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アイ・ラブ・カワサキ ラストライブ ー異様な暴れ馬のような熱量に溢れたー

 全ての国民は、日本人でも「見えない」人がいるし、その数は半々ほどである、という事実を認識していながら誰も彼もが面白がり、あるいは激しく憤り、現総理大臣の「だから」を日常会話の中に持ち込んだ。ただでさえ面倒なことの多い日々を更にひっかきまわすのだった。

 子供たちは学校や進学塾の教室で日本人の頭数を半分にし、職員室でも似たような陰口が、もちろん冗談だったにしろ囁かれた。オフィスでも店舗でも、果ては霞が関、いや官邸から駅前の交番までもが日本人を半分としたし、病院ではドクター、看護師、職員、待合室で受診を待つ患者同士も。つまらない冗談を言う昭和の父親か、陰謀論に憑りつかれた家族のいる家庭では取り返しのつかないほど分断されてしまい、ついにはマッチングアプリにおいても「見える」「見えない」は用いられた・・・・・・しかしそれにしても驚かせてくれたのは、いわゆるリベラルと言われる側を自認する者たちの、やはり一部の輩が「見える」のに「見えない」と言い出していたことだろう。たとえば学校の教室で生き延びるためであったり、営業先で重要なプレゼンテーションが控えていたり、もしくは狙っているキャバ嬢かホストと話を合わせなければならない場面であれば「見えようが」「見えまいが」それが本当でも嘘でも二の次だろう。しかし倒閣を掲げ執筆した本を売り込む手段として「私には見えない。なぜなら私も日本人だからだ!!」と、新たな帯を巻き直すに至るまでの編集会議の音声がリークされた著名人の場合は違った。「自分には見えないって言い張れば、なんも問題ないっしょ」と、次の選挙に出馬するだろう、と言われている著者の社会学者は高笑いしていた。もちろん大変な大火となり、辛口コメンテーターとして各情報番組に出演していた彼は社会的抹消の危機が訪れた。しかし、それでも印税に関してはいなくなった馬が雌馬を連れ戻ってはきた。税金の使い方を痛烈かつユーモアに糾弾する「一億総国民金の成る木計画」の売り上げが爆笑と落胆の果てに伸びに伸びたのだった・・・・・・そのような折に赤い浮遊体は川崎の空に現れたのだった・・・・・・。



 今年も京浜工業地帯に近い繁華街で行われた国内最大級の仮装パレードが無事終わると、駅周りで働く者や駅を利用する人々は多かれ少なかれ喪失感を覚えた。すると各店舗のディスプレーやランチ限定メニュー、路面に面するショーウインドーの中にしかなかった秋の深まりは祭後の人々の空白に届くもので、街全体がこの季節らしい郷愁にシフトしたのもつかの間、11月の某日川崎駅東口は先月末とまるで違う、異様な暴れ馬のような熱量に溢れた・・・・・・。


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