山の中を彷徨っていただけ

あって正直少し臭う。もちろん直接指摘したりはしないが。

あまり不潔にしていると皮膚病やしらみの原因になったりもするだろう。


「マーガレット、今日は罠の回収のついでに皆で水浴びしに行こう」

「!いいんですか?正直体が痒かったのでずっと体を洗いたかったんです」


「ごめんな。すぐに行けなくて。食料の確保が最優先だったんだ」

「はい、わかっていますのでお気になさらず。リーシアを呼んできますね」


水浴びと言ってもこの時期の川はまだまだ凍える程に冷たい。

焚き火用の火打石と大きな鍋を持っていこう。それと大きなタオルだな。

ついでに服も洗ってしまいたい。まあそんなたいした量じゃないので

そこは二人に協力してもらうとしよう。


──小川に着くとさっそく俺は焚き火用の大きな石を集めて設置していく。

その間マーガレット達には枯れ枝と枯れ草を集めて貰った。

カンカンっと火打石を打ち鳴らし火を着け水を張った大鍋を火にかける。


「よし、じゃあ水が温まったらタオルで体を拭いてくれ。火傷をしないように

火は調節するんだぞ」

「え?オスカー様は?」

「俺は二人が済んだ後にする。それまでは近くで釣りをしてくるから何か大声で

呼んでくれ。大丈夫とは思うが危険な動物が出ないとは言えないからな」


そう告げてから俺は釣り道具を持って少し上流に向かって歩き出す。

流石に女の子二人が体を拭いているのに一緒にいるほど野暮ではない。

何故かマーガレットが少し残念そうな顔をしていたのは気のせいだろう。


それから山道を歩き良さそうなポイントが見つかったので足を止め

フライフィッシング用の釣り竿を取り出す。

魚の潜んでいそうな対岸の岩陰に向かってヒュンヒュンと弧を描きながら

疑似餌を水面すれすれに飛ばす。


釣りは好きだ。

前世では日々の農作業や家畜の世話に追われ中々出来なかったが、

野鳥たちの鳴き声と川のせせらぎを聞きながらする釣りは自分が自然の

一部になったような感覚がして心地が良い。


若い頃は良く婆さんを誘って一緒に釣りに来たもんだ。

都会育ちだった婆さんは山ん中での釣りだと言うのに最初麦わら帽子に白い

ワンピースで来て頭を抱えたもんだ。

でもすごく似合ってて・・・ちょっと見惚れてしまったんだよなぁ。


婆さんは・・・・"儂"が死んだあとも元気にしているだろうか?

あまり態度には出さないが、あいつは寂しがり屋だったからなぁ。

今儂がこんな異世界で生活をしているって知ったら婆さんは何て言う

じゃろうか?・・・・・久しぶりに婆さんの顔を見たいな。。

"こっち"に来てからというもの前世の生活のことなんて考えている余裕も

ほとんど無かったが、こういう静かな時間があるとやはり思い出してしまう。

ホームシックなんて歳でもないんだが。。


それから1時間ほどして3匹ほど釣り上げた所で二人の所に戻る事にした。

戻ると二人とも水浴び・・・・というかまあ体を拭いただけなのだが

それでも見違えるような変化だった。


マーガレットはベトついていた髪がすっかりサラサラ・・・とまではいかないが

綺麗な金髪が際立っていて前よりずっと美人に見える。

土まみれだった肌や服もすっかり綺麗になって見違えてしまった。

リーシアもくせっ毛の赤髪はふわふわになっている。


「オスカー様お待たせしました。こちらはもう終わりましたのでオスカー様も

どうぞ。鍋の水も入れ替えておいたのですぐ使えますよ」

「お、ありがとうな。じゃあ俺も身体を拭くとしようか。悪いがその間山菜でも

採って来てもらえるか?魚は三匹釣って来た」


「ありがとうございます!今日はご馳走ですね!」


しかし驚いたな。マーガレットは身なりを整えたらかなり美人じゃないか。

俺が前世の記憶が無かったらきっと一目ぼれしていたかもだ。

リーシアもきっと将来かなり美人になるんじゃないか?

世が世ならきっと引く手数多だったろうに・・・。


いつかは俺も結婚する日が来るのだろうか・・・?

いやでも今はそんな事を考えるよりもまず生き抜くことが大切だな。

じゃがいもはこの痩せた大地でも強い作物だ。

必ずこの厳しい食糧事情を打開してくれる足掛かりになる。

そう決意を新たにしてから皆で狭い我が家に帰った。

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