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本好き勇者のお店屋さん〜クソ雑魚勇者の辺境店舗  作者: 夏飼 今日輸
2章 2冊目 獣人の魔法使いと時の止まったお姫様
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36ページめ

お前、書けよ。(自分を殴りながら)

 やらかした………………。本当にやらかした。やる気なんて一切なかったのに。


「いやぁ~、ありがとう。では、付いて来て欲しい」


「え、ちょ──」


 え?待って縄解いてくれないのおかしいってなんか持ち上げられたうわぁ離してくれぇいやちょっと待って足音2人分聞こえるんだけどまさかもう1人いるのねぇなんもわかんない怖い怖い怖い!

 暴れて抵抗するが、背中の方から縄を掴まれて引きずられているので、暴れれば暴れるほどに体力を消耗するだけだった。なんかもう、『【急募】ここから助かる方法』って感じだ……………。


 ポイッ。


「ぐえっ」


 いたぁ。急に投げ捨てないでほしい。とりあえずの状況確認として辺りを見回すと、バカでっかい魔法陣に、クソでかい魔石がハマった、これまた一般家庭ではお目にかかれない、大きな大きな扉があった。


「うわぁ……………」


 【翻訳】のスキルが勝手に発動し、魔法陣に書かれた術式が自然と読み取れる。


「バカすぎる………………」


 まさか、【領域内の時間を限りなく遅くする】なんて、ありえん量の魔力をバカ食いするイカれたモノ(魔法的機構)を、国が使っているなんて……………。思わず手が伸びてしまう。と──。


『お父様!こんなことは無駄です!早く解除して私を殺しなさい!国王!貴方は国王なんでしょう!?』


「ひっ」


 触れた瞬間、何かに、僕達がここにいることが知られたらしい。魔力を通して、言葉が脳に叩き込まれて来た。


「私の娘だよ。凄いでしょ?こんな、時が止まった部屋で魔力を通して外を学んで、自分が治せない病だと学んで、私を殺せと叫んでくるんだ。赤子が、たった3年で」


 とんでもない学習速度だ。しかも、魔力を外部演算装置に見立てて思考をする、なんて高等技術を駆使している。正直に言おう。人間技ではない。そこまで考え、視線で続きを促す。


「カイト君。了承してくれたようだし、改めて依頼内容を話そう。私の娘を治してくれ。君ならできるだろう?」


 まぁ、実際に、できる。条件さえ揃えば、僕の【情報輸入】のスキルは想像できることが全てできるから。それに、なるべく嘘はつきたくないし。


「はいわかりましたぁ〜。解除しますねぇ〜」


 面倒くさい。やりたくない。そんな気持ちをしっかり込めて返事をしてやる。さて、まずは…………。


(法魔さん)


(『はい。何か用意するものでも?』)


 材料を用意しないと。


(うん。大量の死体って、あったりする?……………ない?あー。じゃあ、ブラウルにお願いして、ここに送って)


 ……………。あ、あともう一つあった。


(これから使う魔法に必要だから)


 一応言っとかないとね。なんか、歓喜の感情が凄く伝わってきたけど…………。まぁ、うん。問題を起こしてないといいんだけど………。


「さて」


 扉に手をかける。頭の声が、さらに大きくなる。


「開けますよ?」


 王サマは頷いた。


 ガコン。


 大きな音を立てて扉が開く。

 僕は、押し流されたと錯覚した。

 魔力の洪水。明らかに、誰かの意志を乗せて動いた魔力が、乗せられた意志と共に、僕の身体を通り過ぎていった。


「う゛っ」


 あまりにも強い、私を殺せ、という意志に吐き気が止まらない。


「煩い!助けてやるから黙れ!」


 そんな吐き気を堪えて、発信源に向かって怒鳴る。助けてやるから黙れ、と。端から見れば、宙に向かって怒鳴る異常者みたいなものだが、誰も観ていないから問題ない。ブンブン首を振って羞恥心を飛ばし、置かれているベッドに近づいていく。ベッドの中をのぞき込むと、そこには、赤子がいた。


「うわ…………………」


 ホルスターの辞書がカタカタ動くが、予想はついているので「大丈夫、わかってる」と言って静止する。さっき見た限りでは、僕を掴んでいたのは、王妃サマが着るようなドレスを着た、メイドさん(・・・・・)だ。明らかに、貴族でも冒険者でもないテキパキとした動きだった。多分、王妃サマは死んでいるのだろう。それにプラスで、死にかけの赤子。


「こんな職業もらって、生きてられる人がいるんだね──」


 天才(ジーニアス)という職業がある。ありとあらゆる事象を、瞬時に解析、学習し自分のものにする、というものだ。


「キミは、お母さんに愛されてるんだねぇ」


 魔力を込めた手で、彼女の身体をゆっくりと撫でる。

 全ての人間は、生まれながらの天才になる権利がある。ただ、その時には母体と、胎内の自分が死ぬだけだ。


「うわ……………なんでこんなに合併症が………………」


 いや、恐らく、母体がかかった病か。

 なんでそうなったとかは考えないようにしておく。きっと下手に首突っ込んだら、『藪をつついて蛇を出す』どころか藪つっついたらヒドラが出てきて死んだわクソがみたいになるだろう。

 ブンブン首を振ってそんな考えを飛ばし、法魔さんに連絡をする。


(法魔さん────あら、早いね……………。じゃ、送って)


 念話が切れた瞬間、パカッと空間が開いて大量の新鮮な死体と法魔さんが現れた。さて、始めよう。


権限申請(オーダー)情報転換(コンバージョン)


 直後、部屋の中に魔力が吹き荒れた。

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